顧客満足度(CS)調査で改善点を”確実”に洗い出す方法

 

こんにちは。
マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。

今日は、『顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)調査』についてお話します。
何か商品やサービスを売っている方にとって『自分の商品を、お客さんは買った後にどう思っているのか?』というのは是非知りたいところですよね。

その為、アンケートなどで取った顧客満足度を経営指標にしている会社も多いと思います。

ただ、満足度を取っただけではあまり意味がありません。
お客様は不満を感じているのか、もし不満を感じているならばどんな所に対策を打てばよいかなどの情報もセットで取る必要があります。

そこで今回は、顧客満足度調査から経営課題をきちんと洗い出す調査票(アンケート票)の作り方を解説していきます。

顧客満足度(CS)とは

顧客満足度を測るアンケートの質問例

初めに基本的なことから説明すると、『顧客満足度』とはその商品/サービスを購入または使用した人の満足度合を数値化したものです。
ごく簡単に言えば、以下のような質問でアンケート調査をやれば顧客満足度を測る事ができます。

この質問で『どちらともいえない』より下の選択肢を選んだ人は、その商品に何かしら不満がある人ということになります。
そしてそういった方には、『ご不満な点を以下の空欄にご記入ください』という質問で不満点を書いてもらったりしますよね。

『顧客満足度』の算出方法

上記の質問から『顧客満足度』のスコアを算出する方法として一番多いのは、Top 2 boxです。
要するに、7段階の中で上位2段階(『大変満足』と『満足』)を選んだ人が全体の何%いるかを算出する方法です。

例えば、上記の質問を100人に回答してもらって20人が『大変満足』、30人が『満足』と答えた場合、Top 2 boxで顧客満足度を計算すると

(20 + 30) / 100 = 0.5

なので、顧客満足度は50%という計算になります。

ちなみにTop1box(最上位段階を選んだ人の割合)Top3box(上位3段階を選んだ人の割合)もあります。
どれを使うべきという明確なルールはありません。
どれが指標として一番使いやすいかをトラッキングする人が選べばよいです。

顧客満足度(CS)調査の問題点

上記のように顧客満足度を数値化して、定期的にトラッキングするのは簡単にできます。
ただしこれだけだと、そのスコアが悪かった場合に何をしたらよいのかが分かりません。

その為この質問のすぐ後に、

『具体的にご不満な点を以下の空欄にお書きください』

なんて記述欄を設けたりしますが、相当頭に来ているのであれば事細かくその不満を書いてくれるものの、そうでなければ何も書いてくれません。回答者にとって文章を書くというのは手間でしかないのです。

また指摘された所は本当に改善すべきなのかというのも悩むポイントです。
最近はごくわずかの人が『除夜の鐘がうるさい!』と言ったからといって大晦日に鐘をつくのをやめるお寺が増えているようですが、それと一緒です。

たった1人の人が指摘したポイントは果たして大多数の意見なのかどうか?がこれだと分からない訳です。

 

【結論】顧客満足度調査は散布図で分析する

顧客満足度調査に必要な3つの質問

このように顧客満足度をアンケート調査で聴取してきちんと次のアクションに繋げたい場合、僕はアンケート票の中に以下の3つの質問を設定します。

3つの質問とは、

①購入検討していた時(商品購入前)の項目別重視度
“この商品を購入する前、あなたは下記の項目をどの程度重視して商品選びをしていましたか。
各項目についてあなたのお気持ちに一番近いモノを1つお選びください。”

②購入後の項目別満足度
“この商品を購入・使用した後、あなたは以下の項目についてどの程度満足していますか。
各項目についてあなたのお気持ちに一番近いモノを1つお選び下さい。”

③その商品の総合満足度
“総合的に、この商品についてどの程度満足していますか。
あなたのお気持ちに一番近いモノを1つお選びください。”

です。

①と②の項目を全て同じにすることがポイントです。以下はカバン屋が実施した調査票事例です。

項目別重視度 vs 満足度の散布図

僕が顧客満足度調査を行う時は、いつも上記の質問を使ったアンケート調査を基に散布図を作成します。
その理由は至ってシンプルで、散布図を使うと何が問題なのかが視覚的、直感的に相手に伝わりやすいからです。

定量調査の分析は難しい統計学を使った方が高度に見えますが、意思決定する人を納得させられないと意味がありません。
意思決定する人が統計学の知識を持っているのであれば高度な分析手法を使ってもよいですが、だいたいの場合は知らないですよね。
であるならば、相手の理解しやすい分析方法で結果を見せた方がよいです。

ちょっと話がずれましたが、顧客満足度調査の結果を散布図で表す際に一番シンプルなのは、下記のように横軸を”重視度”、縦軸を”満足度”として各項目をプロットする方法です。

そして上記グラフのように上の三角形を『領域A』、下の三角形を『領域B』とします。
この2つの領域が示していることは、

領域A・・・重視度に比べて満足度が高い項目
領域B・・・重視度に比べて満足度が低い項目

ということになり、平たくいうと
領域Aは『重視していた度合以上に満足している項目』領域Bは『重視していた度合以上に不満のある項目』と解釈できる訳です。

ということは、何か方策を打つのであれば検討すべきは領域Bの方です。
上記のグラフ例では領域Bに8個の点がありますが、しかしながら領域AとBの境を表す斜めの線から遠い項目ほど重視度以上に不満の多い可能性があります。
具体的には『軽さ』と『背負いやすさ』の2項目ですね。

従いまして、これら2つについて対策を検討する必要があるという事になります。

不満の理由を深堀する

これによって、商品/サービスのどこに絞って対策を検討していくべきかは明らかになりました。
とはいえ、『では具体的にその項目に対して何をすればよいのか?』はこのグラフでは明らかになりません。

他のブログでも書いていますが、アンケートは『何らかの理由』を明らかにすることに弱いツールです。
人間は自分の気持ちを言葉で表すのが苦手なので、『不満の具体的な理由をこちらにお書きください』という欄を作っても空欄で提出してしまう、もしくは何か書かなければいけないから『何となくそう思ったから』といった参考にならない意見を書く、もしくは考えてもいないことをでっち上げて記載するなんて事が普通に想定されます。

とはいえ、本心を書いてくれるお客様も多少はいらっしゃるので、そのような記入欄を作っても良いです。
しかしおススメは、手間がかかってもいいので不満に思っている人へインタビューをしてみる事です。

以下のような質問を設定してインタビューに協力してくれる人を募集するのです。

インタビューを軽く見ている方が結構いらっしゃるのですが、これは立派なリサーチ手法です。
『なぜ不満なのか?』という問いに対して何かしら記入してくれるかもしれませんが、ほとんどの場合は更に深堀して聴きたい事が出てきます。
しかしアンケートでは深堀質問はできないのです。

実際にその方に会って質問しても良いですし、最近では”Zoom”というオンラインミーティングのシステムもあります。1対1で話をするのであれば無料で使用できます。

生の声を聴くことを面倒くさがらず、是非一度インタビューを実施してみてください。

【参考】総合満足度ではなく推奨意向度を聴く

上記のような形で顧客満足度を測ってもらえればよいと思います。
ただ1つ補足すると③の総合満足度を聴く設問は、『総合的にこの商品についてどの程度満足していますか?』ではなく、『この商品を友人・知人にどの程度勧めたいと思いますか?』(他人への推奨意向)と聞いた方がより分析しやすいかもしれません。

満足しているか否かというのは「自分の気持ち」を自分で数値で表現する事になり、実はこれって結構難しいのです。
ただどの程度勧めたいか?というのは「自分が行動にうつしたいか否か」を数値化するので、こちらの方が気持ちを数値化するよりもやりやすいのです。

このように勧めたいか否かを評価してもらう方法をNPS (Net Promotor Score)と呼びます。
詳細は以下の別のブログに書いてますので、参考に是非ご覧ください。

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