インタビュー調査(定性調査)はアンケート(定量調査)の100倍難しい理由


マーケティングリサーチャーの渡邉 俊です。

仕事上、クライアントとして色々な会社の方とお付き合いさせていただいております。
そしてクライアントに対して単に調査方法をアドバイスするだけではなく、『こんな定量調査(アンケート調査)をやってみるのはいかがですか?』と提案することも多々あります。

しかしそんな時、『時間がなくてアンケート作るの面倒くさいから、さくっとお客さんにインタビューしてみたいんですけど。』なんて話を持ち掛けられる事があります。

もちろんできない話ではありませんし、やるのは構いません。
内容によっては、アンケートよりもインタビュー調査の方が適している場合もあります。
しかしこの方に限らず、マーケティングリサーチに関して多くの方が誤解していることがあります。

それは、『インタビュー調査はアンケートよりもず~~~~っと難しい』という事です。
正直、インタビュー調査できちんとした結果を出す為にはかなりのスキルと経験とセンスが必要なのです。
決してさくっとできるような代物ではありません。

今回はこの『インタビュー調査』についてお話ししたいと思います。

マーケティングリサーチの基礎

そもそもマーケティングリサーチには2種類ある

まず基本的な事をお話ししますが、マーケティングリサーチには大きく分けて2つの手法があります。
それは『定性調査』と『定量調査』です。

世の中には色々なリサーチ手法がありますが、どの手法も基本的には絶対にどちらかに分類されると思ってください。
次に、それぞれについて詳細を説明します。

定量調査とは?

定量調査とは何となくお分かりの通り、『量的データ』がアウトプットされる調査を言います。
これまで私のコラムの中で色々と説明してきた「アンケート」が代表的な定量調査の手法です。
他にも、最近では回答者の脳波を測定して反応を見るなんていう最先端の技術を使った調査もありますが、現段階では基本的に『定量調査=アンケート調査』だと思っていただいて問題ありません。

定量調査を実施する場合、必ず必要となってくるのが『調査票』です。
一般的に言うといわゆる『アンケート用紙』の事であり、どんな質問をどんな順番で、どんな選択肢を用いて回答してもらうのかが明確に記載されていて、実際に配布して回答を記入してもらうものを調査票と呼びます。

そして定量調査は主に、『何らかの実態』を明らかにするのに適しています。
例えば、アンケートでお客様満足度などを調査すると、『50%のお客様が「満足した」と回答した』なんて結果が出てきたりする訳ですが、これはお客様の満足度合の実態を明らかにした訳ですよね。
このように、定量調査は『実態を数値で表現する』のに適した手法と言えます。

また定量調査を行う場合、多かれ少なかれ必要になってくるのが統計学の知識です。
アウトプットされるのは『量的データ』、要するに数字ですので、これを適切に読み解くためには統計学な処理が必要です。

こんなことを言うと、『私は数学が大の苦手なんで無理!』と思う方もいらっしゃるかもしれません。
ただ以前も申し上げたように、高度な調査を行うのであれば高度な統計学の知識が必要になりますが、一般的には小学校の算数さえわかれば何ら問題ございませんのでご心配なさらないで下さい。

※ちなみに定量調査の調査のやり方や設計の仕方については、以下の無料メール講座で詳しく解説しています。
インタビュー調査についても触れており、また購読登録された方にはアンケート調査やインタビュー調査の設計に関するチェックシートをプレゼントしてます。是非購読登録してみて下さい。

定性調査とは?

一方で『定性調査』とは、アウトプットが『質的データ』である調査を指します。
『質的データ』とはちょっと取っつきにくい言葉ですが、要するに数値ではなく言葉や行動で表現されたものという事です。

定性調査も細かく分けるといくつか手法がありますが、代表的なのが『インタビュー調査』です。
またインタビュー調査の中で実際にインタビューする側の人を『モデレーター』と呼びますが、モデレーター1人が複数人の人を相手にインタビューする調査を『FGI(フォーカス・グループ・インタビュー)』、1対1でインタビューする調査を『IDI(インデプス・インタビュー)』と言います。

定性調査に必ず必要となるのが『インタビューフロー(ディスカッションフロー)』です。
これも結構誤解している方が多いのですが、インタビュー調査というのはモデレーターがその場で思いついたことを次々に質問しているのではなく、事前にどんな質問をどのタイミングで、どんな順番でしていくのかを決めています。
それを事細かく記載したものがインタビューフローです。

そして、定性調査は主に『何らかの理由』を聞くのに適しています。
例えば『あなたがこの店に来た理由は何ですか?』という形でお客様に来店理由を聞きたい場合、アンケートでも聴けない訳ではないのですが、インタビューだと深堀して聞くことが可能です。
その為、より深い理由を聞く、極端に言うと深層心理を突くような調査をしたい場合は定性調査ではないとできないのです。

その為、定性調査を行うのに必要となるのが心理学の知識です。
相手の心理を深掘してインタビューする場合は心の扉を開くような会話をしていかないといけないので、高度な心理学的スキルが必要となってくるのです。

※ちなみにインタビューフローの作り方は以下のブログにまとめています。併せて読んで下さい!

定性調査と定量調査の使い分け

上記が定性調査と定量調査の特徴です。
両者とも性格が違うのですが、もちろんどちらか1つしかやってはいけないという事ではありません。
目的によって使い分けるのが理想ですが、場合によっては両方やることも必要になります。

例えば企業のブランドイメージなどを調査したい場合、まずは定性調査(インタビュー)で消費者の持つイメージを洗い出し、そのあとアンケート調査でどのイメージが一番強いのかを定量化するという方法がよく用いられます。
両方の調査の特徴を活かして目的を達成する事が重要です。

なぜインタビュー調査は難しいのか?

さて、ここで本題に戻ります。
上述の通り、目的によって定性調査と定量調査を使い分ける、もしくは両方やることが必要なのですが、タイトルの通り、インタビュー調査(定性調査)は定量調査よりはるかに難しく、素人がきちんとしたアウトプットを出すのは相当なセンスと才能がないと無理です。

回答者の本音は簡単に得られない

例えば、自分のお客様にこんな質問を聴いてみるとします。

『あなたはなぜこの商品を買ったのですか?』

これを自分がお客様にインタビューで聴くとしたら、どんな回答が出てくると思いますか?
おそらく多くの方から、『何となく欲しいと思ったから・・・』なんて言葉が返ってくるのではないでしょうか。
あとは『いや~、御社の商品は本当に素晴らしくて・・・』なんてお世辞や、『この商品のこの部分がすごいと思ったから・・・』という「今思いつきました」的な回答でしょうか。

当然ですが、定性調査において『何となく』やお世辞、思いつきの回答は何の役にも立ちません。
あくまで知りたいのは回答者の『本音』もしくは『本音をあぶり出すヒント』です。
これを引き出せるかどうかがインタビュー調査の最重要ポイントになります。
そして、回答者の『本音』というのはただマイクを向ければ引き出せるわけではなく、きちんとしたスキルやテクニックが必要なのです。

マスコミのインタビューと調査のインタビューは根本的に違う

インタビューというとマスコミの方々が政治家や芸能人に対してやっている風景を思い浮かべますが、それと調査のインタビューは根本的に異なります。

そういえば以前、プロ野球の野村克也さんがこんなことを言ってました。

ホームランを打ったバッターが試合後のインタビューで『特に何も考えず、来た球を思いっきり打ちました。』なんて答えるのをよく目にしますけどね、あんなの大嘘ですよ。
バッターは頭を使わなければいけないですからね、何も考えてなかったら絶対に打ち取られます。ピッチャーの癖を盗んで、どんな球を待てばよいのかを心に決めるんです。そんなことはインタビューで言いませんからね。

インタビューというとテレビ局がスポーツ選手や芸能人に行っている風景を思い浮かべます。
でも本音を答えている人ってあまり見かけないですよね(笑)

このように、マスコミのインタビューというのはコメントさえ取れればある程度良しとされます。
しかし調査におけるインタビューは違います。『コメントの質』が求められるのです。

『本音』もしくは『本音をあぶり出すヒント』が『質の良いコメント』であり、定性調査として使える質的データです。
これらを如何にして多く聞き出せるかがポイントでありモデレーターの腕の見せ所なのです。

しかし調査初心者の方がいきなりこれを行うのはかなりハードルが高いです。
もちろん、やってみたければトライしてみても構わないのですが、『本音』もしくは『本音をあぶり出すヒント』以外は使えないデータである事は是非認識しておいてください。

定性調査をやりたいのであれば、費用はかかりますが最初のうちはきちんと調査会社に依頼をするのが無難です。
まずは比較的容易である定量調査(もちろん、こっちもきちんとしたアウトプットを出すにはそれなりのスキルやテクニックが必要ですよ!)を身に着けていただければと思います。

※ご参考に、定性調査については以下のようなブログも書いています。是非合わせて読んでみて下さい。

 

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