最終更新日: 2025年3月2日 by 渡邉 俊

マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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こんにちは、マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
今回は『スクリーニング調査』について解説をしたいと思います。
アンケート調査を行う際、モニターパネルを使うと調査の幅がぐっと広がると以前の記事で書きましたが、それに加えてこの『スクリーニング調査』ができるようになると更に幅が広がります。
【おさらい】アンケートモニターパネルとは
“赤の他人”を調査対象にするシステム
アンケートモニターパネルとは“アンケート調査の協力者の集まり”のことを指します。
インターネット上で『アンケートモニター募集中!』などの広告を見たことがあるかもしれませんが、世の中の調査会社には数百~数千万人のアンケートモニターさんを保有している会社があります。
要するにこの会社に料金を支払えば、このアンケートモニターさんに対して回答を依頼できる訳です。
もちろん皆さんが『自社の顧客リストに掲載されている方に回答を依頼したい』、『自分のSNSやメーリングリストで配布したい』というのでしたら利用する必要はないです。しかし、例えば何かしらの”評価”をしてもらうアンケート調査の場合は『客観性』や『中立性』が強く求められます。
そのため自分のお客様や友人・知人ではなく、”第三者”に回答してもらった方が良いのです。
アンケートモニターパネルを使って調査をすると、回答してくれたモニターさんの性別や年齢、居住都道府県などの基本情報を取得することができます。
但し名前や住所、メールアドレスなど個人を特定できる情報は取得できません。そのためモニターさんからすれば安心して答えることができますし、アンケートに回答するとポイントがもらえるので、これを集めるとお金や商品に交換することができます。
その為、ちょっとしたアルバイトやお小遣い稼ぎに登録している人が多いのです。あなたの周りにも登録している人がいるのではないでしょうか。
『スクリーニング』とは回答者の条件設定
このように自分と全く関係ない第三者に回答してもらえるのがアンケートモニターパネルの最大のメリットですが、もう1つ重要な機能となるのが『スクリーニング』という機能です。
スクリーニング(screening)とは”ふるい分け”という意味であり、登録しているモニターの中からアンケートの配布対象者を条件設定するということになります。
例えば自分が作った商品アイデアを第三者の方々に評価して欲しい場合、評価者の条件は無く誰でもOKというのならばスクリーニングは必要ありません。
しかし女性用化粧品やバッグなどの商品アイデアを評価して欲しい場合、ターゲットとなる顧客は女性ですから評価も女性に限定した方が良いですよね。
また関西圏のみで展開しているスポーツジムの知名度を調査したい場合、関西圏以外に住んでいる方へアンケートを配布してもあまり意味がないですよね。その場合、回答者は関西地方在住者のみに絞って依頼する必要があります。
もちろん回答してくれるなら誰でもOKという調査もありますが、基本的にアンケートモニターパネルを使った調査では何かしらのスクリーニング条件を設定して行うことがほとんどです。
モニターパネルで可能な条件設定
具体的にどのような条件設定ができるのかは使用するモニターパネルによります。
例えばある調査会社が運営しているモニターパネルの場合、以下の9項目であれば自由にスクリーニング条件を設定できます。このような回答者個人の特徴となる項目を『基本属性』といいます。
もちろん、これらの項目を組み合わせて条件設定することも可能です。例えば『①男性』×『②年齢:40歳未満』とすれば40歳未満の男性のみに調査票を配布できますし、更に条件を追加して『①男性』×『②年齢:40歳未満』×『⑧世帯年収:500万円以上』という風にも設定可能です。
但し様々な条件をつけて厳しくし過ぎてしまうと希望回答数に届かなくなってしまうこともあります。これについては後ほど詳しく説明しますが、その条件での『出現率』というものを考えながら設定しなければいけません。
『スクリーニング調査(事前調査)』とは?
調査によって回答の対象にしたい人をふるい分けする
ただ時には、もっと細かい対象者条件でアンケート調査を行いたい場合もあるはずです。
例えば、以下はペットショップ事業を行っている会社で実際に行ったアンケートの対象者条件です。
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<対象者条件>
以下の3つの条件全てを満たす方:200名
首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)在住者
現在犬を飼っていないが将来は飼いたいと考えている
②について、今後1年以内に飼いたいと考えている
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このような条件でアンケート調査を行いたい場合、①についてはモニターパネルの基本属性で十分設定可能です。
問題は②と③で、パネルに登録している人がペットを飼っているか、今後1年以内に飼いたいと思っているかどうかは運営会社ですら把握していない情報のはずです。ただこのような時に是非おススメなのが、追加料金はかかってしまいますが『スクリーニング調査(事前調査)』の実施です。
スクリーニング調査(事前調査)とは、モニターの中から対象者条件に合致した人を探す為に事前に行う短いアンケート調査を指します。
先ほどのペットショップの例でいうと、モニターパネル登録者の中から①~③の全ての条件に該当する方を事前アンケートで抽出し、次にその該当者に対して回答をお願いしたいアンケート(本調査)を配布するという2段階の調査を行う訳です。
まずアンケートを首都圏在住のパネル登録者のみに配布します。ここではとりあえず10,000名に配布することにしましょう。
この人たちに対して、まず『質問1:あなたは現在犬を飼っていますか?』という質問をします。
そしてこのうち『現在は飼っていないが、将来は飼ってみたい』の選択肢を選んだ方のみ、次の質問2に進むよう設定します。それ以外の選択肢を選んだ方は残念ながらここで回答終了です。
そして次に、質問2へと進んだ方に対して『実際にいつ頃から犬を飼ってみたいと思うか?』と聴きます。
これに対する回答として『1年以内』と回答した方が、先ほどの対象者条件①~③を全て満たしている方という事になりますよね。従いまして、この人たちを本調査のアンケート画面へと誘導して回答協力依頼をかければ良い訳です。
このような設問設定は、Webアンケートの作成画面で簡単にできます。またサイトによっては画面作成やスクリーニングの条件設定をヘルプしてくれますのでご安心ください。
スクリーニング調査は『出現率』に要注意!!
このように『スクリーニング調査』と『本調査』の2段階でアンケートを行えば、対象者条件にあった人に回答してもらうことが可能です。
ただこの時に注意しなければならないは、先ほども少し触れた通り、“スクリーニング調査によってその条件に合致した人がどのくらい出現するか?”という『出現率』です。
この調査では条件に合致した方:200名に本調査の回答してもらいたいと考えており、そのスクリーニング調査を10,000名に配布しています。ということは、この条件による対象者の出現率は2%以上でないと200名集まらない訳です。
もちろん”都内に犬を飼いたがっている人がどのくらい存在しているか?”というデータを事前に把握しているのであれば、それを参考にして出現率を予測しスクリーニング調査の配布数を決めればOKです。
しかしなかなかそんなデータはないので調査担当者の”カン”に頼ることも時にはあります。
ただ方法としては、まずは小規模(例えば1,000名程度)でスクリーニングの”予備”調査を行って出現率を計算し、その結果を参考にして本当のスクリーニング調査を行うという方法があります。
もしその予備調査で出現率が2%以上あれば10,000人のスクリーニング調査で足りますが、逆に出現率が1%しかないのであれば、少なくとも20,000人に配布する必要がある訳です。
またこのスクリーニング調査実施にもパネル利用料を支払う必要があり、配布数が多いほど料金は高くなります。
その為どんな人を対象にするか、どこまで条件を絞るべきかは調査の内容と予算を考慮する必要があるのです。