マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
会社などでマーケティング調査を担当する際、避けて通れないのが「報告書の作成」です。
リーダー、上司、はたまた役員などに対して結果を報告するというのは組織人としての基本ですからね。
ただ、おそらくほとんどの方が
「報告書の作成って面倒くさい!」
と思ってないでしょうか?
確かにササッとできるものではないので、そりゃ面倒ですよね。
そして、それに加えて『プレゼンもやれ!』なんて言われたらどうしよう・・・なんて思う方も大勢いると思います。
そんな方の為に、今日はリサーチに関する報告書の作成についてお話します。
最初に断っておきますが、今回のコラムには少し多めにサイト内リンクが貼り付けてあります。
というのは報告書の作り方の全てを1つのブログに書くことができないからです。
それこそ膨大な文章になってしまい、本一冊書けてしまうかもしれません(笑)
なので、報告書の書き方の大まかな説明をこのブログに書き、各々の詳細はご興味あればそのリンク先をクリックしてご覧ください。
レポートの作成を楽しくするたった1つの方法
ここまで頑張ってリサーチをしてきたのに、報告書の内容がイマイチだったらあなたの苦労は水の泡です。
ここはもうひと踏ん張りしないといけません。
僕自身はこのマーケティングリサーチという業界に長く居ますが、実は報告書の作成作業が楽しくて仕方ありません。
なぜなら僕はいつも、
『報告先の人達を絶対に「なるほど!」と言わせてやる!』
と思って作るからです。
その為、どうやって驚かせようかと色々企みながら作ります(笑)
それが楽しくて仕方ないのです。
そして自分の企み通り、結果を見た報告先の方々が
「へ~そういうことだったのか!!」
「なるほど!一気に謎が解けた!」
と言ってくれたら、これはもう快感以外の何物でもありません。
従いまして、ただ結果をまとめて分かった事をまとめる・・・という心持ちだと、どうしても面倒な作業になってしまいます。
どうやれば相手が驚くのかを考えながら作りましょう。
報告書の良し悪しはリサーチの準備段階で決まる
しかし、報告書作成の時だけ頑張っても良い報告なんてできません。
当然、調査設計(調査の準備段階)そのものがしっかりしており、そして素晴らしいアウトプットが出てこないと良い報告書なんて書けないのです。
片手間で作ったアンケートで調査をやって、報告先が納得するような書類を作れと言われても無理な話です。
なのでマーケティングリサーチの基本として、事前の調査設計には十分な時間を使って下さい。
以下に調査設計のエッセンスをまとめました。
- 調査目的を決める
- 調査目的に対する仮説を作る
- 調査目的を達成する為の調査対象者を決める
- 調査目的を達成する為の質問文を仕込む
この4つです。
ちょっと固い話になってしまいますが、少しお付き合いください。
ハッキリした調査目的を設定する
まず調査をやる前に決めておかなければならないのは、
『調査で何を明らかにしたいのか?』
です。
言い換えれば、『何が分かればこの調査は成功したと言えるのか?』ということになります。
私が見た感じ、マーケティングリサーチに慣れていない方の8割くらいは調査目的をきちんと決めないままアンケート票やインタビューフローを作成しています。
調査目的に対する『仮説』を考える
調査目的が決まったら次にやらなければいけないのは『仮説を考える』です。
例えば調査目的が
『当社Webサイトからの発注数が伸びない理由を明らかにする』
のであれば、発注数が伸びない理由として何が考えられるのか、できる限り『仮説』を出すのです。
そしてマーケティングリサーチは、これらの仮説を検証する形で設計します。
なぜ『仮説検証』の形で設計しなければいけないのかはこちらを参考にして下さい。
アンケートであれインタビューであれ、仮説がないリサーチは絶対失敗します。
仮説を検証できる調査対象者を選ぶ
仮説が決定したら、その仮説を検証する為にどんな人たちに回答してもらうかを決めます。
要はアンケートやインタビューに答えてもらう対象者ですね。
とりあえず友達に!とか、過去のお客さんのメアドリストにアンケートを配ろう!など、回答者を安易に決めてしまうケースが多々あります。
が、基本的には『出した仮説を検証する為には誰に答えてもらうのがベストか?』を考えて対象者条件を決めないといけません。
そして必要であればアンケートモニターパネルなどを使って、第三者に対して調査をすることも視野に入れないといけません。
※アンケートモニターパネルって何?と思った方は是非こちらを見てくださいね。
仮説を検証する質問を仕込む
ここまで出来たらあとは仮説を検証する為の質問を仕込んでいきます。
その際気を付ける事は、
- 質問の順序は適切か
- 質問文は中学生でも分かる文章になっているか
- 誘導尋問になっていないか、その他Biasがかかっていないか
- 選択肢はMECEになっているか
・・・などです。
回答者が本音を答えてくれるような調査票になっているかを確認しながら作成していきます。
上記はあくまで調査設計のエッセンスですが、これが相手を「ワオ!」と言わせる報告書の土台となります。
しっかり作りこんで調査を実行しましょう。
※質問の設定の仕方についてはいくつか他のコラムでも解説しています。
こちらにいくつかリンクを紹介します。
報告書作成時の心構え
サンプル数が集まったらデータ分析し、いよいよ報告書の作成となります。
アウトプットされたデータを書面化していく訳ですが、報告先に興味を持ってもらえるような内容の報告書にする為には2つの『心構え』が必要です。
報告書は『相手に行動を促す説得資料』と考えよ
まず理解して欲しいのは、報告書は『相手に行動を促す説得資料』だということです。
調査結果を報告するという事は、『その結果を基にした今後の戦略を提案する』ということになります。
その為、その提案した戦略が採用されないと報告した意味がありません。
そしてその提案を採用される為には、報告書に『相手先が行動を起こさなければいけない理由』がロジカルに語られていないといけないのです。
ただデータが羅列されている「こんな結果でした~」だけの報告書では絶対に相手は動きません。
絶対に1つ新発見をする!という気持ちを持て
そしてもう1つ心構えは、『これまで誰も知らなかったことをこの調査から導き出す!』ということです。
調査には少なからずお金がかかっています。
その為、調査をしたのに『出てきた結果は既に分かっていたことだらけ』では単なる金の無駄遣いです。
新しい発見は1つで構いません。
もちろん複数あるならそれに越したことはないですが、『小さな新しい発見』がいくつもあるより、『大きな新しい発見』が1つある方がインパクトとして大きく、かつビジネスを大きく動かします。
だからといってノーベル賞並みの発見をしろとは言いません(笑)
報告先に「ワオ!」と言ってもらえるようなものを1つでも見つけることを心がけましょう。
ちなみに、マーケティングリサーチの心構えは以下のコラムでも詳しくまとめています。
報告先を唸らせる報告書のまとめ方
基本は調査目的に対する結果を書く
まずレポートの基本として、最初に設定した個々の『調査目的』に対する結果を述べないといけません。
各々の調査目的について仮説を設定しましたが、それら1つ1つの仮説を検証した結果何が言えるのかを書くという事です。
これが最低限、レポートに含めなければいけないことです。
各ページの要点は『5秒で分かる』ように仕組む
これは報告書をパワーポイントなどのプレゼン作成ソフトで作る場合ですが、実際私自身がかなり気をつけてやっている事です。
パワーポイントの場合、冒頭から結論までいくつかのページで構成される事になりますが、各ページの要点(言いたいこと)は、
読み手が初見から5秒でだいたいの内容を理解できるようにする。
ように作ってください。
人間誰しも基本的には面倒くさがり屋です。
ほとんどの人は、あなたが一生懸命書いたその苦労も知らずに報告書を斜め読みします。
そして、その内容がある程度瞬時に理解できないと読むのを途中で諦めてしまいます。
またプレゼンも、聴講者はあなたが口から発する言葉よりも、投影されている資料に重点を置きます。
要するに、パワーポイントに書かれていることそのものです。
人間は本能的に、聴覚の情報よりも視覚情報を大事にするからです。
なので、各ページの視覚情報が分かりにくいと、理解することを拒絶する方向に脳が働きます。
各ページであなたが伝えたい事がすぐに伝わるよう、最大限の工夫をして下さい。
目安は5秒です。
また、読み手が分かりやすい資料を作るにはデータを分かりやすくグラフで表現する事も重要なポイントです。
こちらのブログにグラフ作成のポイントをまとめてますので是非ご覧ください。
『キラーチャート』を必ず1つ作る
これです。ここが重要です。
先程心構えのところで、『絶対に1つ新発見する!という気持ちを持て』と書きましたが、その新発見を証明するような渾身のページを最低1枚は作りましょう。
このように、読み手に「へえ~!」と言わせるような表やグラフのことを『キラーチャート』と呼びます。
読み手からすれば、キラーチャートがたった1つでもあることで報告書の印象がガラッと変わります。
・その業界の常識をぶち破るような事実
・読み手の先入観を覆すようなデータ
・読み手の予想を覆すような結果
などなど、新発見であれば何でもよいです。
報告書の作成は作曲と同じ
私自身、報告書の作成は曲を作るのと一緒だと思っています。
私はミュージシャンではないので、曲を作った経験はほとんでありませんが(笑)
報告書にはストーリーが必要です。
ただアウトプットされたデータをバラバラと提示するのではなく、読み手の頭の中に内容が入りやすいように順番を決めないといけません。
そして、ある程度読み手が興味を持ってきたところで『キラーチャート』を出し、読み手の脳みその中を一気に盛り上げます。
要するに、脳の中に入っていきやすいようなメロディを作り、いいタイミングでサビを作るという事です。
「面白い」報告書作る事が全て
まとめると、大事なのは報告書を面白くするという事につきます。
『報告書』という言葉自体、何だか堅苦しくて小難しいような感がありますが、難しい資料を無理して読むのは相当ストレスが溜まります。
読み手がストレスなく、興味を持ちながら読み進められるように工夫する事が大事です。
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