最終更新日: 2025年3月3日 by 渡邉 俊

マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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この記事、公開が遅くなりましたが、実は2019年のお正月明けに書いています。
なので僕の頭の中には今、昨年末(2018年)の紅白歌合戦の映像が鮮明に流れています。
年越しまであと30分となった午後11時半頃に大トリで出てきたサザンオールスターズ。
そして、その横にはユーミンこと松任谷由実さん。
我々の世代にはもう感動の一言では言い表せないくらいの素晴らしいステージでした。
平成最後として相応しい紅白歌合戦でした。
今回はこのサザンオールスターズにスポットを当てたいと思います。
実はサザンの活動は、マーケティングを学ぶ上で非常に参考になるヒントが隠されているのです。
今日はそれについてお話しします。
デビュー当時のサザンオールスターズ
1978年:サザンオールスターズのデビュー曲
おそらく日本人であれば、サザンオールスターズと桑田佳祐さんの名前を知らない人はほとんどいないのではないでしょうか?
日本を代表するロックバンドです。
では、サザンオールスターズのデビュー曲をご存知でしょうか?
2018年紅白歌合戦のトリでも歌ってましたが、答えは、
『勝手にシンドバッド』(1978年発売)
です。
今や世代を超えて歌われていますので、こちらも日本人であれば知らない人は少ないのではないでしょうか。
しかし、なぜ『勝手にシンドバッド』?
しかし次の質問はちょっと難しいかもしれません。
なぜ、その曲を『勝手にシンドバッド』という名前にしたのか、その理由をご存知でしょうか?
以下が『勝手にシンドバッド』の1番の歌詞になりますが、実は歌詞の中には『勝手に』や『シンドバッド』という言葉は1度たりとも出てきません。
曲の名前と歌詞の中身が全くと言っていいほどリンクしていないのです。
勝手にシンドバッド
作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐砂まじりの茅ケ崎 人も波も消えて
夏の日の思い出は ちょいと瞳の中に消えたほどに
それにしても涙が 止まらないどうしよう
うぶな女みたいに ちょっと今夜は熱く胸焦がすさっきまで俺ひとり あんた思い出してた時
シャイなハートにルージュの色が ただ浮かぶ
好きにならずにいられない
お目にかかれて今何時? そうねだいたいね
今何時? ちょっと待ってて
今何時? まだ早い
不思議なものね あんたを見れば
胸さわぎの腰つき 胸さわぎの腰つき
胸さわぎの腰つき
実はこのサザンオールスターズがデビューする1年前に2つの国民的ヒット曲が生まれました。
沢田研二の『勝手にしやがれ(1977年5月21日発売)』とピンクレディーの『渚のシンドバッド(1977年6月10日発売)』です。
『勝手にしやがれ』はその年の日本レコード大賞(第19回)を、また『渚のシンドバッド』はオリコン年間シングルチャート1位を獲得した、1977年の代表曲です。
もうお分かりですね?
この2つのヒット曲のタイトルを無理矢理くっつけて『勝手にシンドバッド』になったのです。
まあ、曲作りの常識を考えれば無茶苦茶なタイトルの付け方です。
ただこれが話題となり、当時の『三ツ矢サイダー』のCMソングにも起用され、発売から4ヶ月後にオリコン3位にまで上っていきます。
その後、ドリフターズから曲のタイトルに関して抗議もあったようですが、いかりや長介さんが桑田さんの人柄を気に入った事から抗議が取り下げられ、知名度は更に上昇していきました。
ただこの曲によって『サザンオールスターズ=コミックバンド』というイメージが浸透してしまい、桑田さんご自身はかなり苦悩されたと後に語っております。
しかしデビューから10ヶ月後に発売した3rdシングルによって、彼らのイメージは一気に一流アーティストへと変わっていくのです。
そのシングルの名は『いとしのエリー』。
日本国内のみならず、今では海外でも高い評価を得ている名曲中の名曲ですね。
『目立つ』ということが如何に大事か。
桑田さんやサザンオールスターズのメンバーの方々の頭の中に、きちんとした戦略があったのかどうかはわかりません。
しかしサザンが日本を代表するロックバンドにまで上り詰めた1つの要因として、『勝手にシンドバッド』という話題性のある曲でまず知名度を一気にあげた事があると思っています。
人に興味を持ってもらう為にはそれをまず知ってもらわないといけません。
いかにして世間の人々の頭にその情報をこびり付かせるかが重要です。
ビジネスの世界でも、まず最初にやらないといけないのは多くの人にその商品を知ってもらう事、いわゆる『認知度の向上』が必要です。
その為、サザンのように『まずは目立つ!』という行為は非常に大事だと思うのです。
何事も知ってもらう事から全ては始まる。
以前このブログで『パーチェスファネル』の解説をしました。
パーチェスファネルとは、『商品を知ってから購入に至るまでのお客様の状態を可視化(数量化)すること』でしたね。
※パーチェスファネルのブログを読んでない方は以下参考にして下さい!
人が何かモノを買う時、
認知 ⇒ 理解 ⇒ 好意 ⇒ 購入意向 ⇒ 購入
というプロセスを踏みます。
まず商品の存在を認知して、その内容を大体理解して、好意を持って、購入したいという気持ち(購入意向)になって・・・最終的に購入するという事です。
もちろんどんな商品なのかによってプロセスは多少変化します。
ですがここで言いたいのは、どんな場合でも購入プロセスの最初のステップは絶対に『認知』だということです。
当たり前の話ですが、商品を知ってもらわないと購入には至りません。
ただどの業界でも、世間に十分認知されている商品は少ないです。
その為、多くの商品のパーチェスファネルは以下のような形になります。
人間は忘却する動物である。
今回サザンを例に挙げてお話ししたかったのは、『認知』の重要性です。
「そんなことアンタに言われなくても知ってるよ!」という方も多いと思います。
ただ僕自身、マーケティングリサーチを通じてつくづく思うのは、自分の商品の存在をきちんと『認知』してもらうことがどれほど難しい事か・・・という事です。
というか、自分の商品を『認知』してもらう事自体は簡単なのでしょうね。
チラシやSNSを使えば誰でも宣伝告知できますから。
ただ人間は、それを見た5秒後に忘れてしまいます。
『人間は忘却する動物』なのです。
自分が見た事、聞いた事は一旦脳の中に取り入れられますが、片っ端から忘れていきます。
そうしないと人間の脳みそは記憶だらけになってパンクしてしまいますからね。
ですから、我々が一生懸命広告を作って公開していっても、お客さんは片っ端から忘れていきます。
これを何とかしたいのであれば対策は1つしかなく、『継続的に広告宣伝をする』しかないですね。
Googleやコカ・コーラ、トヨタ、マクドナルドといった世界的な大企業がなぜ毎年多額の広告費をかけているか?
それは、それほどの大企業でも継続的に広告しないと忘れ去られてしまうからです。
ちょっと話がとんでしまいました(笑)
お話ししたかったのは、
- どんな商品でも『認知』がないと『購入』にたどり着かないということ
- 一旦『認知』が多くなっても、継続的に宣伝しないとどんどん忘れ去られていくこと
この2つです。
この極めて当たり前の事を是非忘れないで下さいね。
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