【基礎編】回答者の本音をアバくアンケート調査の『選択肢』の作り方


マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。

今日はアンケート調査における『選択肢』の作り方ついてお話ししたいと思います。
これは、アンケートを行う上で非常に重要なことなので是非最後まで読んでください。

以前お話した通り、アンケートやインタビューなどの手法でマーケティングリサーチを行う際に重要なのは、

回答者の『本音』を聞ける様に調査設計されているか?

です。
回答者の嘘やお世辞などの意見なんて、いくら集めても意味がないですからね。

そしてアンケート調査でリサーチを行う際、調査設計上大切なことの1つが

『本音を探る選択肢を作る』

ことなのです。

私自身、日頃色々なアンケートの添削を行っていますが、この『選択肢の設定』という作業を甘く見ている方が結構たくさんいらっしゃるのですよね。

ここがきちんとできてないと、出てくる調査結果そのものが信用できなくなってしまいます。
今回はその選択肢の作り方の『基礎編』を説明しますので、是非最後までよく読んで下さいね。

※ちなみに『応用編』はこちらです!併せてお読みください。

 

本音を探る選択肢を作るポイントはたった1つ

アンケートで選択肢を作る時、気を付けないといけないポイントはたった1つです。

それは、

『選択肢をMECEに作る。』

これだけです。

このポイントさえしっかりと守っていればOKです。
ただ逆にこのポイントができていなければ、そのアンケートの調査結果は全く使えないものになってしまいます。

『MECEな選択肢』というのはそれくらい超大事なことなのです。

MECEとは何か?

さて、そもそも『MECE』って何?と思う方もいらっしゃると思います。
まずここから説明しましょう。

『MECE』とは英語の略語でして、正しくは、

Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive

の略です。

・・・英語が苦手!という方にとっては訳わからないですよね(笑)
英語がそこそこ得意な方にとってもちょっと難しいかもしれません。

日本語に訳すと、

『漏れなくダブりなく』

という事になります。

要するに『MECEに選択肢を作る』というのは日本語で言えば、

『漏れなくダブりなく選択肢を作る』

という事です。

選択肢が「漏れて」いる例

例えば、以下は以前ある航空会社が東京在住者を対象に実施していたアンケート調査の事例です。

前の質問で『昨年大阪方面に旅行をした』と答えた方に伺います。
旅行をされた際、東京から大阪までどの交通手段を利用されましたか。当てはまるものをお選びください。

1. 新幹線
2. 飛行機
3. 自家用車

どうでしょう?この質問を見て何か違和感ありませんか?

この質問、実施した航空会社側の意図としては、都内から関西に行く旅行者は新幹線、飛行機、自動車のうち
どの手段を使う場合が多いのかを知りたかったそうです。

しかし当然のことながら、東京から大阪に行く為の交通手段はこの3つだけではありませんよね。

他にも夜行電車や夜行バス、レンタカーなどが思いつきますし、少数だとは思いますが好きな人ならバイクや自転車・・・なんて方もいらっしゃるでしょう。

従いまして、選択肢が上記3つだけしかないということは、夜行バスやレンタカーなどの交通手段で大阪まで行った方が正確に答えられないのです。

このような状態が『選択肢が漏れている』という事になります。

 

選択肢が「ダブって」いる例

では次に、以下は以前ある住宅メーカーが実施していたアンケートの一部です。

前問で『戸建てを購入したい』と答えた方に伺います。
実際にいつ頃購入する事をお考えですか。

  1. 1年以内
  2. 1~2年後
  3. 2~3年後
  4. 3年以上あと

いかがでしょうか?
回答者の気持ちになって考えていただきたいのですが、もしあなたがこの質問に答えなければいけないとしたらどう感じますか?

このような状態が『選択肢がダブっている』という事になります。
例えば2年後に買いたいと思っている人は2と3の両方とも選択することもできますし、3年後と思っている人は3と4のどちらも選べてしまいます。

従いまして、『2年後に買いたい!』と思っている人は2と選ぶ人と3と選ぶ人に分散してしまうので集計した際に正確なデータが得られないのです。

ちなみに上記の例には、『まだ時期を考えていない』という選択肢が漏れています。
当然、「戸建てを購入したいけど時期は決めていない」という方もいるはずで、そういう方の為の選択肢がないのです。
従いまして、この設問は『漏れもあるしダブりもある』という事になります。

 

MECEな選択肢を作って初めて回答者の本音が聞ける

このように、選択肢がMECEな状態になっていないと回答者の本音は絶対に聞けません。

選択肢に「漏れ」があると、回答者は自分の思いや状況をきちんと答える事ができません。
また、「ダブり」があると回答者はどちらを選択してよいかわからなくなり、回答が分散してしまうからです。

従いまして、『MECE』という言葉を是非意識して選択肢を作ってください。
イメージで言うと、以下の①のような状態です。

 

 

A、B、Cという選択肢があったら、それで四角の中をスキマ(漏れ)なくダブりなく埋めるというイメージです。

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これはMECEな選択肢ですか?

それではここで、MECEという状態をもう少し理解してもらいたいので3つほど問題を出しましょう。
是非ちょっと考えてみて下さい。

 

問題1 この選択肢はMECEですか?

あなたの性別を教えて下さい。
1. 男性
2. 女性

性別を聴取する際にこの質問は絶対必要ですよね。
結論として、この選択肢はMECEです。
LGBTの方々ももちろんいらっしゃいますが、性別は必ずこの2種類のどちらかになるはずなので特に問題はないでしょう。

【答え】MECEである。

 

問題2 この選択肢はMECEですか?

あなたの社内での職位を教えて下さい。
1. 新入社員
2. 一般社員
3. 主任/係長層
4. 課長層
5. 部長層
6. 役員層

これはMECEではありませんよね。

一番問題なのは、『新入社員』、『一般社員』という2つの選択肢です。
通常、新入社員というのは一般社員の一部なのでこの2つがダブっているのです。

また、もしこの会社に派遣社員やアルバイト/パートがいるのであればその選択肢もありません。
その場合は「漏れ」が発生していることになります。

【答え】MECEでない。

 

問題3 この選択肢はMECEですか?

あなたはこの夏休みにどちらに旅行に行きましたか。
1. 日本国内
2. アメリカ本土/ハワイ方面
3. ヨーロッパ方面
4. 中国/アジア方面
5. オーストラリア/オセアニア方面

これは漏れもダブりもあるツッコミどころ満載の事例です。
実は過去にある旅行代理店のアンケートにあった質問です。
どこがダメかというと、

  • アフリカに行った人の為の選択肢がない ⇒漏れ
  • どこにも旅行していない人の為の選択肢がない ⇒漏れ
  • 日本はアジアの一部なので、1と4がダブっている ⇒ダブり
  • そもそも”方面”という言葉があいまいで回答しにくい。
    例えば、
    グアムやサイパンはどれに該当するのか?
    トルコはアジアとヨーロッパに跨っているけど3と4のどっち?
    など。

という風に挙げたらキリがありません。

【答え】MECEでない。

 

MECEかどうか?をチェックする癖をつける

いかがでしょうか?
MECEという概念を理解していただけたでしょうか?

慣れてしまえばそんなに難しい事ではありません。
重要なのは、アンケートを作り終わった後にそれぞれの設問の選択肢がMECEかどうかをチェックするという事です。

回答者の立場で言うと、自分に当てはまる選択肢がないことは結構なストレスなのです。

その為、それだけで回答者のモチベーションを下げる要因にもなってしまうので是非気を付けてくださいね。

 

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