マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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こんにちは!
マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
今日は『ターゲットを絞る』という事についてお話しします。
マーケティングをやっていると、『ターゲットはきちんと絞って商品や広告を作りなさい!』なんて話は当然のことのように聞きますよね。
ただ、言われた通りに絞っているつもりでも絞り切れていなかったり、もっと言えば『なんで絞らないといけないの?』といまいち腑に落ちてない状態で仕事をやっていたりする人も大勢いるのではないかと思います。
『たくさんの人に商品を買ってもらう為にターゲットを絞る』
というのは矛盾しているように聞こえますからね。
私も自分のクライアントから同じような質問を何度も受け、その為に以前秋元康さんの例を出してブログを書いたのですが、これでも納得いかない人はたくさんいると思います。
※ちなみにそのブログはこちらです。時間があったら読んでみて下さい。
そこで今日は僕が持っているあらゆる知識を導入して、『ターゲットを絞る』必要性について皆さんを説得したいと思います(笑)
マーケティングにあまり馴染みのない方にも分かってもらえるよう、かなり回りくどく書いています。
是非最後まで読んでください!
まず「市場(マーケット)」の大前提を理解しよう
なぜターゲットを絞るという事が重要なのかを説明するには、そもそも「市場(マーケット)」の大前提を説明しなければいけません。
マーケティングの基本的なことを書いているので、良く知っているという方はザッと流す程度に読んでいただければ大丈夫です。
市場(マーケット)とは何か
まず市場と言う言葉をきちんと理解しなければいけません。
『市場』とは「対象とする商材が売買されている場所」のことを指します。
例えば自動車が売買されているのは『自動車市場』ですし、服が売買されているのは『アパレル市場』です。
このようにモノやサービスが売買されているということは、必ず『市場』があります。
とはいえ、『市場』という場所がどこかにひと固まりで存在しているわけではありません。
基本的に自動車(新車)が売買されているのは、日本各地にある各ブランドの販売会社(ディーラー)ですし、服が売買されているのもユニクロなどを初めとするアパレルブランドの店舗です。
ですから、日本各地(または世界各地)の至る所にある売買の場所をまとめて『市場(マーケット)』と呼んでいる訳です。
市場には買い手も売り手も多数存在する
そしてその中には多くの消費者(買い手)がいらっしゃり、どの自動車を買おうか、どの服を買おうかと検討しています。
その一方で、この消費者達に『モノを売ろうとしている人たち』(売り手)もたくさんいます。
国内の自動車メーカーで言えばトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱、スズキ、ダイハツ、スバル・・・などなどです。
更にBMWやベンツ、フォルクスワーゲンといった海外メーカーも日本の自動車市場には参入しているので、非常に多くの自動車メーカーが日本国内でしのぎを削っています。
アパレル市場に関しては、ブランドが多すぎていくつあるのか見当がつかないくらいです(笑)
このように市場にはその商材を買おうとしている人(お客様)がたくさんいるのはもちろん、売ろうとしている人もたくさんいるのです。
市場の中であなたがやらなければならないこと
従いまして。
買い手も売り手もたくさんいる市場の中で、売り手の1人であるあなたが何をすべきかというと、
『その市場の中で目立って、注目を集めて、たくさんのライバルからあなたの商品が買い手に選ばれるようにする』
これをやらないといけません。
お客様達にあなたの存在を知ってもらい、あなたの商品のメリットを伝え、『これ欲しい!』と言ってもらえる状態にしないといけない訳です。
ただ注目を集める為に商品をヒョウ柄にするとか、ビカビカ光らせて目立たせればいいって訳ではありません(笑)。
注目されても『根本的に要らない』商品であれば欲しいと思ってもらえませんからね。
お客様の心は『要らないものにお金は使わない』という状態がデフォルトです。
なので、このデフォルト状態から何とかして『買う!』に持っていかないといけません。
だから『広告』が必要になる
そこで必要になるのが、
『うちの会社ではこんな商品売っていますよ~~!!!』
と、市場のお客様に対して声高らかに伝えるということです。
いわゆる『広告』活動ですね。
広告にも様々な媒体がありまして、テレビ、ラジオ、新聞、チラシ(フライヤー)など昔からあるものに加え、近年ではインターネットやSNSでも広告を出稿できます。
どの媒体を使うのかが大事ですが、それ以上に重要なのが『その広告の中で何を言うか?』です。
当然、商品名だけ連呼しても(そういう広告もありますが)、大切なのは、
●その商品の特徴は何か。(競合と何が違うのか?)
●その商品は自分(お客様)にどんなメリットをもたらしてくれるのか。
を広告できちんと伝えないとお客様の心には響かないという事です。
数多くの競合がいる中から自分の商品が選ばれないといけない訳ですからね。
その為、広告を作る前に商品企画・開発の段階で
『お客様自身がメリットを感じてくれ、かつ他社とは異なる特徴を持つ商品を作る』
という事をやらなければいけません。
しかし、お客様は『千差万別』
『競合との差別化』と『お客様自身が感じるメリット』が重要だという事ついてはマーケティングの教科書などを見ればどこにでも載っている話です。
なので、これについては私の無料メール講座などでも触れているのでここでは割愛します。
もし良ければ、Lactivatorの無料メール講座でも詳しく説明しているので読んで下さい。
参考)無料メール講座~マーケティングの誤解を払拭して集客不要のビジネスを創る~
人間は『これは自分にはメリットのない情報だ』、『自分には関係のない情報だ』と判断すると、多額のお金をかけて作った広告であってもあっさり素通りします。
その為、たくさんの商品の中で自分の商品に注目してもらう為にもこの2つの要素を際立たせ、広告でしっかり伝える必要があるのです。
しかし上記を考えようとすると、ある壁にぶち当たります。
それは、お客様自身が何にメリットを感じてくれるかは人それぞれ違うということです。
例えば駅弁などを思い浮かべると、東京駅の駅弁売り場などでは日本各地から集められたあらゆる駅弁が置かれています。
そしてお客様は『カニのお弁当が食べたい』、『肉が食べたい』、『山菜がたくさん入ったあっさりしたのがいい』など様々な思いで売り場を訪れています。
当然のことながら、肉が食べたい人にカニの弁当や山菜弁当を見せてもメリットを感じてくれません。
逆に山菜弁当が食べたい人に牛肉弁当を見せても『胃がもたれそうだから今日は山菜で・・・』とかの理由で買ってくれません。
たかが駅弁とは言え、お客様の思いは千差万別なのです。
だから狙うお客様を最初に決める
これは駅弁に限った話ではありません。
世の中に存在する『市場(マーケット)』という所には、様々な思いや志向を持った買い手(お客様)がいるのです。
ですからビジネスを行う大前提として、
『その市場にいる全てのお客様に買ってもらえる商品を作る事は不可能』
という意識を持って下さい。
これ、非常に大事です。
じゃあどうすればよいかというと、やる事は1つです。
あなたがカニ弁当を売りたいのならば、『この弁当には越前ガニが山盛りです!』とか、山菜弁当を売るのならば『京都の山中で取れた山菜をフンダンに使ってます!』という感じの商品を作って広告を打ちます。
いわゆる、
『ターゲットを絞って、その人たちの心を揺さぶるような商品、広告を作る』
のです。
ターゲティングについてよくある質問
『なぜターゲット設定をしなければいけないのか?』をかなり回りくどく説明してみました。お判りいただけたでしょうか?
ですが、こう説明してもまだ皆さんの頭の中でしっくりこない事がいくつかあるのではないかと思います。
そこで次にその『しっくりこない事』を解決する為、よく出てくる皆さんの疑問を取り上げます。
とはいえ、万人受けする商品が実際に存在するのはなぜ?
しかしながら、『万人受けする商品だって実際にあるでしょ!』という反論をよくいただきます。
その反論の中でよく例として挙げられるのは、『東京ディズニーリゾート』や『スターバックスコーヒー』ですね。
ただよ~く考えてほしいのですが、これらの商品も決して『万人受け』はしていません。
『幅広い方々に支持をされている』というのが正しい言い方です。
周りを見渡していただければ、東京ディズニーリゾートに行った事がない(今後も特に行く気はない)という人はたくさんいるはずです。
スタバも最初は自宅や仕事場に次ぐ『第三の居場所』というコンセプトで始め、サラリーマンやOLから支持されました。
そしてそこから高齢者や高校生に徐々に波及していった訳です。
しかしそんな今でも、スタバには行かないという方は何人もいます。(私はほぼ毎日利用しているのですが(笑))
従いまして繰り返しですが、『万人受け』する商品なんてこの世には存在しないという事を肝に銘じましょう。
ターゲットを絞ったら他の人には売れなくなるんじゃ?
ターゲティングの話をした後に一番多い質問がこれです。
『ターゲットを定めて、その人たちの心を揺さぶるような商品、広告を作る』といっても、そうしたらターゲット以外の人には売れなくなってしまうだろうというのが懸念として残ります。
これの回答としては2つあります。
- そもそも消費者の趣味嗜好は人それぞれなので、ターゲット設定があいまいだったらターゲットにすら買ってもらえません。(これは当然ですね)
- 逆にターゲット設定をきちんと行い、その人たちの心を揺さぶる商品、広告を作るとなぜかターゲット以外の人も買ってくれます。
2つ目が『超』重要です。
ターゲット設定して商品を作ると、ターゲット以外の人も買ってくれるんです。
先程例として出した『東京ディズニーリゾート(TDL)』や『スタバ』はまさにそうですね。
TDLはディズニーファンじゃなくても年間たくさんの方が訪れますし、スタバに至っては当初想定していなかった高校生が来て受験勉強などしています。
これは社会心理学における『同調性の要求』というものが深く関係しています。
同調性の要求
人は皆と同じでありたいという気持ちが心の中に強く存在しています。
同調することによって『自分は正しい選択をしている』、『安心して過ごせる』というポジティブな気持ちを得られるからです。
その為、1つのターゲット層の中である商品が売れて話題になると、他のターゲット層も同調効果によって次々と取り入れてくれるという現象が生まれるのです。
従いまして、ヒット商品と言うのは最初から万人受けを狙ったからヒットしたのではなく、一部のターゲット層に深く受け入れられたことで『同調性の要求』により他のターゲットへ波及していったのだと考えて下さい。
ターゲットを複数にしたらどうか?
ここまで説明すると、
『じゃあ、ターゲット層を複数にしたらどうか?』とか、
『全てのターゲットに買ってもらえるようにオーダーメイドにしたらどうか?』
なんて意見も出てくると思います。
確かにそういう考えも出てくると思いますが、それで成功した例はあまりありません。
これはブランディングの話になるのですが、ラーメン屋で言えば、
『醤油ラーメンと味噌ラーメンの2つを店のウリにしよう!』
『全てのお客様の好みを網羅する為、醤油・塩・味噌・豚骨・魚介・・・全部をメニューに入れよう!』
という考えと一緒です。
それでもお客様は来るとは思います。しかし、
『うちは味噌ラーメンを徹底的に極めます。』
『50年、豚骨ラーメンの味を守り続けてきました』
と謳っている店の方が興味をそそりませんか?
以前のブログで秋元康さんの『記憶に残る幕の内弁当はない』という言葉を紹介しました。
自分の商品を幕の内弁当みたいに『その商品のウリ』が分かりにくい状態にしてしまうと、注目度はぐっと下がってしまいます。
従いまして、何か1つに特徴を絞り、それを全面に出す方がイメージとしては良くなります。
言い換えれば、ターゲットはやっぱり1つに絞った方がよいのです。