マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
今日お話しするのはデータの『グラフ化』です。
アンケート調査を行った後、得られたデータをグラフ化する事が多々あります。
グラフすることによってデータが示している傾向を直感的に掴みやすくなりますし、また調査結果を誰かに説明する際はグラフ化した方が分かりやすくて説得力のあるプレゼンになります。
しかしグラフにもいくつか種類があり、どんな時にどのグラフを使うのが適切なのか大方決まっています。
これを間違えてしまうとデータの見方を誤ってしまう可能性にもなるのです。
【グラフの説明の前におさらい】アンケートの質問タイプ
まずグラフの説明をする前に、アンケートの質問タイプには大きく分けて2種類あることを知っておかないといけません。
それは、『SA』と『MA』です。
グラフの使い分けは、これらの質問タイプにも影響します。
SA (Single Answer:単一回答)
SAとは『単一回答』という意味です。
“以下の中から当てはまるものを1つお選びください。”
という風に、数ある選択肢の中から1つ選ばせる設問ですね。
MA (Multiple Answer:複数回答)
一方でMAとは『複数回答』という意味です。
“以下の中から当てはまるものを全てお選びください。”
“当てはまるものを3つお選びください。”
という風に、選択肢の中から複数個選ばせる設問です。
グラフの種類とその使い分け
グラフを作成する場合、おそらくほとんどの方がエクセル(Excel)などの表計算ソフトを使うのではと思います。
そして、エクセルでグラフの挿入を行おうとすると、以下のように色々な種類のグラフがあります。
(下記写真の左側の縦に並んでいるのがグラフの種類です。)
ただ、アンケート調査の集計に頻繁に使うのは限られています。
『円グラフ』、『折れ線グラフ』、『棒グラフ』の3つでしょうか。
それに加えて、調査内容によっては『散布図』、『レーダーチャート』も使う事が多いです。
そこで今回は以下5つのグラフについて説明します。
1. 円 (円グラフ)
2. 折れ線 (折れ線グラフ)
3. 棒 (棒グラフ)
4. 散布図
5. レーダー図
1. 円グラフ (Pie chart)
円グラフとは、SA質問の回答結果の構成比(内訳)を可視化するのに使用します。
円全体を100%として、構成比が扇形の面積で表されます。
円グラフ事例) 現在お住いの都道府県
SAの構成比を見る時に使うグラフなので、MA質問には使用しません。
MAは1人で複数の選択肢を選ぶ人もいるので、全体が100%にならないからですね。
2.折れ線グラフ (Line chart)
折れ線グラフとは、主に時系列の変化を可視化する際に使用します。
横軸に時間、縦軸に回答結果の値をとってそれらを線で結びます。そして、その線の傾きにより、その値の増減が直感的にわかるようになるのです。
以下のグラフを見ると、時間が経つにつれて減少傾向にあることがわかります。
また折れ線グラフは以下のようにMAで聴取した回答結果を並列で比較する際にも多く見られます。
但し、基本的に折れ線グラフは時系列変化を示す時に使うモノなので、MAの回答結果を比較する際は棒グラフを使うのがよいと思います。
折れ線グラフ事例) 商品A,B,Cの認知度変化
3.棒グラフ(Bar chart)
グラフと言うと棒グラフを思い浮かべる方が一番多い(?)かもしれません。
棒グラフは、主にMA質問の回答結果を実数またはパーセント(%)で比較する際に使います。
選択肢の中から、値の高いもしくは低いものを可視化できます。
棒グラフ事例) ランドセル購入時に重視した項目
また棒グラフには、上記の様にグラフの左側に選択肢を表示して横向きの棒を並べたもの(横棒グラフ)と、グラフの下側に選択肢を表示して縦向きに棒を並べたもの(縦棒グラフ)があります。
どちらを使っても構いません。その時の状況に応じて見やすい方を選びます。
一般的には下のグラフのように、値の大きい順(小さい順)に選択肢を並べ替えて表すと更に理解しやすいグラフになります。
4. 散布図 (Scatter chart)
散布図は分布図とも言いますが、2つの要素からなる1組のデータが得られた時に、その2つの要素の関係を可視化するのに使います。
縦軸に1つの要素、横軸にもう1つの要素を対応させ、データを点でプロットしたものです。
散布図事例) ショールーム内展示機能の関心度と総合評価への効果
このグラフは、あるリフォーム会社が展開するショールームの調査結果です。
ショールームには色々な機能(アイテム)が展示されているのですが、来場者に対して
●各展示機能の関心度 ⇒縦軸
●各展示機能のショールーム全体評価への効果(影響) ⇒横軸
を聴取してプロットしています。
散布図を用いると、この2つの項目の関係性が分かります。
例えば、
-『非常照明』や『スマート分電盤』などの機能は来場者の関心度が高く、これらがある事によってショールームの総合評価にも高い影響を及ぼしている。
– 逆に『どこでも窓』や『掃除ロボット』は関心度が低く、ショールームの総合評価にほとんど影響していない。
という感じです。
5. レーダー図 (Radar chart)
レーダー図は、複数の評価項目の結果を比較する時に使用するグラフです。
その見た目から蜘蛛の巣グラフ(スパイダーチャート)と呼ばれたりもします。
下記は2つの商品名(AとB)の提示して、それぞれの名前から想像するイメージを7つの項目で評価した時の結果です。
レーダー図事例) 商品名A、Bのネーミングイメージ比較
レーダー図を使うのは同じ方法で評価した項目が3つ以上ある場合であり、結果は項目の数を角の数とした多角形で表されます。
基本的には描かれる多角形の面積が大きいほど良いのですが、上記のネーミングイメージ比較のようにそれぞれの評価対象(この場合、商品名Aと商品名B)の強みと弱みを一度に可視化できるのが特徴です。
グラフを使ってプレゼン資料を作る時の注意点
これらのグラフを使って調査結果を分かりやすく可視化できればプレゼンなどにも有効です。
但し、説得力を持った分かりやすいプレゼン資料を作る為、僕自身がいつも注意している事があります。
それは、
1.グラフには必ずサンプルサイズを記入する
2.円グラフは多用しない
3.グラフ上の数値記入要否を判断する
です。
1.グラフには必ずサンプルサイズを記入する
これは僕自身が注意しているポイントというか統計分析を行う上での礼儀です。
必ずそれぞれのグラフには『サンプルサイズ』を記入しましょう。
要するに、何人に回答を聴取した時の結果なのかをきちんと明記するという事ですね。
アンケート調査(定量調査)は回答数が多ければ多いほど信憑性が増していきます。
見ているグラフを信頼すべきか否かはその人の判断によりますが、それを判断する為の情報としてサンプルサイズが必要です。
2.円グラフは多用しない
上記で示したグラフの中で、円グラフはあまり使用しないようにしています。
(外資系企業やコンサルティング会社によっては使用を禁止している会社もあると聞いてます。)
理由は、結果がスッと頭の中に入ってこないからです。
例えば上の円グラフを例にします。
この場合、おそらく『20代男性』と『30代女性』のどちらかが一番多いのだと思いますが、どちらが多いのかを瞬時に判断するのは難しくないですか?
また逆に一番少ないのは『60代男性』か『60代女性』なのですが、これもどちらが一番少ないのかはすぐに分かりません。
円グラフでは各項目の面積と角度(または色)によって大小を判別しないといけないのですが、それは視覚的に難しいのです。
従いまして、項目ごとの比較をするのであれば棒グラフの方がよいです。
棒グラフは棒の高さで大小を見るので、こちらの方が視覚的に分かりやすいです。
3.グラフ上の数値記入要否を判断する
棒グラフでは、棒の高さによって数値の大小を視覚的に比較できます。
しかしより視覚的に分かりやすくする為に、各棒に数値を記入した方が良いです。
但し、何でもかんでも数値を記入した方がよい訳ではありません。
僕自身のルールでは、
●円グラフ、棒グラフ ・・・ほぼ100%数値を記入する。
●折れ線グラフ・・・状況に応じて数値を記入する。
●散布図、レーダー図・・・基本的に数値を記入しない。
ことにしています。
ポイントは数値を入れる事によって視覚的に分かりやすくなるかどうかです。
円グラフや棒グラフは各項目の数値を記入する事によって理解の補助になりますが、逆に散布図やレーダー図に記入するとグラフそのものが煩雑になり悪影響となります。
折れ線グラフの場合は状況によって判断します。基本は記入した方がよいのですが、グラフがごちゃごちゃになりそうでしたら採用しません。
グラフ化する理由は、データが示している傾向を直感的に掴みやすくする為です。
数値の記入がそれを阻害するのであれば、記入しない方がよいです。
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