【永久保存版】消費者の本音・心理を探り取るインタビューフローの作り方

 

こんにちは!
マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。

今日は定性調査、特にインタビュー調査をやるのに欠かすことができない『インタビューフロー』の作り方についてお話ししたいと思います。

アンケート(調査票)がないとアンケート調査ができないように、インタビューフローを事前に作成しないとインタビュー調査はできません。
もっと言えば、この出来栄えが定性調査の成功・失敗に大きく作用します。

 

『インタビューフロー』って何?

そもそもインタビューフローとは何か?ですが、文字通りインタビューの流れ(フロー)を明確にしたものです。
『ディスカッションフロー』、『インタビューガイド』、『ディスカッションガイド』と呼ぶこともあります。

どんな質問ををどんな順番で聞くか?

例えば以下は、僕が最近作ったある定性調査のインタビューフローです。

マーケティング調査をやるからには何を調査によって明らかにすべきかという『調査目的』が存在するはずです。
その目的を達成するために、どんな質問をどんな順番でどんな風に聞いていくかを明確にしたものがインタビューフローです。

見てお分かりの通り、僕はいつもエクセル(表計算ソフト)でフローを作っています。
フローを作る為に特別なソフトやアプリが必要という訳ではないです。ワードやパワーポイントなど、自分が好きなものを使って作成して構いません。

インタビューで出てきた言葉は『データ』である

『インタビュー』と聞くとマスコミを想像してしまう方も多いはずです。。
しかし、マスコミのインタビューは『記事や番組の元ネタ』を取る為に行うのに対し、マーケティングリサーチのインタビューは『回答者の心理を分析する為のデータ』として利用する為に行います。

また通常、インタビューは1人だけではなく複数名に対して行います。
だからこそ、どんな質問をどんな順番で、どんな風に聞くのかを予めフローとして細かく設定しておかないと、『Aさんには聞いたけどBさんには聞いてない質問がある』なんてことが発生してしまう訳です。

またこれはやってみると分かるのですが、同じ質問でもどんな順番で聴いたのか、どんなトーン・ニュアンスで聴いたのかによって返答が異なります。
だからこそ、どんな質問をどんな順番でどんな風に聞いていくかを事前に固めておく必要があるのです。

インタビューフローは誰が作るもの?

そもそもこのフローは誰が作るべきなのか?ですが、基本的にはインタビューをする人(定例調査ではモデレータと呼びます)が作るべきです。

たまに『このインタビューフローで調査をやってください!』とお願いされる時もありますが、他人が作ったフローでインタビューをするのは正直かなりしゃべりにくいです。

また後述しますが、インタビューは事前にフローに則ってシミュレーションをし、細かい言い回しやトーン、ニュアンスを修正して本番に挑みます。
その為インタビューを行う本人が作り、必要に応じて本人が微修正を行うのが一番良いのです。

※モデレータの役割やコツについてはこちらで詳しくまとめています。

インタビューフローには何を書けばよいか

先程お見せしましたが、僕が最近作ったインタビューフローを再掲しますね。

インタビューフローに何を書くのかについては作る人にもよるので決まったフォーマットはありません。
ただ、僕の場合は

● 項目・・・大くくりのパートを決めて書く
● 詳細・・・質問事項を『話し言葉』で的確に書く
● 備考・・・メモ欄だが、基本的には各質問によって『何が知ることが目的なのか』を書く
● 時間・・・各項目にかける時間の目安を書く

という枠を作ってフローを作成します。

一番重要なのは『詳細』と『備考』の欄です。
『何を知る為にどんな質問をどんな風にするのか?』が重要なので、最も時間をかけて考えるのはこの2つです。

インタビューを構成する4つのパート

次に組み立てですが、基本的にインタビューは4つのパートを意識して構成します。
具体的に4つのパートとは、

● Starting
● Motivating
● Performing
● Closing

です。

1.Starting (スターティング)

まずは回答者の脳を調査に参加する環境に整えるパートです。
このパートではどちらかというとモデレータの話す時間が多いかもしれませんが、具体的には、

●この調査の概要説明
●個人情報の保守に関する説明
●インタビューを録音(録画)に関する説明
●自己紹介 (質問者、回答者共に)

を通常行います。

録音は分析の際に絶対必要です。ボイスレコーダーなどを準備し、必ずこのパートで回答者からその許可を取りましょう。
また録音をしないと、『重要な部分を聞き逃さないようにしなければ!』というプレッシャーがかかりインタビューに集中できません。多少聞き逃しても後で録音データをチェックすればいいや!といった位の気持ちが必要です。

2.Motivating (モチベーティング)

一連の説明や自己紹介が終わったら、徐々に本題に入っていきます。
しかし、いきなり難しい質問を浴びせるのではなく、まずは答えやすい質問から始めて『回答者のモチベーションを徐々に高めていく』ということを行ってください。

例えばアパレルブランドの調査の場合、「(自分の)ブランドに対してどのようなイメージを持っているか」、「新デザインの商品に対してどんな風に感じているか」などの質問はまだしません。

『あなたは月に何回くらい服を買いますか?』
『普段どのようなブランドの服を購入しますか?』
『月にいくらくらい服を購入しますか?』

など、相手を考えこませる質問よりも事実を聞く質問に徹します。

3.Performing (パフォーミング)

回答者のモチベーションを高める事ができたら、上述の通り、「(自分の)ブランドに対してどのようなイメージを持っているか」、「新デザインの商品に対してどんな風に感じているか」など考えて答える質問をここに入れます。

おそらくここで聴く質問が、調査の中で一番聴きたい質問のはずです。
きちんと回答意欲が高められていれば、少々突っ込んだ質問も答えてくれるはずです。

4.Closing (クロージング)

一通り聴きたい事が聴けたら、最後に回答者をクールダウンさせましょう。
前のパートまでで回答者は難しい質問に対して頭を使っているので、その”回答熱”を冷やす為にも、例えば

『最後に、当ブランドについては何かご意見、ご要望などありますか?』
『本日のインタビューの中で言い忘れたことなどありますか?』

などの質問で、言いたいことを全て吐き出させ、クールダウンさせます。

この4つのパートを意識して質問を構成して下さい。

因みに、この4つのパートは定量調査(アンケート調査)の調査票を作る時も一緒です。
詳細は以下のブログで解説しています。

インタビュー調査を成功させるポイント

インタビュー調査にかける時間

これまでインタビュー調査を経験した事のない人は、『なるべく短時間で終わらせた方が効率的』と考えてしまいがちです。その為、1名あたり10~20分くらいでササッと・・・と思う方がほとんどではないでしょうか。
しかし、これは間違いです。

上述の通り、定性調査の回答は『回答者の心理を分析する為のデータ』なので、そのデータを10~20分で聴きだすのは到底無理です。

インタビュー調査にはモデレータ1名に対して回答者1名で行うデプスインタビュー(IDI)と回答者3~6名程度で行うグループインタビュー(FGI)があります。

多少前後はしますが、IDIの場合は60~90分、FGIの場合は120~150分くらいが相場です。
これを目安にして、先程の4パートを意識して質問を組み立てていきます。

最初にすべきは『ラポール形成』

上で4つのパートを紹介した時、最初のStartingパートでは質問者、回答者共に自己紹介を行って下さいと書きましたが、これを飛ばしてはいけません。
更に言うと、Startingのパートは目安としてIDIであれば10~15分、FGIでも30分程度時間をかけるべきです。

Startingパートの一番の目的は、場を和ませて回答者が回答しやすい雰囲気を作るという事です。

インタビューに呼ばれた人というのは、『何を質問されるんだろう?』というちょっとした不安や、『あまり変な事をしゃべっちゃいけない』という緊張感を抱えているものです。
このような回答者の不安や緊張は言い換えれば『心にちょっとしたバリアを張っている』状態なので、このバリアを取り去らないと本音を語ってくれません。

本音を語ってくれない定性調査は意味がないのです。

このように不安や緊張を消去して話しやすい環境を作る事を『ラポール形成』と言います。
カタ~い雰囲気にせず、お互いに楽しくしゃべれる空気にしましょう。

自然な流れを意識する

先程の4つのパートでも書いた通り、Startingパートが終わった後は答えやすい質問(事実を聞く質問)から始め、徐々に答えにくい質問(考えて答えてもらう質問、想像を膨らませる質問)に移行するのが鉄則です。

それに加え、質問の流れで意識しなければならないのが『自然な頭の流れになるような順番』にすることです。

例えばクルマを購入した時の事をインタビューするのであれば、

①クルマを購入しようと思ったキッカケ
②その時に購入候補に入れたクルマの名前
③その中から実際に購入したクルマの名前
④購入したクルマの乗り心地や感想

という感じで過去⇒現在⇒未来という風に流れるのが質問としては自然です。
(もしくは未来⇒現在⇒過去と言う風に遡る事もあります)

これが例えば現在⇒未来⇒過去と流れて、最後にもう一回未来のことを聞く・・・なんて形になってしまうと回答者の頭の整理ができません。

インタビューとはいえ、自然な会話のように話を進めるのがベストです。

フローは極力『話言葉』で書く

時々、質問項目しか書かれていないインタビューフローを見かけるのですが、僕としては質問をきちんと文章で、できれば『話し言葉』で書く事をおススメします。

上述の通り、基本的にインタビューフローは自分でインタビューする為に作ります。
その為、ある程度は頭の中に流れを記憶していると思いますが、それでもその時の気分で聴き方を変えてしまう事があります。

また1つの調査を複数のモデレータにやってもらう場合(基本は1調査1モデレータなのでお勧めしませんが)、質問項目しか書かれていないと、ニュアンスがグループ毎によって異なってしまいます。
例えばクルマの購入意向を聞く質問でも、

モデレータA:この車を購入したいですか?
モデレータB:この車は購入候補となりますか?

という風に聴き方が違ってしまう訳です。

直接聞いていい質問と聞いてはいけない質問

ここがちょっと難しいのですが、質問には直接聞いていい質問直接聞いてはいけない質問があります。

直接聞いていい質問というのは、

●事実を聞く質問
●ある程度考えれば回答できる質問

を指します。
『その商品はどこで購入したのか』、『いつ頃購入したのか』、『誰と一緒に購入検討したのか』、『どんな情報を参考に購入検討したか』などがこれに当てはまります。
疑問詞で言うと、基本的にはWhat、When、Who、Where、Howが直接聞いていい質問です。

逆に直接聞いてはいけない質問というのは、

●回答者の無意識の中で答えがある為、回答できない質問

になります。
一般的にはWhy(なぜ)で聞く質問です。

これは他のブログで詳しく説明していますが、人間は無意識の中で様々な行動をする動物であり、その行動理由を『なぜ?』という疑問詞で質問してもきちんとした答えが出てこない場合が多いです。
もしくは回答者が頭の中で答えをでっち上げる可能性もあります。

『なぜあなたはこの商品を購入したのですか?』

ではなく、例えば

『あなたがこの商品を購入した時のことを詳しく聞かせてください』

といった言葉に言い換えて、その時の情報を丁寧に聞いていくなどの工夫が必要です。

※参考にこちらのブログも一緒に読んで下さい。

できあがったフローの評価の仕方

さて、上記のようなやり方で一度作り、インタビューをやってほしいのですが、できがった後に『このインタビューフローで大丈夫かな・・・?』と不安になりますよね。

失敗を避ける為、実際の調査へ移る前に以下の2つを必ずやりましょう。

第三者(有識者)に見てもらう

言うまでもなく、周りに定例調査に詳しい人がいるのであれば是非見てもらってください。
マーケティングリサーチは経験がモノを言う世界ですので。

ちなみに『調査のまなびば』に入会いただいている方は、私にフローを送っていただければ細かく添削します。入会されていない方はこの機会に是非ご検討下さいませ。※宣伝です(笑)

自分でインタビューのシミュレーションをやる

有識者が周りにいる/いないに関わらず絶対にやってほしいのがシミュレーションです。
これがフローの評価のカギになりますので、特に初めてインタビュー調査をする方は多くの時間を割いてでも確実にやってください。
その際に以下の視点でシミュレーションすると良いでしょう。

●自分がモデレーターとなって質問してみること

フローに書いてある質問を声に出してみましょう。その時、どのようなトーンやイントネーションで質問するのかを考え、何度か練習してみて下さい。
同じ言葉であっても、ちょっとしたトーンやイントネーションの違いで受け手側が感じるニュアンスが異なります。

●回答者になって答えを想定する

各質問を行ったことにより対象者からでてくる様々な答えを想定してみてください。
そしてそれに対して『どのように切り返すのか』を事前に考えておきましょう。

この時、『あれ、何となく答えにくいな』と思ったら、それは質問の文言を再検討すべきというサインです。
自分が答えにくいと思ったものは、他の人も答えにくいものです。

インタビューフローはどんどん修正してOK

上記を基に、初めて定性調査をやる方はまず一度インタビューフローを作ってみて下さい。
定量(アンケート)調査も定性(インタビュー)調査も、回答者に答えてもらう調査は全てそうですが、如何にストレスなく回答してもらえるかが1つの重要なポイントです。

そして終わった後、『面白いことが聴けたな!』という感触があったらそのインタビューはひとまず成功と言っていいと思います。
逆に『何かつまんない意見しか聞けなかった・・・』と思ったら、もう1度上記を読み返し、質問の順番や話し方が悪くないかどうかをチェックしてみて下さい。

そしてインタビューフローを修正すべき点が見つかったら、次の回答者(回答グループ)のインタビューに移る前に修正してしまいましょう。
もっと言えば、一番最初の回答者(回答グループ)はデータとして使わず、インタビューフローがきちんとワークするかどうかを確認するだけの目的でやってもいいです。

アンケートと違い、インタビューフローは調査中に何度でも修正変更できます。
修正すべきポイントを放っておく必要はないのです。

 

Lactivatorの動画講座を『Udemy』で配信中!

Lactivatorが定期的に開催しているマーケティングリサーチの講座が、オンライン学習サービス『Udemy』に登場! 1つの単元を約10分前後の動画で解説しているので、通勤途中でもカフェでも、あなたの好きな時間に好きなだけリサーチを学ぶことができます。 最初の10分は無料で視聴いただけますので、是非ご覧ください!

関連記事