【事前に知っておくべき!】アンケート調査には弱点があるということ

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マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。

さて、何度かこのサイトを訪れている人はご存知と思いますが、このサイトは『マーケティングリサーチの学び場』です。
そしてブログやメール講座では、リサーチの手法の中でも一般的でとっつき易い「アンケート調査」のやり方や分析方法を中心に取り上げております。

アンケート調査というのはきちんと回答者の本音を得る調査を行うにはスキルやノウハウが必要な訳です。

 

しかし、その世間一般に幅広く実施されているアンケート調査にも『弱点』というものがあります。
比較的実施しやすい調査方法だからこそこれほどまでに世間に浸透している訳ですが、実は万能だとは言えません。
もっと言えば、インタビューやエスノグラフィーなどの他の調査方法も利点の弱点の両方があります。

今日はその『アンケート調査の弱点』についてお話しします。

 

そもそも、アンケートはリサーチ手法の1つに過ぎない

定性調査と定量調査

まずマーケティングリサーチとは、何かビジネスで困った事や解明したい事がある時、戦略などを作る時に行う訳ですが、方法は色々あります。
『マーケティングリサーチ=アンケート調査』と考えている方も多いのですが、そもそもアンケートというのは様々なリサーチ手法の中の1つに過ぎないのです。

ちょっと堅苦しい話になりますが、マーケティングリサーチの手法は大きく分けると『定量調査(量的調査)』と『定性調査(性的調査、質的調査)』の2種類があります。

定性調査というのはアウトプットデータが言葉や行動などであるものを指します。
具体的にはインタビュー調査やエスノグラフィー(行動観察)などであり、対象者との対話や行動を観察することによって知見を得る調査です。

一方定量調査とは、アウトプットが数字であるものを指します。
そして代表的なものがアンケート調査であり、『Aと答えた人が○%、Bと答えた人がX%・・・』という風に結果が量で出てくるわけです。

 

目的に応じて調査手法を選ぶ

そして先ほど申し上げた通り、それぞれの手法には利点(メリット)と弱点(デメリット)があります。

ですから、何か問題に直面した時に、

『とりあえずアンケートでも取ってみたら?』

なんて言う方もいますが、本来であればその問題を解決する為にどの調査手法を選択するのが適切かを検討する必要があるのです。

ただマーケティングリサーチ初心者の方があまり難しい調査方法を選択しても実行できません。
一方アンケートは一般的に広く行われていて実施しやすいので、まずはこれを正しく行うスキルを身に付けるのがよいと思います。

 

アンケート調査の利点(メリット)

とにかく一番実施しやすいリサーチ方法である

アンケート調査がこれだけ様々な場所で行われているのは、とにかく一番実施しやすい方法だからです。
アンケート票(調査票)さえ作ってしまえば、回答者の意見を集められる訳ですからね。

もちろん1人1人インタビューして意見を集めるということもできる訳ですが、それにかかる時間の事を考えればアンケートの方が容易だという事は想像つくと思います。

但し以前から申しあげている通り、集めた結果が信頼できるものであるかどうかは別問題です。
使えるデータを得るには、全体の調査設計や質問の仕方にかかっています。

 

結果が「数字」で示される

アンケート調査は定量調査なので、結果を「数字」で計る事ができます。
上述の通り、『Aと答えた人が○%、Bと答えた人がX%・・・』という形ですね。

そんなの当たり前と思うかもしれませんが、これも列記としたアンケート調査のメリットです。

どのビジネスでも意思決定というのは数字のデータに基づいて行われますよね。

先月に比べて売り上げが〇%落ちたから今月は営業マンに気合を入れようとか、新しい機材を導入すれば作業時間が△%削減されるとか、A社の見積に比べてB社は×円安いからこちらに発注しようとか。

逆に言えば、数字がないと判断が難しくなってしまいます。

もちろんインタビュー調査でも「〇人中×人がAと答えた」という風に結果を数字で出すことはできますが、アンケート調査のように何百人、何千人というサンプル数で出すことはかなりの手間暇がかかります。

統計学上、調査というのはサンプル数が多ければ多いほど信頼性が高くなります。
信頼性が高く、かつ数値でデータを出すのはアンケート調査が一番適しているのです。

 

アンケート調査の弱点(デメリット)

アンケート調査は比較的容易に実施できる反面、以下のような弱点があります。
だからといってアンケートがダメという訳ではありません。
実施する前に頭の中に弱点を入れておいていただくことが重要です。

※アンケート調査の弱点については以下の無料メール講座の中でも詳しく解説しています。
この機会に是非、正確な知識を付けて下さい。

 

『理由』の深堀が難しい

アンケートの中で、

『あなたが〇〇と思った理由は何ですか?』
『あなたがこの商品を購入した(もしくは購入しなかった)理由は何ですか?』

と、理由を聴く質問はもちろん可能ですし、多くの定量調査でも行っています。

ですが、その理由を深堀していくのがアンケートだと難しいのです。

 

例えば、以下のようにクルマの購入理由を明らかにしたい場合。

質問者:『なぜあなたはこのクルマを買ったのですか?』
回答者:『デザインが気に入ったからです。』
質問者:『具体的にどのあたりのデザインが気に入ったのですか?』
回答者:『前からこのクルマを見た時のヘッドランプ周りですね。』
質問者:『ヘッドランプ周りのデザインを見た時に何をイメージしますか?』

・・・続く。

という風にクルマの購入理由は人それぞれですし、仮にデザインが気に入ったといっても具体的にどの部分をどんな風に感じて気に入ったのかも人それぞれですよね。

このように理由というのは、質問を重ねて深堀していくことにより具体化できます。
しかしアンケートだとそのように質問を組む事が難しいのです。

もちろん、理由に関しては自由記述で回答してもらう方法もなくはないですが、文章で答えるという事は回答者にとっては面倒くさい作業であり、回答率は著しく低下します。

より深堀をして理由の真意を知りたい場合はインタビュー調査の方が適しています。
但しインタビューだとたくさんの人に聴く事が難しく、量がわからないので、

● まず何名かの方にインタビューして理由を深堀する。
● 得られた『深堀理由』をアンケートにかけて、どの理由がどの位多いのかを測る。

という手筈を踏むのが一般的です。

 

調査開始後は調査票(アンケート票)を変更できない

またこれも定性調査との比較になってしまうのですが、1度調査が始まったら調査票を変更する事は原則できません。
回収数を500人と決めたら、同じ調査票で500人に聴取しないと「量」を計る事ができないですからね。

 

インタビュー調査の場合、調査票ではなく『インタビューフロー(ディスカッションフロー)』というものを作って臨むのが通常です。
どんな質問をどのタイミングで、どんな順番で行うのかを細かいフローにした資料ですね。
これを事前に作成して質問者はインタビューを行っていく訳ですが、途中で質問の追加/削除は自由にできます。

むしろ途中で、『調査の目的を達成する為にはこんな質問もやった方がいいのでは?』というアイデアが出てきたら積極的に取り入れた方が良いです。

ですが、アンケートの場合は事前に作成した調査票を最後まで使わなければならず、一度始めたら後戻りはできません。
事前の調査設計をしっかり組み立てる事がかなり重要になってくるのです。

 

回答者の無意識にアプローチできない

これはアンケート調査のみでなく、インタビュー調査など対象者に何かしらの質問をする調査全般の弱点でもあります。
どうしても回答者が何かしら質問に答える時は『意識』が働いてしまうという事です。

例えば先ほどの質問。

質問者:『なぜあなたはこのクルマを買ったのですか?』

という風に質問すると、人間は意外と答える事ができません。
高確率で『何となく良いかなと思って・・・』という回答が返ってきます。

もちろん、本当は心の奥底にきちんとした理由があるはずです。
しかし、本人自身もそれを自覚しておらず言葉や文章にできないという事です。

このように『人間は自分が行った行動の理由を合理的に説明できないこと』を、行動経済学では『行動の不合理性』といいます。

 

アンケートで回答者の無意識にアプローチするのはかなり難しいですが、『仮説』をもって調査する事によりある程度は解決できると思います。

要するに、『回答者は心の奥底でこんなことを考えているのでは?』という仮説を立て、それをアンケートの中でぶつけるということです。

人間、自覚していない事であっても、他人から『あなたは〇〇だからこういう行動をしたのではないですか?』と質問されれば答える事ができます。
人間の心理は難しいですが、こうすることによってある程度は無意識にアプローチする事が可能です。

 

まとめ:弱点を知ったうえでアンケートに臨むこと!

最初に申し上げた通り、アンケートには弱点があるからやるべきではないとは言いません。
むしろ積極的に実施すべきだと思います。

他のブログやメール講座でもお話ししていますが、

●事前のアンケート設計をしっかりやること
●仮説を持って調査を行うこと

の2つを行えば、アンケートの弱点はある程度克服できます。

 

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