『価格弾性値』って何?~概念から調査方法まで~

 

こんにちは、マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。

今回は『価格弾性』についてお話しようと思います。
これまでもブログの中で価格マーケティングに関していくつか触れてきましたが、価格弾性はその中でも非常に重要な概念になります。
是非覚えて下さいね。

価格弾性値とは?

価格弾性値の計算式

まず『価格弾性値』の定義をお話しすると、

『価格弾性値』 = 『販売数(需要)の変化率』 / 『価格の変化率』

で算出される数値となります。
要するに対象となる商品・サービスの価格を上げた(もしくは下げた)時に販売数が何%下がる(もしくは上がる)かを示した数値です。

例えば価格を1000円から1100円(10%増)に上げたことにより、販売数が100個から80個(20%減)になってしまった場合、価格弾性値は『20% / 10% = 2』ということになります。

商売を行っている人なら誰しも、
『実はちょっと値上げしたいのだけど、お客さんが買ってくれなくなっちゃうかな・・・』
なんて悩んだ経験ありますよね?

その時に値上げをするのかしないのか、また逆に値下げをしたらどのくらい販売数が上がりそうなのかを予測・判断するのに役立つのが価格弾性値です。
その商品の価格弾性値が大きければ大きいほど販売数は価格に大きく影響し、逆に小さければ販売数は価格に左右されないということになる訳です。

生活必需品の価格弾性値は小さく、嗜好品は大きい

一般的に食料品や飲料などの生活必需品の価格弾性は低い(価格の影響は少ない)と言われています。
人間が生きていく上で最低限必要なものは経済的に厳しくても買わなければならないので、多少値段が高くても消費者は買わざるを得ないからです。

一方、自動車や宝飾品などの嗜好品は価格弾性が一般的に高いです。
私は長年自動車メーカーでマーケティングをやっていましたが、自動車の価格弾性値は3程度と言われていました。要するに自動車の価格を1%高くすると販売台数が3%落ちるという事です。

こんな感じで、自分の業界や商品の価格弾性値をある程度把握しておくと価格戦略を構築する時に役立ちます。

価格弾性値の求め方

上記の通り、価格弾性値の概念はあまり難しいモノではありません。
価格が高くなれば販売数は少なくなり、逆に価格が低くなれば販売数が多くなるという極々当たり前のことです。

ただ、この価格弾性値を実際に求めるとなると結構大変なのです。
求め方としては大きく2つあるのですが、イメージを添付しましたのでご覧ください。

Ⅰ. 価格と売上の実績データから求める

対象とする商品の価格をこれまで何度か変えた経緯があり、また各々の価格での売上個数が分かるのであれば、それを以下のようにグラフ化してみるのが一番手っ取り早い方法です。

添付のグラフのように、

① 例えば420円で売っていた時は1日118個売れていたものの、430円で売っていた時は1日115個の売上だったとしたら、
価格を420円→430円(+2.4%)の変化で売上が118個→115個(-2.5%)に変化したということになるので、
価格弾性値は2.5 ÷ 2.4 = 約1.07ということになります。

② 一方で460円で売っていた時は1日103個売れていたのに、470円に値上げしたら1日96個に減ったとしたら、
価格を460円→470円(+2.2%)の変化で売上が103個→96個(-6.8%)に変化したということになるので、
価格弾性値は6.8 ÷ 2.2 = 約3.13になる訳です。

基本的に価格弾性値は、価格が高くなるほど大きくなります。
100円の品物の価格を1%動かすのと、1億円の品物の価格を1%動かすのでは後者の方が販売量に対するインパクトが大きいですからね。

重要)実績データから価格弾性を求める際の注意点

上記の方法であれば理論的には価格弾性値を求める事ができます。
しかしながら実際に実績データから正確な価格弾性値を求めるのはとても難しいです。

なぜならば、上記のように1つの商品の価格を細かく変化させるという事自体があまりないからです。
昨日420円で売っていたものを今日は430円で売り、明日は440で売る・・・なんて風に細目に売値を変えていたらお客さんが怒りますよね(笑)

また更に言うと、昨日、今日、明日では『その商品を取り巻く環境』が異なります。

スーパーであれば土曜と日曜と月曜では同じ価格であっても来客数や売上数は違いますよね。
更に、給料日前であればなるべく支出を抑えたくなるのに対して、給料が入れば一般的に財布の紐は緩くなります。
また天気が晴なのか雨なのかも来客数に大きく影響します。

価格以外で売上個数に関係する要素がたくさんある為、価格だけ操作した時の売上の変化を実際の市場環境の中で確かめるのは困難なのです。

Ⅱ. 定量(アンケート)調査を行って求める

従いまして実績データで価格弾性値をチェックするのは難しいのですが、ちょっと手間がかかるものの消費者にアンケート調査を行って定量的に求めるという方法もあります。

アンケートの中でご自身の商品の内容やコンセプトを提示し、その後で
『この商品が400円だったらあなたは買いたいと思うか?』
『この商品が410円だったらあなたは買いたいと思うか?』
『この商品が420円だったらあなたは買いたいと思うか?』
『この商品が430円だったらあなたは買いたいと思うか?』
・・・
という風に価格を上げて購入意向を聴いていきます。
こうすると価格が上がるごとに買いたい人は下がってくるはずですので、それを先程のようにグラフ化し、価格弾性値を求めることができます。

上記のグラフの場合、例えば440円→450円(+2.3%)に値上げをすると購入率が56.0%→54.0%(-3.6%)に下がる事が分かるので、価格弾性値は、

3.6 ÷ 2.3 = 約1.57

と求める事ができます。

※因みに定量(アンケート)調査を効果的に行う方法については無料メール講座で詳しく解説しています。
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重要) 定量(アンケート)調査で価格弾性を求める際の注意点

この方法であれば価格以外で売上個数に関係する要素を無くした状態で弾性値を求める事ができます。

しかし上記はあくまで簡易的な方法です。もし自社商品と比較されやすい競合(ライバル)商品がある場合はその競合価格もアンケートで提示した上で調査を行った方がより正確な弾性値が求められます。

例えばある自動車メーカーが新しく発売するモデルAの価格弾性を求めたい場合、そのライバルとなる競合モデルB、C、Dが市場に存在するのであれば、それらの価格を調査票(アンケート票)内で回答者に提示し、その上で自社商品Aの価格を変化させた時の購入意向を聴取する訳です。

このように、その商品が置かれている市場環境をアンケートの中で再現させた方が現実に近い価格弾性値が求められます。
ただ裏を返せば、市場環境を再現するほど複雑なアンケートになるので注意が必要です。

 

まとめ

上記のように、価格弾性はマーケティングの基本ではありますが、正確に測定するのは結構難しいのです。
実際、Googleで価格弾性の具体的な数値を掲載しているページがあるかどうかを検索してもらえると分かると思いますが、ほとんどありません。
それだけ調べている人が少ないということです。

また算出にはⅠ、Ⅱの2つの方法がありますが両方とも一長一短あります。
どうしても自分の業界の価格弾性を算出したい!というのであれば是非上記の注意点を理解した上でトライしてみて下さい。

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