
マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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こんにちは、マーケティングリサーチャーの渡邉です。
ビジネスがうまくいかない時、「そうだ!若者にアイデアを出してもらおう!」と考える経営者は意外と多いものです。
新しい発想、斬新なアイデア、これまでになかった視点。そうしたものを求めて、若者の意見に耳を傾けるという行為は一見前向きに思えます。
しかし本当にその方法で、ビジネスの根本的な課題が解決できるのでしょうか。
結論から言えば、答えは「No」です。
なぜなら、意見を聞くべき相手を間違えているからです。経営において重要なのは、自社の商品やサービスのターゲットとなる顧客層の声に耳を傾けることです。
若者の声は参考になることもありますが、それはあくまで補助的なものに過ぎません。
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なぜ若者に頼るのか?その背景
経営が行き詰まると、経営者やマーケティング担当者は焦りを感じます。
その結果、「何か新しいことをしなければ・・・」と考え、普段なら選ばない手段に飛びつくことが少なくありません。特に、社内外の若者にアイデアを求めるのはその典型です。
若い人たちは柔軟な発想を持ち、デジタルネイティブとしての視点や流行に敏感な感覚を持っています。
確かに、彼らの意見には目新しさや斬新さがあります。しかし、ビジネスの課題は単なる新しさや目新しさで解決できるほど単純ではありません。
特に、ターゲット顧客が若者でない場合、その意見は的外れになるリスクが高いのです。
実際の事例:若者に頼って失敗した企業
1. 地方テーマパークの事例
ある地方の第三セクターが運営するテーマパークでは、開業から20年が経過し、入場者数が開業当初の半分以下に落ち込んでいました。
何とか状況を打開しようと社長は社内でアイデア出しを行いましたが、目立った案は出てきません。そこで「そうだ!若者に聞こう!」と、地元の大学生を集めてアイデアを求めたのです。
集まった若者からは、テーマパークにキッチンカーを呼んでイベントを開く、パンフレットを若者向けにリニューアルするなどの提案が出ました。
実際にそれらは実行され、地元メディアにも取り上げられ、一時的に入場者数は増加しました。
しかし、その効果は長続きせず、ほどなくして入場者数は再び減少してしまったのです。
2. 都内住宅リフォーム会社の事例
東京の住宅リフォーム会社では、新しいモデルルームに約10億円を投じました。
ところが、オープン後半年間の来場者はわずか10組。焦った経営陣は若手社員とその友人たちを招き、モデルルームを見せて意見を募りました。
その結果、若手社員たちは、Pepperくん(ソフトバンクが開発した人型ロボット)が来場者をお出迎えしてくれる案や、動画CM制作などのアイデアを出しましたが、実際にそれらを反映しても来場者数は伸びませんでした。
共通する失敗の原因は「ターゲティングの欠落」
これらの事例の失敗には共通点があります。それは、本当に意見を聞くべき相手を間違えているということです。
テーマパークなら、小さなお子さんのいるファミリー層こそがメインのターゲットです。
また住宅リフォームであれば、家族の成長に合わせて住まいを見直そうとする40代、50代の夫婦が主要なターゲットになるはずです。
ところが、これらの企業はなぜかその声を拾わず、若者にばかり意見を求めてしまったのです。
本来であれば、テーマパークの事務所を一歩出れば、園内にはファミリー客が溢れています。その中で「少しお時間いただけませんか?」と声をかけ、インタビューをするほうがよほど的確な意見が得られたはずです。
経営者が今すぐすべきこと
もちろん、若者の意見を聞くこと自体が間違いだと言っているのではありません。
若者ならではの新しい視点や発想は、時にビジネスにプラスの影響をもたらします。しかし、それはあくまで「補助的」な意見であり、戦略の軸となるのはあくまでターゲット顧客の声です。
マーケティングの基本は「誰をターゲットにビジネスを行うのか」を明確にすること、すなわちターゲティングです。
ところが、多くの企業ではこの基本が実行されていません。
「ターゲティング」という言葉は知っていても、それを実際の施策に落とし込めていないのです。
もしあなたのビジネスがうまくいっていないなら、まずは「誰のためのビジネスなのか」を見直してください。
今ターゲットにしている顧客層は誰ですか?その人たちの声を直接聞いていますか?アンケート、インタビュー、座談会など、意見を拾う方法はいくらでもあります。
若者に頼るのは、ターゲット顧客から意見をしっかり収集し、施策に反映させた「その次」で十分です。
まとめ
「若者に意見を聞けば新しい道が開けるはず」という発想は、時に経営者の焦りから生まれる幻想です。
ビジネスの本質は、ターゲット顧客のニーズを正確に把握し、それに応えることにあります。
ぜひ、今日からでも自分のビジネスのターゲットを明確にし、その声を集めることから始めてください。それこそが、持続的な成長への第一歩となるはずです。
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マーケティングの『ま』on YouTube 2025年6月25日 6:01 PM