【アンケート調査あるある】世の中のアンケートに蔓延る『ダメな質問』


マーケティングリサーチャーの渡邉 俊です。

世の中には様々なところでアンケート調査が行われています。
渋谷や池袋などを歩いていると『アンケートに答えてください!』と声をかけられる事が多々あり、私も暇だったらちょっと付き合ったりすることもあります。

これらのアンケートがデータ収集の為に行われているのかどうかは定かではありません。
現に先日、ウォーターサーバーに関するアンケートに答えたら、後日電話で「ウォーターサーバーいかがですか?」と営業されました。要するに顧客リストを作る為のアンケートだったのです。

この類のアンケートは回答した方の連絡先を確保することが最重要事項で、中身の質問はそれほど重要ではなく、またデータの分析などはほとんどなされないのではと思います。

しかし、もしデータ収集が目的だったのだとしたら問題アリアリです。
なぜなら、アンケートに書かれていた質問を見ましたが、これだとデータとして使えないからです。

調査によるデータ収集は正しいやり方で収集されないと無意味なのもになってしまい、データとして使えません。

しかしこれまでに何度か私のブログにも書いておりますが、世の中のほとんどのアンケート調査は正しいやり方で実施されておらず、また実施している方本人がそれを認識していません。
マーケティング調査のプロが見れば『なんだこりゃ?』と思ってしまうようなアンケートがそこら中にある訳です。

多くの方が、アンケートは誰でも手軽に行えるものと思っているかもしれませんが、そんなことはありません。

正しくない調査とはどんなものか?
色々と例はあるのですが、今回は『質問の仕方が悪くて正しいデータが収集できないアンケート』を挙げて説明したいと思います。

 

やってはいけないアンケート質問

知らぬ間に回答者を誘導している

 

『今後地球の温暖化が更に進むと予測されていますが、あなたは自身の家の冷房設備に満足していますか?5つの選択肢の中から、あなたのお気持ちに一番近いものを1つお選びください。』

仕事上私も色々なアンケート調査の添削を行いますが、一番よくある「やってはいけないこと」です。
この質問の仕方だと、おそらく『4.少し不満』、『5.大変不満』にチェックする方が多くなるでしょう。

要するにこの質問は『誘導質問』になっています。

自分の家の冷房設備にどれだけ満足しているか?をシンプルに聞けばよいのに、最初の『今後地球の温暖化が更に進むと予測されていますが・・・』という文章があることによって「確かに今後、今のエアコンだと暑さに耐えられなくなるかな・・・」と考える方が増え、結果として4と5の回答者数が増えるというロジックです。

従いまして、純粋に自分の家に備わっている冷房設備の満足度を聴くのであればシンプルに、
「あなたは自身の家の冷房設備に満足していますか?5つの選択肢の中から、あなたのお気持ちに一番近いものを1つお選びください。」
だけを書けばよいのです。

このように、誘導質問によって回答が歪んでしまうことを『誘導バイアス』と呼びます。

あまりバイアス(Bias)という言葉は聞きなれないという方もいらっしゃるかもしれませんが、簡単にいうと、
『バイアス(Bias)=何らかの影響により、回答に偏りを生じさせてしまうこと』
です。
是非覚えて下さいね。

※ちなみに『バイアス』については以下のブログで特集しています。
ご興味ある方は是非ご覧ください。

 

 

1つの質問に2つの論点を含んでいる

 

『あなたは、「原子力発電はエネルギー政策上重要なので、稼働するべきだ」という意見に賛成ですか。

これも代表的な『アンケート調査あるある』です。
なぜならば、これだと自分の考えを回答できない方が出てきてしまうのですよね。

というのはこの質問について、おそらく世間の方々の意見は4種類くらいに分かれるのではと思います。

① 原子力発電はエネルギー政策上重要だから、稼働すべき
② 原子力発電はエネルギー政策上重要だと思うが、稼働すべきではない
③ 原子力発電はエネルギー政策上さほど重要でもないが、稼働はすべきだ
④ 原子力発電はエネルギー政策上さほど重要でもないので、稼働はすべきでない

の4つです。

ですが、上記の質問の仕方だと、②と③の意見を持っている方は質問に答えることができません。
これは、『原子力発電を稼働するべき』の理由が『エネルギー政策上重要だから』以外にないと、質問者側が勝手に思ってしまっているからです。

実際は、
「原子力発電はエネルギー政策上重要だが、万一事故が起きたら取り返しのつかないことになるので稼働すべきでない」
「原子力発電はエネルギー政策上さほど重要でもないが、そこで働いている人が失業してしまうので稼働はすべきだ」
という意見も十分想定されます。

要するに「原子力発電はエネルギー政策上重要か否か」と「原子力発電を稼働すべきか否か」という2つの論点が1つの質問に入り込んでいて回答者を混乱させてしまっています。
このように1つの質問の中に複数の論点が含まれてしまっている質問を「ダブルバレル(double-barreled)」と呼び、調査ではやってはいけないのです。

こういった場合、
『あなたは原子力発電を稼働すべきと思いますか?』
『上記のお答えの理由をお聞かせください』

という具合に、設問を2つに分ける事がベストです。

 

回答者に『仮の世界』を想定させている

『もし上司から海外赴任を言い渡されたら、あなたはどうしますか?』

基本的にマーケティング調査の中で「もし~だったとしたら」という仮定の質問は避けた方が良いです。
なぜならば、上記の質問をされたとしても海外赴任をした経験のない方にとっては、あくまで海外赴任を言い渡されたという「仮の世界」を想定して答えるしかなく、実際に言い渡されたらどのような行動を起こすのかなんてわかりません。
従いまして、「もし~だったとしたら」という質問でデータ収集しても意味がないのですね。

これ以外にもまだまだ『やってはいけない』アンケートの質問事例はたくさんあります。
こちらのブログに別途追加していきたいと思いますが、Lactivatorが実施している無料メール講座でもその辺りを詳しく解説しています。
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【一番悪いこと】質問文で調査結果は操作できる

いかがでしょうか?
これ以外にもまだまだあるのですが、上記は調査初心者の方がかなり頻繁にやってしまう悪い質問事例ですので、是非参考になればと思います。

しかし、上記のような悪い質問をうっかりやってしまったのであればまだ良いです。
実はこれを知ったうえで上記のような質問を敢えて行う悪い調査担当者も、残念ながら存在します。

例えば、先日とある英会話学校のアンケートに、
『現在たくさんの会社が社員の英語力を重視しています。あなたは英語の無料レッスンについてどの程度興味がありますか?』
という質問がありました。

先ほど申し上げたのでお分かりの通り、この質問には『誘導バイアス』が働いています。
ピュアに英語の無料レッスンに関する興味を聴きたいのであれば、冒頭の『現在たくさんの会社が社員の英語力を重視しています。』という一文は必要ありません。

しかし逆に、もしこの後に質問者が英語の無料レッスンを回答者に勧め、最終的に本契約に持っていきたいのであれば上記のようにバイアスのかかった質問はとても意味があります。
またこのアンケートを集計すれば、おそらく『興味がある』という方向に回答が偏ると思いますが、調査担当者の方がこの結果を会社の方に報告すると間違った経営判断がなされてしまう可能性もあります。

非常に残念なことではありますが、調査結果を故意にコントロールするのは結構簡単にできてしまうのです。

ここまで来るとあとは調査担当者のモラルの問題になってきますが、正しくデータを収集するのであれば上記のような質問文による故意の回答操作などせず、あくまで中立を保って調査を行っていただきたいものです。

 

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