【店舗経営者必見!】テーブルアンケートを有効利用して売上を倍増させる


マーケティングリサーチャーの渡邉 俊です。

アンケートというものは我々のようなマーケティング担当者だけが行うのではなく、実に様々な場所で実施されています。
例えばレストランや定食屋さんで食事をすると、テーブルに写真のようなアンケートがよく置いてあります。

このアンケート、おそらくはそのお店の経営者の方が『生のお客様の声を聴きたい!』から置いているのだと思います。
しかし中身を見てみると、これではアンケートとしての意味をなしていないなあと感じるものばかりです。

お客様からの貴重な意見をきちんと吸い上げ、お店の経営に役立てる為にはこのアンケート自体をもっと『設計』する必要があるのですよね。

何度かお話ししていますが、アンケートで正確にお客様の意見を吸い上げる為には設計が必要です。

このようにお客様にテーブルで書いてもらうアンケートを『テーブルアンケート』と呼んでいますが、きちんと設計をすれば、お店経営の劇的改善に役立つツールにも成り得るのです。

 

事例)一般的なテーブルアンケート

添付は、ある中華料理屋さんに置かれていたテーブルアンケートになります。
まずは中身を見てみて下さい。

※クリックすると拡大します。

いかがでしょうか?
一見、どこの飲食店にも置いてありそうなテーブルアンケートなのですが、正直これだとお店の経営改善に役立てるのは無理と思います。

実はこのアンケート、以前私がコンサルさせていただいた中華料理屋さんのものでして、最初にこれを見せていただいたのです。

実際には、当時お店のオーナーさんの要望を聞いて一から設計し直したのですが、どう設計したのかを書くと壮大なコラムになってしまいますので、今回は私がこのアンケートを見て指摘したことをお話ししたいと思います。

 

① まずアンケートを取る目的を決める

まず、『なぜ来店したお客様にアンケートを取るのか?』の目的を明確にしましょう。
世の中にあるアンケートのほとんどがそうなのですが、ここが明確になっていません。

目的がないと、どんな質問を設定するべきかを考えることができません。
目的を決めずに闇雲に質問を並べているだけだと意味がないのです。

最初にこのアンケートを拝見した時、この中華料理屋のオーナーに

『なぜ来店したお客様にアンケートを取りたいのですか?』

という質問をしたところ、最初はう~んと考え込んでしまいました。
正直、オーナーはやらないよりやった方がよいくらいにしか思っていなかったのですよね。

しかし、最終的には、
『お客様がうちのサービスに満足なのか、不満なのか、不満であれば具体的に何が不満なのかを聞きたい』という答えが返ってきました。
大変素晴らしい目的だと思います。

しかし、そうであるならば、大事な質問が抜けています。
それは、
●総合的に、当店で食事をしたことに満足していますか? <お店の総合満足度>
●(不満という回答があった場合)具体的にどのような点がお気に召しませんでしたか?<不満の理由>

の2点です。
これを聞かないと目的を達成できませんよね。

このように、アンケートを取る目的を明確にしないと、聞くべき質問は何なのかがわからなくなってしまいます。

 

② 回答者の負担を極力減らす

また、現状のアンケートだと、

・答えるのが面倒くさく、回答してくれない。
・正確な回答を得られず、間違った情報になってしまう。

可能性大です。

アンケートは、『回答への負担を極力減らして正確な回答を得る』ように設計しないといけません。

その為には以下のポイントを修正する必要があります。

– 回答は『選択式』が基本

まず以下の設問、
『■ご注文いただいたメニュー:(                  )』

ですが、ここはできれば選択式にした方が良いです。
なぜなら、ここは中華料理屋ですので、ほとんどのお客様は複数の料理を注文するはずです。
それなのに回答欄がカッコ(  )1つしかないのは、回答者にとって非常にストレスを感じるからです。

また、自分がお客様になった時の気持ちを考えていただければわかると思いますが、自分が注文したメニューの名前を憶えている人なんてほとんどいません。

もちろん、『チャーハン』くらいだったら覚えていると思いますが、お店のメニューの中に
・五目チャーハン
・海鮮五目チャーハン
・レタスチャーハン
・あんかけチャーハン

など、チャーハンにも複数の種類がある場合、正確にその商品を答えてくれる人は少ないでしょう。
多くの方が『チャーハン』と一言しか書いてくれない事が想定され、お店側があとになって『このお客様はどのチャーハンを注文されたのか』の確認に時間を費やす羽目になってしまいます。

– 回答に時間がかかる質問はしない

『5. 接客を担当したスタッフのお名前をお書きください。』

の質問ですが、できればこれは削除した方がよいです。

自分がお客様になった時の気持ちを考えていただければわかると思いますが、スタッフが胸につけている名札をいちいちチェックしているお客様はほとんどいません。

その為、お客様がこの質問に答える為にはわざわざ接客スタッフの名前を確認する手間が発生します。
そうなると面倒くさいので、この部分は空白、最悪の場合はアンケートそのものに答えてくれなくなってしまいます。

– 選択肢の数は必ず奇数にする

『4. 味はいかがでしたか。
 ●良い     ●やや良い     ●やや悪い      ●悪い』

この質問以外も選択肢は全て4つになっていますが、このように程度やレベルを聞く場合の選択肢は奇数にすることが鉄則です。

なぜなら、奇数にすることによって『●どちらとも言えない』という選択肢ができるからです。

『味は良くもなく悪くもなくって感じなんだよなあ・・・』と感じるお客様は少なからずいらっしゃるはずです。
それなのに、上記のように選択肢が偶数個しかないと、良いもしくは悪いを強制的に選択しなければならず、これでは正確な聴取とは言えません。
必ず奇数個(5個、7個、9個・・・)に設定しましょう。

– アクションに結び付かない質問はしない

『1. メニューの品ぞろえはいかがでしたか。
 ●多い     ●やや多い     ●やや少ない      ●少ない』

この質問だけちょっと異質です。
なぜならば、味や接客の質問のように良し悪しのレベルを聞いているのではなく、品ぞろえの状態を聞いているからです。

となると、この質問に対する回答の解釈が難しくなります。
『●多い』と答えた人の中には、『メニューが多くて選ぶのが楽しかった!』とポジティブな思いを持っている人と、『メニューが多すぎるから減らしてほしい!』とネガティブな意見を持っている人が混在してしまいます。

従いまして、この回答を集計したとしても、結果を基にどんなアクションを取ればいいのかがわからなくなってしまうのです。

アクションが取れないのであれば聞くだけ無駄なので、すっぱり削除してしまいましょう。

– 価格の質問はご法度

『2. 価格はいかがでしたか。
 ●安い     ●やや安い     ●やや高い      ●高い』

以前もコラムに書きましたが、マーケティングリサーチを行う上で一番難しいのが価格の調査です。
自分の商品の適正価格はいくらなのかが知りたいのだと思いますが、これを調査するにはかなりのリサーチスキルを要します。
なぜなら、お客様も目の前にある商品がいくらであれば適正かなんてわからないからです。

上のような質問は、巷のアンケートでよく見かけますが、これだと『やや高い』、『高い』と答える人が自然と多くなります。
人間誰しも、お金を支払うということは『支出の痛み』を伴うということです。
この痛みを少しでも軽減したいという心理が働くので、自然と『高い』と答えが多くなってしまうのです。

従いまして、価格に関してアンケートで聞きたい気持ちはよくわかりますが、テーブルアンケートで解決できるような話ではないので、ここでは諦めて質問を削除しましょう。

どうしても自分の商品の適正価格を知りたいという方は以下のコラムを是非参考にして下さい。
PSM(Pricing Sensitivity Measurement)という手法があります。

– 可能な限り『具体的な』日本語で

最後に細かいことですが、なるべく具体的な日本語で質問文や選択肢を書くべきです。
今回のアンケートならまだ良いですが、もっと本格的な調査をする場合、あいまいな日本語で質問文を書くと回答者が内容を誤解してしまう危険があります。

例えば今回の場合、『~はいかがですか。』という文言で質問文が統一されていますが、これはちょっとあいまいな日本語なのです。
できれば『味には満足されましたか。』、『接客には満足されましたか。』という風に、『~には満足されましたか。』の方が具体的な日本語です。

もっと言えば、先ほど総合満足度の質問について、
『総合的に、当店で食事をしたことに満足していますか?』

という質問文を書きましたが、
『あなたの友人な知人に、当店をどの程度勧めたいと思いますか?』
という形にするとより総合満足度を評価しやすくなると思います。

これは「NPS(Net Promotor Score)」という方法ですが、『満足していますか?』という質問よりも『どの程度勧めたいと思いますか?』の方が回答者の行動を伴うので、より結果が鮮明になります。

※NPSに関しては以下のコラムで詳しく説明しています。

ということで、細かい部分でもっと指摘したいところはあるのですが、目立ったところで直さないといけないのはこのくらいです。
ここを直せば、分析しやすいアウトプットが得られると思います。

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③回答率を上げる工夫をする。

最後に考えないといけないのがこれです。
折角作ったアンケートですが、誰も回答してくれなければ何も意味がありません。
ただ、これを単純に客席のテーブルの上に束で置いてあるだけではほとんどの人が答えてくれないはずです。
よほどお店に対して文句やクレームを言いたいのであれば別ですが。

回答率を上げる方法として手っ取り早いのはインセンティブです。
この場合であれば、例えば『回答してくれた方にはもれなく「ぎょうざ一皿半額券」をプレゼント!』のようにお礼の品を設定すれば回答率は上げられるでしょう。

しかし以前のコラムでも解説したように、インセンティブはあまりお勧めしていません。
なぜなら、このインセンティブだとリピーターやまた来たいと思っているお客様の回答が多くなり、二度と来たくないと思っているお客様の回答が集まりにくくなるからです。
要するに、回答者の属性が偏ってしまうのですね。

また、このインセンティブを設定するという事は、いわゆる「ぎょうざ半額の値段で回答を買っている」ということに等しい訳ですから、その分売上げは減ってしまいます。

※インセンティブについては以下のコラムで詳しく説明しています。

従いまして、まずはインセンティブ無しで回答率を上げることを考えましょう。

すぐにできるのはアンケートをテーブルに束で置いておくのではなく、店員がお客様に直接手渡すということです。この方が回答率はぐっと上がります。
料理を運んだ際でもよいですし、お客様が食べ終わって一息ついている時でも構いません。

テーブルに束で置いておいただけでは、アンケートの存在すら知らずに帰ってしまう可能性大です。
きちんと店員から『宜しければアンケートに答えていただけませんか?』と伝えて渡した方がよいです。

もちろん、それでもお客様全員が答えてくれるわけではありません。
忙しい人はすぐに帰ってしまいますし、そもそもお客様にとっては面倒くさい作業です。
ですが、だいたい20%(5人に1人)の回答率が確保できれば十分ですので、そこを目標にまずはやってみた方が良いと思います。

いかがでしょうか。
『テーブルアンケート』は単にテーブルに置いてあるオブジェではありません。
これを使って有益なデータが得られれば、経営を大きく改善させる可能性を持っています。
ご参考になれば幸いです。

 

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