
マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
●無料メールで学ぶマーケティング講座配信中⇒こちら
●店舗・クリニック経営者の方へ、AIクチコミ作成ツール『クチコミックス』提供中⇒こちら
こんにちは、マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
「自社の商品やサービスを改善したくて、『うちの商品の課題を教えて』と生成AIに聞いてみた。そうしたら、すごく詳しくてそれっぽい答えが返ってきた」——最近、こんな経験をした方は多いのではないでしょうか。
生成AIはとても便利なツールですが、使い方を間違えるとビジネスを誤った方向に進めてしまう危険があります。今日は、その落とし穴と、だからこそ今アンケートやインタビューといったオーソドックスな市場調査が重要になっている理由をお伝えします。
▼動画でも解説しています
生成AIが「自信満々」に答えてしまう理由
生成AIは本当に優秀です。マーケティングの知識も心理学も統計学も、分からないことはほとんど何でも答えてくれます。
だから「お客さんはなぜ自分の商品を買わないのか」と聞けば、それらしい答えがすぐに返ってきます。
でも、ここに落とし穴があります。
生成AIはインターネット上の過去のデータから、一般的な消費者心理やマーケティング理論、過去の傾向などを学習し、それらを統合してあなたの質問に答えています。
当然ですが、生成AIはあなたの顧客のことも、あなたの商品のことも何も知りません。
つまり、一般論は答えられても、あなたのビジネスの現状にカスタマイズされた回答はできないのです。
それにもかかわらず、AIはその一般論を自信満々に答えてきます。
基本的に「分かりません」とは言わないので、多くの人がその答えを正しいと思い込んでしまうのです。
【事例】生成AIの助言どおりに改善しても契約率が上がらなかった、ある地方のハウスメーカー

実際にあったケースをご紹介します。以前、私のクライアントだった、ある地方のハウスメーカーの話です。
そのハウスメーカーは住宅展示場にモデルハウスを構えていて、週末になるとそこに来場する人が結構いました。
しかし、なぜか契約率が悪く、ひどい時には2ヶ月ほど契約が0件という状態が続いていたそうです。
そこで担当者は、ChatGPTに「モデルハウスへの来場者の契約率を上げるにはどんな点に気をつければいいか?」と聞いてみました。
すると、ChatGPTはおおよそ次のように回答しました。
- モデルハウス内のレイアウトを見直しましょう
- 照明を工夫して空間の魅力を高めましょう
- 導線を整理して居心地よく見学できるようにしましょう
どれも、それっぽく聞こえる回答です。確かにそうだなと思える内容だったので、担当者はこれを全部実行しました。
しかし、契約率は全く上がりませんでした。
来場者への直接インタビューで見えた「本当の原因」
この担当者の方が、たまたま私のマーケティング調査のセミナーを受講しに来てくれて、個別にこの話を聞く機会がありました。
その時に私からは「具体的に来場された方にインタビューしてみたらどうですか」と提案しました。
そこで後日、過去にこのモデルハウスに来場したことのある方5名にアポイントを取り、Zoomで1人ずつインタビューを実施。
すると、驚くことに5人全員がすでに別のハウスメーカーと契約していました。
「なぜこのハウスメーカーと契約しなかったのですか?」と聞いたところ、5人とも同じような返答がありました。
- 営業の人が全然話しかけてこなかった
- モデルハウスの説明が一切なかった
- 「自由に見てってください」という感じで、逆に不安になった
実はこのモデルハウスでは、来場者にゆっくり中を見てもらおうという意図で、営業担当者があえて話しかけないようにしていました。
それが完全に裏目に出ていたのです。
さらに、ChatGPTが改善を勧めていた「レイアウト・照明の位置・導線」について何か気になった点はあったか思い出せる範囲で聞いてみたところ、5人全員が「特にありません。モデルハウスの中は良かったですよ。でも営業の人に売る気がなさそうだったので」と答えました。
このインタビューの後、そのハウスメーカーではモデルハウスに来場したお客様には必ず説明することをリスト化し、営業担当者全員に徹底させました。
その結果、契約率は大きく改善しました。
ChatGPTが教えてくれた答えは、一般論としては間違っていません。
しかし、このハウスメーカーの問題の本当の原因はそこではありませんでした。リアルなお客さんに直接聞いて、初めてその本当の問題が見えてきたのです。
AIと顧客調査の正しい関係
ここで言いたいのは、生成AIが普及すればするほど、リアルな顧客の声の価値は上がるということです。
みんなが同じようにAIを使うようになると、AIが出す一般論は誰でも手に入るようになります。言い換えると、一般論だけでは他社との差がつかなくなるのです。
一方で、自社のお客さんのリアルな声は、自分で調査しなければ手に入りません。それこそが、自社と競合との本当の差になります。
AIと顧客調査の正しい関係を整理すると、次のようになります。
- 生成AI:仮説を出すのが得意
- アンケート・インタビューなどの市場調査:その仮説が正しいかどうかを確かめるのが得意
この2つを組み合わせることで、最強のマーケティング戦略を作り出すことができます。AIに全部任せるのではなく、AIで仮説を出し、実際のお客さんで検証する——このセットが、これからのビジネスに必要な考え方です。
まとめ
今日のポイントは4つです。
- 生成AIは自信満々に答えるが、それはあなたの顧客の本音ではない
- AIの一般論では見えない、あなたの会社固有の問題が必ずある
- それはリアルなお客さんに聞いて初めて、本当の解決方法が見えてくる
- その解決方法は、AIで仮説を立て、アンケートやインタビューなどの調査で検証することで見つかる
これが、生成AI時代における最強のマーケティング戦略を作るコツです。ぜひ実践してみてください。
よくある質問
Q1:生成AIにマーケティングの相談をすること自体はやめるべきですか?
A1:いいえ、やめる必要はありません。生成AIは仮説を立てる段階では非常に有効なツールです。重要なのは、AIが出した答えを「最終的な正解」として受け取るのではなく、「検証すべき仮説」として扱うことです。その仮説を実際の顧客へのアンケートやインタビューで確かめることで、精度の高い戦略につなげることができます。
Q2:生成AIの回答と実際の顧客の声が食い違う場合、どちらを優先すべきですか?
A2:基本的には実際の顧客の声を優先してください。生成AIの回答は、インターネット上にある一般的な消費者心理や過去の傾向を学習した「一般論」です。一方、実際の顧客の声はあなたの会社・商品に固有の情報です。今回の事例のように、一般論としては正しくても、個別のビジネスの本当の課題とは異なるケースが多くあります。
Q3:少人数へのインタビューだけで、本当に有効な結果と言えるのでしょうか?
A3:今回の事例のように、少人数(5名程度)のインタビューでも、全員から同じ内容の回答が得られた場合は、それが本質的な課題である可能性が高いと考えられます。もちろん、より精度を高めたい場合はアンケート調査で定量的に裏付けを取ることも有効です。まずは少人数でもリアルな顧客の声を集め、仮説を検証することから始めてみてください。
[ShortCode1]





















