マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
ここ最近(?)『覆面調査(ミステリーショッピング)』という言葉をメディアでも良く聞くようになりました。
ただ、何かしらの店舗を経営している方にとっては特に目新しい言葉ではないはずです。
最近では覆面調査の代行を専門で行う会社も出てきましたよね。
私も自動車ディーラーや居酒屋チェーンなどからの覆面調査依頼がよくありまして、時々実施しています。
この覆面調査という手法は経営者の方が自分で調査をやるというのはちょっと難しいです。
ただし、自分で調査員のアルバイトなどを雇ったりすれば安価に実施する事は十分可能です。
そこで今日は、店舗経営者の方々が覆面調査を自前で実施する際のポイントを徹底的に説明したいと思います。
覆面調査とは?
調査員が一般人の『覆面』をかぶって行う調査
覆面調査は英語でMystery Shopping(ミステリーショッピング)と言います。
要するに調査員が一般のお客様になりきって店舗を訪れ、店員の接客対応などを調査する事です。
もちろん覆面調査員である事を店員さんが察しないよう終始一般のお客様のフリをします。
調査員が一般人の『覆面』をかぶって行うから覆面調査と呼ばれている訳ですね。
(もちろん、本当にかぶる訳ではないですけど)
そして、調査員が店舗内でチェックしていたことを結果としてまとめ、自分が経営する店舗の接客サービスを改善為のデータとします。
対面販売を行なっている店舗であれば、どの業界でも頻繁に行われている調査です。
CS(顧客満足度調査)とは得られる情報が違う
ここまで聞くと、『CS(顧客満足度)調査と何が違うの?』という疑問を持つ方もいると思います。
確かに、お客様に対してアンケートで満足度を調査している店舗も多いですよね。
ただ、CS調査と覆面調査では『どんな情報を収集したいのか?』という点で異なります。
CS調査というのはお客様に回答いただいたアンケートを集計・分析する事により、満足度の測定と不満要因を特定する事が目的です。
一方、覆面調査というのは『店頭のサービス品質状況を確認』する事が主な目的です。
CS向上に向けて従業員が決められたことを行っているか否かをチェックし、その結果を店舗にフィードバックすることによって従業員の人材育成やモチベーション向上を図ります。
従いまして、覆面調査の結果から店舗のサービス管理の課題を洗い出して対策を実行し、CS調査でその効果を検証するというのが理想です。
覆面調査のやり方は2通り
従いまして、基本的に覆面調査は経営者の方が自分でできる調査ではありません。
おそらく従業員の方々は経営者の顔をご存知でしょうからね(笑)
その為、調査を誰かにお願いして店舗に行ってもらう必要があります。
やり方としては、
● 調査会社にお願いして覆面調査を代行してもらう。
●自分で調査票を作り、調査員のアルバイトを雇う。
の2つです。
調査したい店舗がたくさんあるのであれば、前者のように調査会社に頼んだ方がよいです。
彼らはプロですので、調査の設計から報告まできちんとした仕事をしてくれるはずです。
但し4~5店舗程度であれば後者のようにアルバイトを雇ってもできますし、その方が安価に実施可能です。
ここからは後者の『自分で調査票を作り、調査員のアルバイトを雇う』を選んだ時に注意すべきポイントをご説明します。
※因みにマーケティング調査について一般の方がおちいりやすい8つの誤解を以下の無料メール講座で紹介しています。こちらも併せてご購読ください。
自分で『覆面調査』を企画・実施する時のポイント
覆面調査の不定期実施を従業員に知らせておく
まず必要なのは、覆面調査を不定期に行うことを各店舗の従業員に知らせておくことです。
もちろん〇月〇日に調査員が入るなどといった詳しい情報を伝える必要はありません(笑)
あくまでCS向上の為に不定期に行い、必要に応じて結果をフィードバックすることを従業員にも理解してもらうのが重要だという事です。
これをやっていなかった為に、いざ結果をフィードバックすると、
『こんな調査やるなんて一言も言ってなかったじゃないですか!?』
『事前に何も言わずに調査するなんて我々従業員を侮辱している!』
と喧嘩になってしまうケースもあります。
そうなってしまうと最悪の場合、従業員のモチベーションダウンにも繋がってしまいます。
店舗の従業員だってお客様の満足を最優先で毎日仕事をしている訳ですから、事前に覆面調査を行う意義を話せばきちんと分かってくれるはずです。
その説明は是非怠らないようにしましょう。
調査員を雇う時の人材条件とは?
先程も書いた通り覆面調査は経営者の方がご自身で行うのは難しく、調査員を確保する必要があります。
これは1日限定の短期アルバイトや副業として人材募集をかけてもよいですが、最近ではクラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングサイトで募集をかけることもできます。
その店舗に一般客として訪れていただければよいので、基本的には誰でもできます。
・・・と言いたいところなのですが、これは列記とした『調査』ですので、できれば適した人材に依頼した方がよいです。
適した人材というのは、
『対象となる商品やサービスのターゲット客である』
という事です。
極端な話、女性をターゲットにしたネイルサロンに男性の調査員を送っても調査できませんよね。
またペットショップの覆面調査にペットを飼った経験のない人を調査員として採用しても、ターゲットとは異なる目線で評価してしまうので結果として使う事ができません。
『ペットを飼っている人の気持ちになって評価して下さい!』と言っても、人は自分が経験したことがないものをあたかも経験したかのように振る舞うことはできません。
ご自身の商品を正当に評価してくれる人を調査員として選ぶ必要があります。
調査員の教育が必要
ターゲット客である人に調査員を依頼したとしても、以下のような項目の事前教育が必要です。
①調査員である事が店舗にバレないように振る舞うこと
②第三者目線での評価を心掛けること
③調査を行う背景と、何を調査したいのかを明確に伝えること
1つ1つ説明します。
①調査員である事が店舗にバレないように振る舞うこと
覆面調査のメリットは、店舗の『素』の状態が見られる事です。
しかし『あの人、もしかしたら調査員じゃない?』と店舗側に悟られてしまったら、ベテランの従業員を配置する、いつも以上に丁寧なサービスを行うなどといった対策を講じてしまいます。
その状態を調査しても意味がないですよね(笑)
だからこそ、調査員には普通の客として行動していただく事が必要です。
②第三者目線での評価を心掛けること
調査目的を達成する為、調査員の方に店内でとって欲しい行動というものがあるはずです。
これについては事前に調査員に伝えておく必要があります。
レストランや飲食店だったら、
『お店に入ったら、〇〇(メニュー)を注文して下さい』
営業マンと会話をするような店舗であれば、競合となる商品名を出して、
『△△(競合)と比較するとこの商品は何が優れているのですか?と営業マンに質問して下さい』
などの行動ですね。
但し、それ以外については調査員である事を意識せず、第三者目線で評価する事を事前に説明させておいた方がよいです。
ひと昔前の昼ドラみたいに姑さんが棚の上を指でサッとやって、
『〇〇(嫁)さん、掃除が行き届いてませんよ!』
みたいことはやらなくてよいという事です(笑)
細かい事を色々観察するのではなく、お客さんが普通に来店し、お店の中で普通に過ごした時に何を思うか?を感じる事が大切です。
③調査票は事前に目を通させること
上記の通り、調査員には第三者目線で普通のお客さんのように振る舞ってもらわなければなりません。
その為には調査員1人1人が事前に、調査票に目を通すことが必須です。
(調査票の作り方は次の章で書きます。)
店舗の中で調査票を見ながら評価していたら覆面調査であることがバレてしまいますし、そもそも調査員の方には調査票を意識するのではなく、店員のサービスを五感を使って評価したもらいたいのです。
調査票は依頼者が評価してもらいたいポイントを基に構成されています。
しかし、依頼者がまだ気づいてない問題点というのもきっとあるはずですし、それに気づくのは第三者目線で店舗を見ているお客様です。
調査員にそれを気づいてもらう為、調査票は事前に頭に入れておいた状態で店舗に入ってもらうことをお勧めします。
調査票作成
調査項目は無理のない量で
アンケート調査やインタビューなどと同様、覆面調査でも『何を調査するのか』を明確する必要があります。
しかし調査項目が多すぎると調査員の負荷も高くなりますし、もし外部の会社に委託するのであれば費用も高くなってしまいます。
お店への滞在時間なども考慮し、無理のない量の調査項目を設定する事が重要です。
僕の経験で書くと、そもそも調査項目の多い調査票にはCS向上に結び付かない項目、ただ経営者が知りたいだけの項目が多い傾向にあります。
覆面調査はCS向上が大目的のはずですから、そこに結び付かない項目は優先順位をグッと下げましょう。
客観的かつ詳細な情報を得られるような項目設計
例えば、
『お会計を済ませた後、店員の挨拶はできていたか』
という評価項目に対して〇✖で答えさせる調査票を良く見かけますが、これだと対策に繋げる事ができません。
できたかできていなかったかは調査員の主観で評価されてしまい、かつより詳細な情報を得る事ができないからです。
要するに、
●挨拶があっても声が小さい
●挨拶はなかったが会釈はあった
などという微妙な状況では調査員の主観で〇✖が決まってしまいます。
『お会計を済ませた後、店員の挨拶はできていたか』
・大きな声で挨拶があった
・挨拶はあったが声が聴きとりにくかった
・挨拶はなかったが会釈はあった
・挨拶も会釈もなかった
という感じで想定される状況を選択肢にすれば、調査員が調査しやすく、かつより詳細な情報を得ることができます。
また、『注文からお料理が出てくるまでの時間は適切でしたか?』という評価も飲食店の覆面調査ではよく見かけますが、これも調査員の評価は主観的になってしまいます。
10分で料理が出てきたとしても、長いと感じる人もいれば短いと感じる人もいますからね。
この場合はスマホのストップウォッチアプリなどを使ってその時間を計測する事をおススメします。
そうであれば調査員の主観ではなく、数字で評価をすることが可能です。
●なるべく詳しく選択肢を設定
●数字でアウトプットできるところは数字で評価
これがポイントです。
コメントによる回答欄は1つだけにする
もちろん、調査員にコメントを書かせて評価するという方法もあります。
この方法だと、調査を行った時の状況が詳しくわかるというのがメリットです。
ただ調査員のが感じたことを書くので客観的な評価には不向きです。
従いまして、基本的には上記の通り、数字で評価をするのが覆面調査の基本だと思います。
とはいえ、調査員のコメントによって新しい気づきが生まれる可能性がある事も確かです。
その為、調査票の一番最後に『今回の評価項目以外で何か気になったことがありましたら自由にお書きください』といった項目を設けるのは有りだと思います。
覆面調査は『心構え』も大事!
最後に、覆面調査を行うには『心構え』が大事です。
この心構えができているかどうかで、覆面調査の結果を効果的に活用できるかどうかが決まります。
「あら探し」に徹しない
覆面調査をやっていると、『何か店舗の問題点を発見して改善に結び付けたい!』という気持ちが強くなります
その気持ち自体は大事だと思いますが、そうなるとどうしても問題点の「あら探し」になってしまうのですよね。
そうならない為に、先ほど書いた通り調査項目やその評価基準を調査員と共有しておく必要がある訳です。
特に問題点がなく、『非常に好感の持てる接客だった!』という報告も十分ありだと思います。
「たまたま」を鵜呑みにしない
覆面調査の結果は最終的に各店舗にフィードバックする訳ですが、ほとんどの場合、従業員の方は言い訳をします。
『その時はたまたま忙しくてきちんとした接客ができなくて・・・』
『ベテランがちょうど休んでいた日で新人しか店舗にいなくて・・・』
なんていうのは一番よくある言い訳です。
もちろん店舗側としては「たまたま」だったとしても、顧客側にとってはその1回で全ての印象が決まります。
従いまして「たまたま」とか、「ちょうどその時は・・・」というのは言い訳になりません。
とはいえ、悪い結果が出てくると言い訳したくなるのもよく分かります。
ここは従業員を攻めるのではなく、まずは言い訳を聞いた上で一緒に改善に向けて努力する姿勢を見せるのが大事と思います。
覆面調査の頻度はその都度決める
プロ野球の監督をしていた野村克也さんの名言に、
『勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。』
という言葉があります。
理由もなく勝ってしまう事はあるが、負ける時には必ず何か理由があるという事ですね。
覆面調査も一緒です。
先程書いた通り「たまたま悪い結果だった」という事はまずありませんが、「たまたま良い結果だった」という事はあります。
従いまして、覆面調査は1度結果が良かったからと言って慢心するのではなく、時間を置いて何度か実施する事をおススメします。
そして、良い結果が連続している店舗は調査の頻度を下げ、逆に悪い結果の店舗は上げるといった形で運用していくべきです。
また、ベテランが辞めてしまった、新人を配置した、新サービスを導入した・・・など店舗のサービスレベルが変化しそうな時に調査頻度を見直すことも必要と思います。
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