マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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マーケティングリサーチアドバイザーの渡邉俊です。
今日のテーマはずばり『市場規模』です。
この仕事をしていると様々な業界の方と出会います。
その為、時には僕自身が全く知らない世界の方からマーケティングのご相談を受ける事も多々あるのです。
その時に僕が必ずと言っていいほど一番最初に聴くのが、
『その業界の市場規模はどのくらいなんですか?』
という質問です。
そうするとパッと答えられる方もいるのですが、答えられない人の方が多い訳ですね。
この『市場規模』という数字を押さえておくことはどんなビジネスでも『超』が10個付くくらい大事なことです。
そこで今日はこの『市場規模』が超大切である理由と、その数字を把握する簡単な方法をご紹介したいと思います。
マーケティングは『市場規模』の把握から始まる
『市場規模』とは?
市場規模は文字通り、『参入している、または参入しようとしている市場(マーケット)の規模』を指します。
ちょっと固い言葉を使うと、一定期間中に、
●その市場の中で取引された(売り手が買い手に売った)総額 ⇒売上高総額
●その市場の中で売り手が取引をした商品の総数 ⇒販売総数
のどちらかを指します。
例えば自動車業界の場合、2018年度(1年間)の国内自動車(四輪車)販売台数は532.7万台でした。
昔に比べると日本国内の自動車需要は減少してきていますが、2007年くらいから500万台前後を行ったり来たりしています。
従いまして、自動車業界に身を置くビジネスマンに『自動車の国内市場規模は?』という質問をすれば、
『だいたい500万台』
という答えが返ってくるはずです。
また自動車の場合は、一般社団法人日本自動車工業会というところが定期的に市場全体やブランド毎、車種毎の販売台数を発表しています。
このサイトにアクセスすれば、いつでも市場規模データを閲覧する事が可能です。
そういった意味では自動車業界はデータに恵まれている訳ですね。
ただ、『市場規模がどのくらいなのかわからない!』という業界も多数存在します。
その場合は自分で調べてみる必要がある訳です。
なぜ市場規模が重要なのか?
ではなぜ市場規模がそれほどまでに大切なのか?
それは、マーケティング戦略を考えていく上で一番の基礎的情報になるからですね。
例えば、何か新しくビジネスを始めようとする際にはその市場の規模を確認すべきです。
年間1000万人の方が利用する市場と年間10万人の市場では、どちらが多くの売上げを見込めそうか一目瞭然ですよね。
(もちろん大きな市場ほどたくさんの競合が存在するので簡単にはいきませんが)
また市場規模というのは常に変動しています。
従いまして、常に自分の市場の規模を定期的にチェックする事が必要です。
自社の売上げが増加している時には、浮かれる前にその市場の変動を確認しましょう。
単純に市場規模の拡大率に応じて自社の売上げが上昇しているのであれば、それは市場のおかげです。
逆に市場規模は停滞(または縮小)しているのに自社の売上げが上昇しているのであれば、それは自社の取っている戦略がうまくいっている(他社からシェアを獲得している)という事になります。
逆に売上が落ちている時も、市場規模の減少率に応じて自社の売上げも減少しているのであれば、ある意味致し方なしです。
しかし市場規模は停滞(もしくは拡大)しているのに自社の売上げが減少しているのであれば、自社の戦略を大幅に見直す必要があります。
このように自社(自分)の戦略の良し悪しをウォッチする為に、市場規模は常に把握しておかなければならないのです。
これは全てのビジネスに当てはまります。
市場規模をアンケート調査で把握する
但し市場規模を正確な数値で把握している必要は一切ありません。
『大体このくらい』というザックリした数値を把握している事が重要です。
一の位まで正確に覚えている必要は全然ありません。
その為、もし自分がビジネスをやっている業界の市場規模が分からないのであれば、アンケート調査で『概算』してみる事も可能です。
特殊な業界でない限り結構簡単にできます。
※ちなみにアンケートなどのマーケティング調査を行う際、一般の方が持っている誤解とそれを払拭するポイントを無料メール講座にまとめています。こちらも是非購読いただき理解を深めて下さい。
市場規模を知る調査設計
例えば東京23区内でペットショップを経営している方が同区内におけるペット市場の規模を知りたい場合、以下のようなアンケート調査をモニターパネルで行えば概算値が得られます。
【調査対象者】
東京23区内に住んでいる方
(年齢、性別は指定なし)
【質問文】
『あなたは昨年1年(2018年1月~12月)の中で、ペットを購入された経験はありますか?』
この質問で得られるデータにより、
東京23区内に居住している人の〇%が2018年にペットを購入している。
という数値を得る事ができます。
拡大推計で市場規模を概算する
そして、ここからが重要です。
『拡大推計』
という計算を行います。
住民基本台帳によると、2016年1月1日現在の東京23区内の人口は921万人です。
従いまして、もし上記で調査した「東京23区内に居住している人のうち、2018年にペットを購入した人の割合」が5%であれば、
921万人 × 5% = 46.05万人
となり、東京都内における2018年度のペット市場規模は約46万人という事になる訳です。
※5%という数値はダミーです。もし都内のペット需要を正確に知りたい場合は是非調査してみて下さい。
このように定量調査の結果を母集団全体に拡大して当てはめてみるというのが拡大推計です。
拡大推計に必要なサンプルサイズ
上記のように計算方法はそれほど難しくありません。
しかし、問題になってくるのがアンケートのサンプルサイズです。
例えば上記ペットショップの例の場合、
東京23区内921万人のうちでペットを購入した人数を推計するのに、アンケートのサンプルサイズが20~30人くらいだとしたらいくら何でも少なすぎるような気がしますよね?
まさにその通りで、拡大推計をする為のアンケートはある程度サンプルサイズを確保する必要があります。
では何人くらいのサンプルサイズが必要かというと、どれだけ正確に推計するのかにもよりますが、
誤差を±5%以内に抑えるのであれば、母集団の数に関係なくサンプルサイズは400を目安にして下さい。
※その400の根拠を話すと長くなるので、説明は割愛します。
詳しく知りたい方は以下のブログにまとめていますので是非ご覧くださいませ!
もちろん許容する誤差をもっと小さくして正確性を高めたいのであれば必要とするサンプルサイズも更に多くしなければいけません。
ただ国勢調査などかなりの正確さが求められるものであればまだしも、マーケティング調査であれば±5%の誤差で十分です。
拡大推計の精度を更に高める方法
上記のように拡大推計を行えば市場の規模を概ね把握できます。
何度も言いますが『概ね』でいいんです。
しかし、上記の方法からもう少し正確な市場規模を導き出す為、できればサンプリング割付をアンケート調査時に行うことをお勧めします。
これを次に解説しましょう。
サンプリング割付とは?
サンプリング割付とは、
アンケート調査を実施する前に性別や年代等の回答者属性ごとに回収するサンプルサイズを設定する調査方法
を指します。
上記の例のように400人をサンプルサイズとして、東京23区内在住でペットを購入した方の人数を拡大推計をするのであれば、アンケートモニターパネルを使えば1日もかからずにデータを集める事ができます。
しかし、ただ集めるだけだと回答者属性に偏りが生じてしまい、拡大推計の正確性に影響を及ぼすこともあるのです。
例えば、東京23区内の男女比はほぼ50:50です。(正確には若干女性の方が多いですが)
従いまして回答も男女共に同数であることが望ましいのですが、普通に回答を集めるとそうならないことがあります。
特に昼間にアンケートを開始すると主婦の回答数が必然的に多くなるので、結果として回答比率が女性に偏ってしまいます。(男性:150人、女性:250人など)
それを防ぐ為、アンケート調査を開始する前に『属性別に回収するサンプルサイズを設定』しておけば偏りを防ぐことができ、拡大推計をより正確に行う事ができるのです。
何の属性で割付すべき?
パネルのモニターさんは、性別、年齢、居住地、未既婚、世帯人数・・・といった情報を登録しているので、こういった属性で割付することは簡単です。
ただ、『どの回答者属性を使ってサンプリング割付すべきか?』は悩みどころだと思います。
結論から申し上げると、特にこれといった答えはありません。
「これは予め割り付けておかないと変なデータが出てくるな・・・」と感じたら、目的に応じて割付する属性を決めます。
しかし、悩んでなかなか調査に進めないようでしたら、とりあえずは性別のみサンプリング割付をしてやってみてはいかがでしょうか。
今回お伝えしている拡大推計については、絶対にサンプリング割付をしなければいけないという訳ではありません。
あくまでより正確に推計する為の方法であり、やらないとデタラメなデータが出てくるわけではないですから。