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マーケティング初心者も使える高度テク『投影法』を徹底解説

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こんにちは。マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
今回はプロのマーケティングリサーチャーが定性(インタビュー)調査などで使う『投影法』という手法ついて詳しく解説したいと思います。
主に何かの『理由』や『イメージ』といった抽象的な事を聞くのに有効なテクニックです。使いこなすのは結構難しいのですが、簡単なものであれば初心者でも十分活用できます。
是非読んでみて下さい。

投影とは

認めたくない感情を他人のものにする心理現象

truth投影法の解説をする前に、まず知らなければいけないのは『投影』という心理学用語です。
『投影』とは、

「自分が持っている感情や素質を認めたくない時にそれらを他人のものだと無意識に考えてしまう」という人間が持っている心理的性質

のことをいいます。
是非自分の日常を見回してほしいのですが、そんなことを無意識にやってませんか?

『投影』の具体例

例えば、あなたの職場に何となく嫌いなAさんという方がいるとします。
この時、自分がAさんを嫌っているのにも関わらず、「Aさんが自分の事を嫌っている」と無意識に思い込んでしまうのが『投影』です。

これは「Aさんは特段悪い性格ではないのに自分は不当に嫌ってしまっている」という自分の感情を認めたくないからこそ起こる心理です。
「Aさんが不当に自分を嫌ってくるから、自分も嫌いなんだ」と自分の不当な嫌悪感を無意識に正当化しようとする働きが人間にはある訳です。

先ほどから『無意識』という言葉を強調していますが、投影は意識して起こる心理現象ではないという事をよく覚えて下さい。

また上記は『自分のネガティブな感情を相手に投影する』という例ですが、逆に『自分のポジティブな感情を相手に投影する』という場合もあります。

例えば自分が片思いをしている相手がいる時に「相手も自分のことが好きに違いない」と思い込んでしまうことも「投影」です。
一方通行である自分の好意を認めたくない為、無意識のうちにその感情を相手に投影してしまう訳です。
片思いの相手が発する細かい言動や仕草に、自分への好意を勝手に見出したりしてしまいます。

『投影』は防衛機制のひとつ

『投影』という心理現象を初めて提唱したのはイギリスの精神分析家であるアンナ・フロイトです。
というよりフロイトは『防衛機制』という人間の心理の1つとして『投影』を提唱しました。

防衛機制とは、人が受け入れがたい状況や潜在的に危険な状況に晒された時に、それによる不安やストレスを軽減しようとする無意識的な心理的メカニズムのことを指します。

例えば何か嫌なことがあったら、それをずっと引きずらずに無意識のうちに心の奥底にしまい込んで、あたかももう忘れたような状態にすることも防衛機制です。これを心理学では『抑圧』と言います。
また社会問題となっている引きこもりも防衛機制の1つであり、心理学では『退行』と言います。
心がとても傷ついたり、病んでしまうと人との接触を極力抑えて不安を軽減させる為、活動範囲が狭くするわけです。

この防衛機制について説明をするとかなり膨大な量になってしまうので、ご興味がありましたら是非心理学の本などを見て下さい。ここでは本題である『投影』という防衛機制に絞って話を進めます。

『投影法』とは

上記のように『投影』とは他人も自分と同じ感情を持っているものだと思い込んでしまう心理現象ですが、『投影法』というリサーチ手法はこれを利用しています。
要するに『回答者が表現できない、または表現しにくい思いや考えを、回答者以外の人やモノを通して表現させる』ということになります。

例えばあなたが自動車メーカーに勤めていて、自社商品であるAという新車を購入しなかった人に対してその理由が聞きたいとします。
方法としては『なぜAを買わかなったのですか?』とダイレクトに質問してみればよさそうですが、正直これだと期待できるような答えは返ってきません。

他のブログでも書いている通り、人間は自分の行動を論理的に説明する事ができないからです。

『何となく他のクルマの方が気に入ったから』という大雑把な答えが返ってくることもあれば、『品質で選んだ』などという本音ではない模範的な回答が出てきたり、はたまた何かしらの理由を頭の中で『でっち上げ』たりすることもあります。

自分でもどんな思い・考えで買ったのかの深層心理が分からない事が多く、答えようとしても答えられないのです。皆さんもそんな事ありませんか?
そんな時に投影法を使うと非常に効果的で、投影することで表現しにくい心理や思考を表現してもらうのです。

『投影法』を使ってみよう!

『投影法』がどんなものかお判りいただけたでしょうか。
ちょっと難しいかもしれませんが、理解さえしてしまえば様々な調査の中で活用できると思います。
通常は定性調査(インタビュー調査)の中で多用されるのですが、場合によっては定量調査の中で使う事も可能です。

ただ、単に投影法と言っても具体的なやり方は多数あるので、今回はその代表的なやり方をいくつかご紹介します。

吹き出し補完法

私自身が一番多く使っている方法は『吹き出し補完法』と言われるものです。
提示した絵や写真の登場人物に吹き出しをつけ、その人が何を思っているのか、または何を言っているのかを書いてもらうという方法です。
例えば、以下の絵をご覧ください。

大人達が宴会をしている所を右上の男の子がじっと見ている絵ですが、
『この時男の子は心の中でどんなことを思っているか』をあなたの想像で構わないので吹き出しの中に書いてください。というのが吹き出し補完法です。

これは実際数年前にある飲料メーカーと一緒に行った、高校生を対象とした定性調査の一部です。
以下は当時の調査で得た回答を再現したものなのですが、ある高校生はこんな風に回答してくれました。

回答例①

これは宴会をやる大人をみて純粋に『羨ましい、早く大人になって自分もお酒を飲んでみたい』と男の子が考えているという回答です。

しかし一方でこんな回答もありました。

回答例②

『大人達は毎日会社で上司や先輩から小言を言われ、その憂さ晴らしの為にお酒を飲んでいる。お酒しか楽しみがない人生なんて俺は送りたくないな・・・』という感じで、男の子は宴会に否定的な見方をしているという回答です。

重要なのは、この吹き出しに書いたことは絵の中の男の子が考えていそうなことではなく、回答者自身が宴会に対して持つ潜在意識である可能性が高いということです。
要するに回答者は宴会について持っている自分の潜在意識を絵の中の男の子に投影していると考えるのです。
当時の高校生を対象に行った調査では、①のように宴会をポジティブに捉えている人よりも②と同じようなネガティブに捉えている人の方が多かったのを覚えています。

この調査は飲料メーカーと一緒に『高校生の宴会に対する意識』を明らかにする為に行ったのですが、結論として当時の高校生は『宴会が唯一の楽しみなんて大人にはなりたくない』というネガティブな意識が高い事が分かり、これ以降そのメーカーは『宴会』のイメージアップに努めていく事になるのです。

文章完成法

上記の吹き出し補完法はインタビュー調査などによく使われますが、事前に絵や写真を準備しなければいけないので少し手間がかかります。
その為、もう少し簡便に投影法を行う為に『文章補完法』というのもあります。

例えば『ハッシュドビーフ』の固形ルーを開発している食品会社が、一般の方が持っているハッシュドビーフのイメージを調査した質問事例です。

【質問】
仮にあなた自身が 『ハッシュドビーフ』になったとします。そんなあなたはある日恋人にフラれてしまいました。その時恋人は、「ハッシュドビーフさん、あなたの (  ①  ) は大好きだったけれど、(  ②  ) が好きになれなかったわ」 。
① と ② にはどのような言葉が入ると思いますか?それぞれお答えください。

【回答例】
① (大好きだったこと):ヨーロッパを感じさせるおしゃれな雰囲気
② (好きになれなかったこと):家庭で毎日食べる気持ちにはなれない所

これは回答者自身が持っているハッシュドビーフに対する思いを、文章内のフッた恋人に投影させるということになります。
この回答を見ると、回答者はハッシュドビーフに対して『特別な日に食べるような高級感』を持っているものの、『毎日の食材にするのは無理がある』という不満を潜在的に感じている事が分かります。

擬人化法

何かの商品のイメージを聞きたい場合、その商品を人間に例えてもらうというのも投影法の1つの方法です。

【質問】『ハッシュドビーフ』を人間に例えるとどのような人になりますか?

【回答例】タキシードを着てシルクハットをかぶった老紳士

上記の回答例より、回答者はハッシュドビーフのことを毎日食べるようなものではなく、フォーマルな場所で出される料理 というイメージを抱いていることがわかりますよね。

『投影法』の注意点

マーケティングリサーチで使う投影法について、比較的簡単な方法を3つ紹介しました。
是非実践してみて欲しいのですが、投影法の難点は分析が難しいというところです。
また上記以外の投影法として回答者に絵を描かせたり、写真を切り貼りさせたりする『コラージュ』『フォトソーティング』という手法もあるのですが、書いた絵や切り取った写真から回答者の心理を見抜く作業になるので更に分析は難しくなり、心理学的な知識が必要とされる場合も多々あります。

ただ、まずは以下の点を注意してやってみて下さい。

回答理由を必ず聴く

投影法は回答者にただ回答させて終わりではなく、必ず『なぜそう書いたのか?』を質問する必要があります。
これを怠らずに行って下さい。
例えば上記の宴会の調査では『酒を飲む事しか楽しみがないのかな』、ハッシュドビーフの調査では『タキシードを着た老紳士』といった回答が出てきましたが、これだけで回答者の心理を見抜けと言われても無理があります。

『なぜ絵の中の男の子がそう考えていると思ったのか?』
『なぜハッシュドビーフは老紳士だと思ったのか?普通の紳士とどこが違うのか?』

という風に回答した理由を必ず深掘りしてみましょう。
そうすることで回答者が何を考えてそう書いたのかが分かるようになってきます。
投影法で重要なのは『どんな回答をしたか?』よりも『その回答の裏にはどんな思いがあるか?』です。

回答に時間をかけさせない

上記の吹き出し補完法、文章完成法、擬人化法などの『文を書かせる投影法』では、回答にあまり時間をかけさせないよう配慮することをおススメします。考える時間と書く時間を合わせて1分もあれば十分です。

考える事に時間をかけてしまうと、人間は『模範的な回答をしよう』いう意識が働いてしまいます。
ここで必要なのは模範的な回答ではなく、絵や文章を見てパッと出てくるモノやイメージなので、それを回答者にも意識させましょう。

想定外の回答が出てくるのが『投影法』

投影法では、調査を行っている側が想定していないような回答を回答者が出してくる事が多々あります。
それもそのはずで、投影法というのは冒頭で書いた通り、自分では『気づいていない』、『表現しにくい』もしくは『言いにくい』感情を表現させる為の手法だからです。

上記のように『宴会しか楽しみがない人生なんて俺は送りたくない』なんて発言は少し言葉が乱暴で言いにくいですし、ハッシュドビーフに対するイメージを答えろとストレートに聞いてもなかなか表現できないのが人間です。
だからこそ『投影法』を使ってなかなか言葉にできない事を言葉にしてもらっている訳なので、想定外の回答が出てきて当然なのです。

しかし、それに慣れていないリサーチ担当者はその回答を否定してしまったり、分析対象から除いてしまったりするのですが、それは絶対にやってはいけません。

むしろ想定していなかった回答が出てきたら『よしっ』と思って下さい。
自分が持っている固定観念が崩された瞬間です。その回答こそ分析の時に大事にして下さい。

 

以上が『投影法』です。
細かく言えば投影法にはまだまだたくさんの手法があるのですが、今回は初心者でも比較的使いやすいものを厳選して書きました。
是非1度チャレンジしてみて下さい!

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