マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
ここ最近、『パーチェスファネル』という言葉を頻繁に聞くようになってきました。
特に目新しいものという訳ではなく、以前からマーケティング戦略を立案する上での重要なデータとして存在はしていましたが、段々注目する人が増えてきたという事なのでしょうか。
ということで、今日はこのパーチェスファネルの描き方とその活用方法をお話ししていきたいと思います。
お客さんの購買プロセスを考える
パーチェスファネルの詳しい話をする前にちょっと固い話になりますが、『人がモノを買う時のプロセス』(購買プロセス)というものを考えてみましょう。
プロセスと言ってもあまりピンと来ないかもしれません。
『別にプロセスなんかなくて、気に入った物があったら買うだけ!』かもしれませんが、1つの事例として、例えば皆さんがダイソンの掃除機を買う事を想定してみて下さい。
当然と言えば当然ですが、ダイソンの掃除機はその存在を知らなければ買う事はできません。
従いまして、その存在を知ってから購入するまで、以下のような5つのステップに分解できるのではないでしょうか。
① 【認知】『ダイソンの掃除機』という商品の存在を知る
↓
② 【理解】『ダイソンの掃除機』について、商品の特徴や機能を知る
↓
③ 【好意】『ダイソンの掃除機』が好きになる
↓
④ 【購入意向】『ダイソンの掃除機』を買いたいと思う
↓
⑤ 【購入】『ダイソンの掃除機』を買う
このように人間が何かモノを買う場合、
認知 ⇒ 理解 ⇒ 好意 ⇒ 購入意向 ⇒ 購入
と意識はしていなくても、心の中でこのようなステップを踏んでいるはずです。
※もちろんステップは必ずしもこの限りではないのですが、今回は分かりやすくするために上記で説明します。
パーチェスファネルとは何か?
さて、話を戻します。
ではパーチェスファネルとは何かというと、自分が販売している商品について、ターゲットにしているお客様がどのような状態でいるのかを可視化(数量化)する手法になります。
言い換えれば、それぞれのステップで滞留している人がどの程度存在しているのかを明らかにする手法です。
分かりやすくする為に先ほどのダイソンの話に戻しましょう。
ダイソンのパーチェスファネルを描くと以下のようになります。
(数字はあくまでダミーです。ダイソンの掃除機について実際に調査した結果ではありません。)
これはダイソンがターゲットしている顧客層のうち、
- 『ダイソンの掃除機』そのものを認知している人:85%
- 『ダイソンの掃除機』の特徴や機能を理解している人:60%
- 『ダイソンの掃除機』が好きな人:55%
- 『ダイソンの掃除機』を買いたいと思っている人:12%
- 『ダイソンの掃除機』を買った人:10%
このように数値化すると、お客様が自分の商品を認知してから購入するまでの過程のどこで滞っているのかが分かる訳です。
図にすると以下のような感じです。
パーチェスファネルというのはもちろん英語ですが、これはPurchase(購入)とFunnel(漏斗)という意味になります。
漏斗と聞くと「懐かしい!」なんて感じる方も多いかもしれませんが、理科の時間によく使ったあれですね。
パーチェスファネルを描くと、当然の事ながらステップが進むにつれてその数は少なくなっていきます。
そのため、描かれる形が漏斗に似ていることからこのような名前に付けられたのです。
パーチェスファネルの描き方
では、自分の商品に関してパーチェスファネルを描く為にはどうすればよいのでしょうか。
答えはシンプルで、ターゲットとなるお客様に対してアンケートを実施し、ファネルを描く為に必要なデータを入手すればよいのです。
パーチェスファネル作成に必要な設問
今回のように『認知 ⇒ 理解 ⇒ 好意 ⇒ 購入意向 ⇒ 購入』の5ステップのファネルを描きたい場合、アンケートで聴取しなければいけない質問は以下になります。
まずは商品を写真で見せた上で、
1)商品の認知
あなたはこの商品をどの程度知っていますか。
以下の中からあなたに一番近いものを1つお選びください。<選択肢>
①商品名だけでなく、商品の特徴を良く知っている
②商品名だけでなく、商品の特徴をある程度知っている
③商品名だけ知っている
④全く知らない↓①、②、③と答えた方に対して・・・
2)商品に対する好意
あなたはこの商品についてどの程度好意を持っていますか。
以下の中からあなたに一番近いものを1つお選び下さい。<選択肢>
①とても好意を持っている
②ある程度好意を持っている
③どちらともいえない
④あまり好意を持っていない
⑤全く好意を持っていない↓①、②と答えた方に対して・・・
3)商品購入の有無
あなたは既にこの商品を購入しましたか。<選択肢>
①購入したことがある
②まだ購入したことがない↓②と答えた方に対して・・・
4)商品の購入意向
あなたは現在、この商品をどの程度購入したいと思っていますか。
以下の中からあなたに一番近いものを1つお選びください。<選択肢>
①絶対に購入したい
②購入したい
③どちらともいえない
④あまり購入したくない
⑤絶対に購入したくない
データ集計の仕方
アンケートに上記4問を含めて回答者に答えてもらい、それを集計します。
そして以下のようにして各数値を求めます。
- 認知 ・・・『1)商品の認知』の設問について①、②、③のどれかと回答した方の割合(%)』
- 理解 ・・・『1)商品の認知』の設問について①、②のどちらかと回答した方の割合(%)』
- 好意 ・・・『2)商品に対する好意』の設問について①、②のどちらかと回答した方の割合(%)』
- 購入意向 ・・・『4)商品の購入意向』の設問について①、②のどちらかと回答した方の割合(%)』
- 購入 ・・・『3』商品購入の有無』の設問について①と回答した方の割合(%)』
これにより、既に上で示しているようなパーチェスファネルが描けるはずです。
パーチェスファネルを活用する
さて、これでパーチェスファネルが描けた訳ですが、実際にこのデータをマーケティング戦略にどのように活用すればよいのでしょうか。
それは、描いたパーチェスファネルがどのような形をしているかによって異なります。
またパーチェスファネルを活用する際、注目すべきは各ステップの棒グラフの大きさよりもコンバージョン率です。
コンバージョン率とは、『あるステップから次のステップに移行した時に減少(もしくは増加)した割合』を指します。
①認知⇒理解のコンバージョンが低い
商品の名前そのものは認知されているのに、その詳細を理解している人が少ないという事です。
従いまして、その商品の特徴は何なのか、競合と比べてどこが差別化ポイントなのかがいまいち知られていないということになります。
②理解⇒好意のコンバージョンが低い
商品の特徴や機能はある程度理解してもらっているのに、それを好意に繋がっていないという事です。
ということは、ターゲットとなるお客様に対してUSPの設定の仕方、差別化の仕方がずれているのではないでしょうか。
③好意⇒購入意向のコンバージョンが低い
ダイレクトに言えば、その商品が好きなのに買いたいとは思わないという事です。
このようなケースはあまり見られないのですが、あるとするならば価格の問題でしょうか。
実際に『お金があれば買いたいけどちょっと高すぎ!』という場合、このコンバージョンが低くなります。
④購入意向⇒購入のコンバージョンが低い
買いたいと思っているのにまだ買っていないという事になります。
これは購入に至るまで時間の問題なのかもしれませんが、取り扱っているお店が近くにない、または自分が買いに行ける時間帯に売っていないなど、物理的な問題が含まれている可能性もあります。
⑤そもそも認知が低い
最後に、おそらく多くの商品がこの状態ではないかと思いますが、この形はそもそも自分の商品が市場に浸透していないという事です。
お客様に認知されていない為、購入に繋がっていません。
その為、やるべきことはただ1つ、広告やPRなどを行ってターゲットとなるお客様の認知度を上げる。これしかありません。
お客様の購買プロセスは商品によって異なる
今回は分かりやすくするために、『認知 ⇒ 理解 ⇒ 好意 ⇒ 購入意向 ⇒ 購入』というプロセスで説明いたしました。
しかし、もちろんですが、人間がモノを買うプロセスはこの5段階だとは限りません。
または全然異なるプロセスを踏む場合もあります。
更に最近では『インフルエンスファネル』ともいわれていますが、購入したお客様がインターネットやSNSなどでその商品の情報を発信することも多々あるので、
『認知 ⇒ 理解 ⇒ 好意 ⇒ 購入意向 ⇒ 購入 ⇒ 紹介 ⇒ 発信』
という形で購入後のアクションまでファネルで描こうとする方もいらっしゃいます。
お客様の購買行動は商品によって異なるので、どんなパーチェスファネルを描くべきかは予め検討してから設問設定する必要があります。
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