マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
この仕事をさせていただいて長い年月が経ち、これまでに様々な方が作ったアンケートの添削、指導を行ってまいりました。
その時に私が指摘、修正する事として一番多いのが『日本語の使い方』です。
質問文そのものが何を言っているかわからない、または回答者が違ったニュアンスで受け取ってしまう・・・というものが多いのです。
これを読んでいるほとんどの方が日本人だと思いますので、おそらく毎日日本語を使っているはずです。
ですが、いざ文章を書いてみると、『あれ?何だかこの文章おかしいな・・・』と感じることはありませんか?
実は日本語には、いくら文法的に正しくても『相手に伝わりにくい文章』があります。
その為、アンケートの質問文は『相手に伝わりやすい文章』で書かないと、調査する側が意図した通りに回答してくれない事が多いのです。
今回は、アンケート調査に必要な日本語に関する知識をお話ししたいと思います。
日本語は、文章が少し違うだけで意味合いが大きく変わる
言わずもがなですが、そもそも日本語と言うのは難しいです。
これは世界的にも言われていますよね。
日本語は言い方1つで意味合いが大きく変わってしまいます。
例えば以下の文章。
①私はチョコレートが好きです。仕事中に食べられるし、疲れを癒してくれます。
②私は仕事中に食べられて、疲れを癒してくれるチョコレートが好きです。
これは一見同じような事を言っていますが、受け取るニュアンスが全く異なります。
①はチョコ全般が好きだと言っているのに対し、②は非常に限定的なチョコが好きという事になります。
従いまして、いくら日本語を毎日使っている日本人でも、書き方ひとつで相手に間違った印象を与えてしまう訳です。
回答者は質問文を『流し読み』する。
更に考えを改めてほしいのは、回答者は質問文をきちんと読まないという事です。
皆さんがアンケートに答える時もそうだと思いますが、ほとんどの方が『流し読み』です。
基本的にどんな人にとってもアンケートというものは『面倒くさい』のですから、一字一句丁寧に読んでくれるという事はまずありません。
ですから、回答者に正確に答えてもらう為には、流し読みでもきちんと理解してもらえるように質問文を書くことが大事です。
回答者のストレスを軽減する質問文の書き方
その為、私が設問を作る時に気を付けていることは以下です。
質問文は2行以内
流し読みされても内容をきちんと理解してもらう為には、質問文を短くする必要があります。
短ければ短いほどよいです。
これはあくまで自分の経験ですが、質問文は2行以内におさめるのがよいです。
3行以上あると、回答者が『長い!』と感じてしまい、質問をきちんと理解しないまま選択肢に目を通してしまいます。
最悪の場合、Webアンケートで3行以上ある質問がいくつも続くと、読むのが面倒になってドロップ(×ボタンを押す)されてしまう可能性大です。
面倒くさいか否かは「文字数」よりも「行数」で判断する事が多いというのが私の感触です。
専門用語は使わない
中学生でもきちんと理解できるように質問文を書いてください。
自分では意識していないのに、自然と専門用語を使ってしまう方が多いです。
私はIT業界の方が作成するアンケートをよく見かけるのですが、そういう方のアンケートはIT用語が多すぎて何を言っているのかよくわかりません(笑)
これは『ITアンケートあるある』です。
もちろん、ある程度その業界の知識を持っている方に回答してもらうのであれば大丈夫ですが、一応注釈を入れるなど、回答者への気遣いが必要です。
大事なところは強調する
回答者に確実に伝えたい部分は強調しましょう。
太字、赤字、下線、マーカーなど強調の仕方は何でもよいですが、本当に強調したいところはこの4つを全て使った方がよいです。
例えば、私の場合、
『以下の選択肢の中からあなたに当てはまるものを全てお選びください。』
という風に、選択肢の中から選ぶ数は”全て”なのか”1つ“なのかは必ず太字、赤字、下線、黄色でマーキングにします。
ここを間違ってもらいたくないからです。
同じ言い回しを使い続ける
“以下の中からあなたのお気持ちに当てはまるものを1つお選びください”
“以下の中からあなたのお気持ちに当てはまるものを全てお選びください”
という言葉はアンケートを作る際に多用します。
しかし同じアンケートの中で、
“あなたのお気持ちに当てはまるものを1つお選びください。”
“あなたのお気持ちと一致するものを1つお選びください。”
“あなたに合っているものを1つだけ選択してください。”
など、同じことなのに質問によって言い回しが違うと、回答者としては非常に煩わしいのです。
言い回しが統一できるものは全て揃えましょう。
回答者に誤解を与えない日本語文法の知識
主語は省略しない。
質問文は『文章』ですので、必ず文章の中には主語と述語がセットで存在しないといけません。
実はこれが抜けてしまうと相手に間違った理解を与えてしまう可能性があるのです。
例えば以下の質問。
〇〇市にお住まいの方に伺います。
〇〇市について、以下の事柄はどの程度当てはまりますか。1) 治安が良い町である。
2) 安心して子育てができる。
3) 行政サービスがしっかりしている。
4) 交通網が整備されている。
行政のアンケートによくある質問ですが、この書き方だと回答者の受け取り方は2つに分かれてしまいます。
・「自分が〇〇市についてどう思っているか」を答えるのか?
・「一般的に、市民が〇〇市をどう思っているか」を答えるのか?
あくまでアンケートは回答者の意見を聞くツールなので、回答者には①と受け止めてほしいのですが、中には②として考えてしまう人も少なからずいます。
その為、
あなたは以下についてどの程度当てはまると思いますか。
という風に、質問文には必ず『あなたは・・・』という主語を入れた方が良いです。
「が」と「は」を使い分ける。
上記の通り、通常アンケートは「あなた」について聞くものですが、それに続く助詞によってニュアンスは大きく異なります。
①あなたはこの商品についてどのようなイメージをお持ちですか。
②この商品について、あなたが持っているイメージを教えてください。
同じ事を聴いている質問ですが、②の方が『他の人の意見はどうでもいいからあなたの意見を教えて!』というニュアンスをより多く含んでいるように感じませんか?
このように、強調するかしないかで助詞を使い分けて下さい。
実際、上記のようなイメージに関する質問をすると、自分が持つイメージではなく世間一般の人がその商品に対して抱いているイメージを答えてしまう方が多くいらっしゃるのです。
修飾語と被修飾語を離さない。
ライフスタイルを聴く定量調査の中で見かけた選択肢です。
できるだけ若いうちに海外に出て、外国語を学びたい。
特におかしくありませんが、少し語順を変えて
若いうちに海外に出て、できるだけ外国語を学びたい。
となると意味合いが違ってきます。
英語を学ぶ為に頻繁に海外に行きたいのか、英語だけでなく中国語やスペイン語なども学びたいのか・・・という事です。
意図を的確に伝える為、修飾語と被修飾語の位置は近くに置いた方がよいです。
このコラムは随時更新します!
以上がアンケート調査に必要な日本語の知識です。
しかし、質問文の書き方については他にも気を付けなければいけない事がたくさんあります。
日本語って本当に難しいですね。
なので、今後日本語の使い方について気付いた事があったら、このコラムを随時更新していこうと思います。
アンケートを作る際、是非このページに来て参考にして下さい。