【絶対にやってはいけない】『No.1調査』が業界NGとなっている理由

こんにちは、マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。

今回は『No.1調査』についてお話をしたいと思います。
最初に伝えておくと、今までLactivatorではマーケティングリサーチのノウハウやコツをブログに掲載してきましたが、今回の話は『やってはいけない』お話ですのでご承知おきください。

ここ最近、マーケティングリサーチ業界や広告業界で『No.1調査』という言葉を頻繁に聴くようになりました。
これは、同じ業界における競合他社との比較において、自社がどのような位置を占めているかを明らかにする調査です。

一見すると有益な情報を提供しているように見えますが、実はここ最近、消費者庁がこの調査に目を光らせており、このNo.1調査の結果を悪用したことにより業務停止命令を下された法人も存在します。

一体どのように悪用したのか?
なぜ業務停止にまで至ってしまったのか?

その理由を解説します。

No.1調査とは?

広告にNo.1を掲載する為の調査

『No.1調査』は、ある業界における企業や商品の顧客満足度やブランドイメージをランキング化する調査を指します。

例えば、チョコレートを製造している国内メーカーついて、

『消費者から一番”おいしい”と思われているチョコレートメーカーはどこか?』
『消費者から一番”上品な味”と思われているチョコレートメーカーはどこか?』

などを消費者対象に調査をして明らかにするというものです。

そして、この調査で自社がNo.1であったならば、『わが社が”おいしい”と思われているチョコレートメーカーNo.1に選ばれました!』と広告などに詠う訳です。

要するに、広告宣伝の為に実施している調査となります。

不当なNo.1調査に対する行政措置事例

しかしここ最近、このようなNo.1調査に対して消費者庁が目を光らせており、不当と認めたものを次々と摘発しています。

例えば2024年3月、海外Wi-Fiレンタルサービス『イモトのWiFi』を提供するエクスコムグローバルが掲示したNo.1広告に対し、景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして再発防止などを求める措置命令を出しました。
新聞記事などによると、同社が実施したお客様満足度調査の結果に基づき『海外旅行者が選ぶWiFi No.1』と広告に記載したものの、その調査設計がずさんであり、根拠に乏しいという判断が下った為です。

更に消費者庁は太陽光発電の蓄電池などを販売する事業者3社のNo.1広告に対しても景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を出しています。

2024年3月時点で、同じような措置命令を受けた法人は14社にのぼります。

No.1調査がマズい理由

『No.1ありきの調査』はNG

まず申し上げたいのは、公正な調査をした結果、もしあなたの会社の商品が何かしらの分野で本当にNo.1ならば、堂々と広告に『我が社はNo.1!』と詠ってよいと思います。
とても素晴らしい事ですし、社内一丸となって継続してきた努力の賜物であるはずですから。
もちろん、本当にNo.1なのであれば消費者庁は何も咎めないと思います。

問題なのは、最初から貴社がNo.1となるような調査設計でアンケート調査を行い、あたかも本当にNo.1であるかのように広告に掲載する行為です。
要するに調査会社の中には、

『あなたの会社をNo.1にするので調査やりませんか?』と営業している企業が存在します。
そして、その結果を広告に掲載すると、調査会社のみならず調査を依頼した会社側も何かしらの処分を受けるのです。

怪しいNo.1調査の特徴

マーケティングリサーチャーの立場から言えば、自分の会社が何かしらの分野でNo.1だと見せるような調査は設計次第でいくらでもできてしまいます。
具体的には以下のような調査設計です。

対象とする競合(ライバル)を限定する

例えばシュークリームを生産しているメーカーが日本に5社あり、その中であなたはA社に務めているとします。
そして一般消費者が『一番美味しいと感じている』シュークリームはどこのメーカーかをアンケート調査するとします。

しかし業界には人気の高いB社があり、おそらく普通に調査を行ったらB社のシュークリームが一番美味しいという結果になってしまうだろうな・・・と思ったら、あなたはどうするでしょうか?

一番手っ取り早いのは、B社を調査対象から外し、A社を含む4社で調査を行えばよいですよね。
広告に掲載されている調査結果を見る消費者は、どの会社が調査対象となっているかなんてイチイチ確認しないですから、『調査で一番美味しいと感じるシュークリームメーカーNo.1を取りました!』とだけ広告に詠えばほとんどの方が信じてしまう訳です。

回答者を限定する

ある一定の回答者に絞ってアンケートを行えば、No.1と見せかけることも可能です。
例えば数年前、ある住宅メーカーがSDGsに関するイベントを開催しており、そのイベントの出口で『○○(当該住宅メーカー)は、他の住宅メーカーと比べてSDGsに力を入れている会社と感じましたか?』というアンケートを実施しているのを見たことがあります。

このアンケート結果が最終的にどのように使われたのかは定かではありませんが、これを基に『日本の住宅メーカーの中で”SDGsに力を入れているメーカー”No.1に輝きました!』と言うことはできてしまいます。

SDGsの当該イベント参加者のみに調査を行っている訳ですから、そういう結果になりますよね。

しかし当然のことながら、この調査設計はNGです。
日本国内からランダムに選ばれた方に対して調査するのであればOKですが、これだと回答を誘導してしまっているのです。

データを改ざんする

また調査を行った結果、貴社がNo.1を取れていなかったとしても、No.1にすることは可能です。
要はデータを改ざんしてしまえばいいのです。

言わずもがなですが、これはリサーチャーのモラルとして絶対にやってはいけません。
しかし最終手段として、このようなことをしている悪徳業者もいるのではと推察します。ローデータ(アンケート調査の生データ)なんて調査会社しか持っていませんから。

 

マーケティング調査に大切なのは『中立性』

当然ですが、お客様満足度やブランドイメージを測る調査を広告に掲載せず、自社の経営戦略改善の目的で行うのであれば何ら問題はありません。
一般消費者や顧客が貴社のブランドをどう見ているかを定期的に計測することはとても重要なことだからです。

但し、その為には正しい調査設計を基に実施をする必要がありますし、変に事実を捻じ曲げるようなことをしてしまうと経営判断を間違ってしまう可能性大です。

また先ほども書いた通り、正しく調査を行った結果、本当に業界No.1なのであれば堂々と広告に詠ってよいと思います。
やましい調査設計でなければ何も問題はありません。
(但しその場合、消費者庁から何らかの問い合わせは来るかもしれません・・・)

マーケティングリサーチに大切なのは『中立性』です。
自分の会社に有利な結果または他社に不利な結果を得ようとするのではなく、”フェア”に調査を行って現実を直視し、自社の戦略に役立てて下さい。

Lactivatorの動画講座を『Udemy』で配信中!

Lactivatorが定期的に開催しているマーケティングリサーチの講座が、オンライン学習サービス『Udemy』に登場! 1つの単元を約10分前後の動画で解説しているので、通勤途中でもカフェでも、あなたの好きな時間に好きなだけリサーチを学ぶことができます。 最初の10分は無料で視聴いただけますので、是非ご覧ください!

関連記事