今注目のビジネス指標『NPS』とは何か?

nps

マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。

ここ数年の間で、様々な企業が『NPS』という数値を経営指標に組み込むようになってきているようです。
実際に欧米では既に株式公開企業の3分の1以上が取り入れています。

NPSは、自社の商品を実際に購入してくれたお客様に対して行うアンケート調査によって導き出される数値です。
そこで今日は、このNPSについて詳しく解説したいと思います。

NPSとは何か?

NPSとは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略であり、顧客ロイヤリティ(要するにその企業や商品に対する愛着や信頼度)を数値化したものです。
これまで、顧客ロイヤルティを測る指標としては『顧客満足度』というものをアンケート調査で取っていましたが、それに代わる新しい指標として注目を浴びているのです。

では、NPSをどうやって求めるかというと、自社の商品を購入したお客様に対してシンプルに以下の質問をし、0~10の11段階で答えてもらいます。

 

あなたは〇〇(企業/ブランド/サービスetc)を友人・知人にどの程度勧めたいと思いますか?

 

このうち、9~10に付けた人を『推奨者』、7~8を『中立者』、0~6を『批判者』として分類します。
要するにNPSとはその商品の『推奨意向度』を数値化しているわけです。

この質問が1つあれば、あとは回答結果によって対象となる商品(企業/ブランド/サービスetc)のNPSを簡単に計算する事ができます。

NPSの計算方法

NPSの計算は非常にシンプルです。要するに『推奨者の割合』から『批判者の割合』を引くことで算出します。

 

例えば、ある商品の推奨者の割合が35%批判者の割合が15%だった場合、35%-15% = 20%がその商品のNPSという事になる訳です。

NPSは+100%(全員が推奨者=熱狂的なファンばっかりの状態)から-100%(全員が批判者=誰もその商品を推薦したがらない状態)の中で日々変化しています。
また式を見てお分かりと思いますが、推奨者が多くかつ批判者が少ないほどNPSは上がる事になります。

なぜ顧客満足度よりもNPSなのか?

これまでは商品やブランドの評価をアンケート調査で行う時は、『顧客満足度』というもの聴取していました。
要するに購入してくれたお客様がその商品に満足しているかどうか?という事であり、アンケートでは

『購入した商品/ブランド(〇〇)について、あなたはどの程度満足していますか?』

という設問の回答状況により、満足度合いを測るものです。

しかし、この顧客満足度をそのまま商品評価に使うのは少し問題があるのです。
これは実際に顧客満足度を聴取してみると分かるのですが、自分が購入したモノに対して満足かどうかを聞かれると、よっぽどの事が無い限り人間誰しも高く評価してしまう傾向があります。

自分の取った行動(=その商品を購入したという行動)を否定したくないという消費者心理が働くのですよね。

ですから、本当の意味でその商品を買って良かったと思っているのかどうか、顧客満足度だと本音を探ることが難しいのです。

また更に、『どの程度満足していますか?』という質問自体にも少し問題があり、『満足』という言葉の定義がちょっと曖昧なんですよね。

辞書によれば、満足とは『心が満ち足りた状態』の事を指しますが、『満ち足りてはいないけど不満がある訳でもない』状態を満足と解釈する人もいます。
どういう状態を満足というのかは人それぞれなんです。

しかし、NPSでは『知人・友人にどの程度勧めたいと思いますか?』という、具体的なアクションを取る可能性を聞いています。
従いまして、こちらの方が商品に対する回答者の本音を聞く事ができるのです。

 

NPSがマイナスってどういう事?

ご参考までに、以下のリンクが2015年にNTTコム オンラインマーケティングソリューションが実施した、各NPSベンチマーク調査の結果です。

※詳細はこちら

 

業界 NPS(業界平均)
銀行 -30.9
証券 -58.3
クレジットカード -44.5
自動車保険 -41.8
生命保険 -57.1
旅行予約サイト -32.0
コンビニエンスストア -52.7
ファストフード -45.7

 


これを見て『えっ!』と思われる方も多いと思います。
全ての業界で、NPSの数値はマイナスを示していますよね。

実はNPSはマイナスになることが往々にしてあります。
その理由は計算式にありまして、NPSは11段階評価のうち0~6にスコア付けした方を『批判者』として判別するからです。

これは色々な国でアンケート調査をやるとよくわかるのですが、日本人はこのようなスコアを付ける形の評価をやらせると真ん中の『どちらとも言えない』にチェックを入れる傾向が高い人種です。
NPSにおいても、11段階のちょうど中間である「6」を付ける方が多いのです。

しかしNPSの計算では「6」を付けた方は批判者として区別されます。
その為、日本でNPSを測定するとマイナスになる傾向が非常に高いのです。

ただ、マイナスといってうなだれる必要はありません。日本全体でマイナスになる傾向が高いだけの話ですから。

 

このNPSは、業績に強い相関を示していることも証明されています。

つまり推奨意向が高い人を増やしていけば、売上げの向上に繋がって行く可能性が高いという事です。

 

NPSが高いということは、その商品やサービスを推奨してくれる方が多いということになります。
言わばその商品のファンであり、その人はその商品やサービスを多く購入してくれ、長きにわたって良い顧客であり続けてくれることでしょう。
さらに、「この商品はこんなに使い勝手が良いんですよ!」とか、「コストパフォーマンスが抜群!」といった、ポジティブなクチコミを広めてくれるはずです。

 

日本では、まだ大手企業でしかNPSを導入していません。
ですが評価方法は至ってシンプルですし、今後中小企業や個人経営者レベルにも広く活用されていくはずです。

あなたも是非、NPSを聴取、活用してみてはいかがでしょうか?

 

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