マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。 ●無料メールで学ぶマーケティング講座配信中⇒こちら
マーケティングリサーチャーの渡邉です。
今日はマーケティングの中でもとっても重要な
『価格』についてお話しますね。
自分の商品やサービスを販売する時、
いくらで売ろうか・・・と悩んだことありませんか?
結構悩むのですが、最終的には『えいやっ!』っと
決めてしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、当然ですけど価格ってかなり重要なんですよね。
だってお客様にとって、その商品を買うかどうかの
最終判断をする為の判断材料なんですから。
これからお話いたしますが、
実は価格の設定や表示の仕方によって、
売り手が得られる利益に雲泥の差ができてしまいます。
要は価格とは『テクニック』的な要素が
たくさんあるんですよね。
利益を生み出す為の価格のテクニック
アンカリング
まず最初にお話するのは『アンカリング』です。
もしかしたら聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが
価格のテクニックとしてはとても基本的なものです。
覚えてしまえばすぐにでも実践できますので、
是非これを読んだらやってみてください。
早速ですが、皆さんは海外でこんな経験をした事はないでしょうか?
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Aさんはとあるアジアの国に旅行に行き
地元の小さな木彫りの人形を御土産を買おうとして店員を呼びました。
Aさん: 『これいくらですか? 』
店員: 『これはね、地元にしかない木を使って
職人が作った人形なんだ。100ドルはいただくよ。 』
Aさん:『え!?100ドルも!? そんなに高く見えないのに。
じゃあ、こんなのいらないよ。』
店を出て行こうとするAさん。しかし店員に呼び止められます。
店員:『 OK、じゃあ80ドルでどうだい? 』
Aさんの足が止まります。
しかしまだ高い。そこで、もっと安くしろと要望します。
すると今度は、
店員: 『60ドルでどうだい? 』
Aさん: 『う~ん、まだちょっと高いな・・・ 』
店員: 『じゃあいくらなら買うんだ? 』
Aさん: 『ん~、40ドルなら・・・』
結局40ドルで交渉成立。Aさんは木彫りの人形を
買っていくことになりました。
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どうでしょうか?
海外旅行に行くとよくある光景ですよね。
私も若い頃はバックパッカーで海外を旅行した経験があるので
こんな事は日常茶飯事でした。
さて、ここで1つ疑問に思うことはありませんか?
果たして『店員さんは40ドルで人形を売って利益が出るのか?』
という事です。
でもおそらく交渉を成立させたのですから店員さんにとっては
40ドルでも十分だったのでしょう。
多分その人形は原価10ドルくらいだったのではないでしょうか。
では、店員さんはなぜ最初に100ドルという法外な値段を
言ってきたのでしょうか?
これが『アンカリング』というテクニックですね。
ちなみにアンカー(Anchor)とは、船のイカリという意味です。
人間の脳みそは結構単純にできているようでして
最初に100ドルと言い渡されるとその100ドルという数値にイカリを
下ろしてしまいます。
もっと簡単に言えば、値段交渉をする際、100ドルが基準に
なって考えてしまうということです。
そして、その100ドルから段々値下がりしていくと
あたかも安く思えてしまうんですね。
何て汚い手を使うんだ!と思う方もいるかもしれません。
しかしこのようなテクニックは、上記ほどあからさまではないものの
よく使われています。
例えば、車のカタログ(価格表)などが良い例です。
通常車というのはいくつかのグレードに分かれており
それぞれのグレードで価格も異なりますが、ほとんどの場合
一番高いグレードとその値段を価格表のページの一番上に
記載しています。
ページを開いた時に最初に目がいくのはページの一番上であり
そこに記載してある価格に人間は無意識のうちにイカリを下ろして
しまうんですね。
それによって、その下にあるグレードの価格は安く感じさせるように
している訳です。
また、レストランのメニュー表などにも応用されている場合があります。
一番高い料理とその値段を大きな文字で目立つところに記載すれば
他の商品の価格を安く見せることができるでしょう。
このテクニックは様々なところで応用できるはずです。
皆さんが複数の商品を持っているなら、一番高い商品を一番目立つ所に
置いておきましょう。
他の商品の売り上げが上がっていくはずです。
極端性の回避
次にお話するのは『極端性の回避』です。
極端性というちょっと聞きなれない言葉を使っていますが
まずは気にせず読んでみて下さい。
よくお寿司屋さんなどに行くと松・竹・梅といった形で
いくつか選択肢を持たせたメニューがあると思います。
皆さんが寿司を頼む時、松・竹・梅のどれを選びますか?
寿司ではなく、鰻重でも何でも構いません。
このように同じメニューで3つの選択肢がある場合
皆さんはどれを選択するでしょうか?
そんなのその時のお腹の空き具合によって違う!かもしれませんが
しかし実はこのような場合、一番選ばれるのはどれなのかは
統計的に知られています。
『真ん中』です。
上のお寿司の例で言えば、”竹”ですね。
この時、竹を選んだ人はこんな風に考えていたのではないでしょうか。
松 → 中身は一番豪華だけど値段は一番高い・・・
梅 → 値段は手頃だが中身が少ない・・・
従って、値段の面から見ても中身の面から見ても一番損することのない
『竹』を選んだのです。
これを行動心理学では『極端性の回避』と呼んでいます。
マクドナルドのドリンクで一番多く注文されるのはSでもLでもなく
真ん中の”M”です。
スタバで一番多く注文されるサイズはShortでもGrandeでもなく
真ん中の”Tall”です。
必ず真ん中が一番多く選択されるのです。
選択肢が2つである場合、何かしらの制約がない限り50%ずつの
確率で各々が選ばれます。
しかしこれが3つになると真ん中が高確率で選択されるのです。
面白いですね。
アンカリングと極端性の回避を使った価格設定戦略
さて、今お話した『アンカリング』と『極端性の回避』ですが
価格戦略がどう関係するのでしょう?
機転の利く方はもうわかったと思います。
- まず自分の商品に松・竹・梅など3つのグレードを持たせる。
(グレードの名前はS・M・Lでも何でもよいです。) - 真ん中の商品の利益率を一番高く設定する。
- チラシやWebサイト上で、一番高い商品(松)とその価格を
目立つ所に記載し、その下に竹・梅の価格を記載する。
こうすればアンカリングによって「竹」の価格が安く感じ
かつ極端性の回避によって一番利益率の高い「竹」の選ばれる確率が高くなるので
多くの利益を得る事ができようになります。
例えば、一番上と一番下は原価に対して10%の利益になるように
価格設定するのに対して、真ん中は12%くらいにしておくとか・・・です。
なんて姑息な手を!と思うかもしれませんが、このやり方は様々なビジネスで
当たり前のように採用されています。
人間の心理を利用した、実にうまい価格設定方法です。
さらに言えば、上手な価格設定というのは人間の心理をうまく利用しています。
いかにお手頃に価格を見せるか、利益率の高い商品をいかにして買ってもらうか
というところが価格戦略の肝です。
価格バンドリング
さて、次は『価格バンドリング』についてです。
先程からカタカナ言葉がちょいちょい出てきますね・・・
苦手は方はすみません。
バンドリングとは何でしょうか?
マーケティングの本を見ると
「相互補完性のある商品やサービスを組み合わせて1つのパッケージとして提供すること」
と書いてあります。
何だか小難しいかもしれませんが、
要は昔、「抱き合わせ販売」と呼ばれていたものです。
例えば。
ある食堂で、「カツ丼」と「そば」がメニューとしてあったとします。
そのお店にAさんとBさんがやってきました。
Aさんはカツ丼に800円、そばに600円支払っても良いと考えているとします。
Bさんはカツ丼に700円、そばに700円支払っても良いと考えているとします。
さて問題です。
この2人にカツ丼とそばの両方を売る場合、それぞれの価格をいくらに設定すれば良いでしょうか?
答えは簡単ですね。
カツ丼は700円、そばは600円です。
700円を超える価格をカツ丼に設定するとBさんが買ってくれないですし
そばも同様で600円を超える価格ではAさんが買わなくなってしまいます。
カツ丼は700円、そばは600円で売れば、食堂の売り上げは2600円になります。
しかし、ここでよ~く考えてみて下さい。
この2つの商品を組み合わせて「カツ丼+そば」セットとして1400円で売ったらどうでしょう?
AさんもBさんもこれら2つを足した値段:1400円で買ってくれるはずなので
セットで売れば2800円の売上になります。
そうです、おわかりですね。
セットで売った方が店としては得なのです。
このように相互補完関係にある商品を組み合わせることを「価格バンドリング」と言います。
だからこそ、マクドナルドを初めとするハンバーガーショップやファミリーレストランなどの
メニューはセットで販売されているのです。
またこれを少し応用したのが100円ショップになります。
例えばCさんのセロハンテープ、ファイル、はさみに対する購買意欲は
80円、120円、110円だったとします。
一方Dさんの購買意欲は110円、90円、120円だったとします。
仮にセロハンテープの価格が90円、ファイルが110円、はさみが100円だったとすると
お店が稼げるのはいくらになるでしょうか?
Cさんが買うのはファイルとはさみだけ(計210円)となり
またDさんが買うのはセロハンテープとはさみだけ(計190円)になるので
合計400円がお店の売り上げになります。
しかしこれらの商品が全て100円、3つの商品が合計300円で売られていたとすると
Cさん、Dさんともに3つの商品を買えるので、お店としては600円の売上になる訳です。
100円ショップに行って1個や2個だけの商品を買う人は少ないと思います。
結果的に多数の商品のお客様自身によるバンドリングを促しているのが
100円ショップの価格戦略なのです。
以上、すぐにでも実践できる価格戦略を紹介いたしました。
これをやるだけでも得られる利益はかなり違うと思います。
是非すぐにでも実践してみてください。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
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