マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
●無料メールで学ぶマーケティング講座配信中⇒こちら
マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
ここ最近、私が一緒に仕事をしているクライアントの方々から『アンケートリサーチパネル』を使って調査をやってみたい!という声が多くなってきました。
非常に良いことだと思いますし、是非パネルを有効活用してご自身のビジネスを飛躍させてもらいたいのですが、その為にはきちんとした知識を持った上でパネルを活用いただく必要があると思います。
またネット上で調べればお分かりの通り、現在多くの調査会社がアンケートリサーチパネルを所有していますので、結局どのパネルを使えばいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、アンケートリサーチパネルを使ってリサーチを行う時の注意事項や、使うパネルを選ぶ時のポイントなどをお話ししたいと思います。
そもそもアンケートリサーチパネルとは何か?
日本にはマーケティングリサーチを専門として請け負っている調査会社がいくつもあるのですが、それら調査会社ではWebアンケートのモニターとなってくれる方を常時募集しており、中にはそのモニター登録数が数百万人にのぼるところも多く存在します。
調査会社からすれば、何かしらのアンケート調査を行いたい時に自社のパネルに登録しているモニターさんに回答をお願いすればすぐにデータを取ることができます。
このように、各調査会社にアンケートモニターとして登録している方々の集合体を一般的に『アンケートリサーチパネル』と呼んでいます。
通常、モニターさんがアンケートに答えると、調査会社はそのモニターさんにポイントを付与します。
そのポイントを貯めると何かしらの景品や現金、金券に交換できるという仕組みです。
従いまして、モニターさんとしてはそのポイントをもらうことがたくさんのアンケートに回答するモチベーションになっているのです。
調査会社は独自にリサーチを行う時に自社のアンケートリサーチパネルを使用するのですが、同様にこのパネルはその会社の商品として売られています。
要するに、外部から『あなたの会社のパネルを使って調査をしたい!』という要望があれば喜んで受け入れてくれる訳です。
アンケートリサーチパネルを使って調査をするメリット
では、アンケートリサーチパネルを使って調査を行うとどんなメリットがあるのでしょうか?
具体的には以下が考えられます。
1) 自分と全く関係がない第三者の意見を聴取できる。
通常アンケートを取るとなると、自分が連絡できる範囲の人に配布するのが精いっぱいです。
ということは裏を返せば、自分と全く関係のない人にアンケートを配ることは通常できません。
その為、例えば、
- 自社が作ったブランドが国内でどの位認知されているのかを知りたい。
- 自社商品を初めて目にした時にお客さんはどう思うのか、率直な意見が聴きたい。
といった、第三者視点での回答を集めたい調査だとハードルが高くなります。
自社と関係のある人たちに回答してもらってもあまり意味がありません。
その人たちは自社の作ったブランドをおそらく認知しているでしょうし、自社商品だって既に知っているはずですからね。
もちろん、街中を歩いている人に声をかけてアンケートに協力してもらうという、いわゆる『ストリートキャッチ』をやれば何とかできなくはないですが、それがどれだけ大変なのかは想像できると思います。
「アンケートに答えてください!」と街頭で呼びかけてもほとんどの人は無視して通り過ぎてしまいますので、駅前に立ってアンケートの協力依頼をしても、1日で数名しか答えてもらえなかったなんてことはザラです。
このような時、アンケートリサーチパネルを使ってリサーチを行えば効率的に第三者視点での意見を集める事ができるのです。
2) 条件を絞ってアンケートを配布できる。
また、例えば化粧品に関するデータを集める為に20~30代の女性に絞ってアンケートを取りたい場合、ストリートキャッチだと調査員は対象だと思われる人にのみ声をかけていくことになるので、回収は更に難しくなります。
その点、アンケートリサーチパネルを使えば、登録されているモニターの中から20~30代の女性だけに(条件に該当するモニターだけに)配布することが簡単にできます。
このように回答者の条件を絞ることを『スクリーニング』と言うのですが、その詳細については次の価格の説明の中でお話しします。
アンケートリサーチパネルを使った調査に必要な料金
アンケートリサーチパネルを利用する場合、当然ですがパネルを管理している調査会社に使用料を支払う必要があります。
その額は会社によって異なりますが、基本的には以下の3つの要素で価格が決まります。
1) サンプル数
2) 設問数
3) スクリーニング条件
1) サンプル数
サンプル数とは、あなたのアンケートに回答してもらいたい人数です。
一般的には100人を最低として、200人、300人・・・と100人単位で要望する事ができますが、その回答してもらいたいサンプル数が多いほど価格は高くなります。
2) 設問数
これは要するにアンケート内に設定する質問の数です。
設定する最低質問数は調査会社によって異なりますが、基本的には多ければ多いほど価格は高くなります。
通常はどこの調査会社も、『要望するサンプル数 x 設問数』でいくらになるのかがわかる料金表をサイトに掲載しているので、利用する時にはまずそれを確認してみて下さい。
3) スクリーニング条件
“スクリーニング”とは『篩(ふるい)にかける』という意味です。
要するに、どんな人を条件にしてアンケートを配布するのか?ということであり、その条件が厳しければ厳しいほど料金が高くなります。
通常、性別や年齢、居住地などで回答者をスクリーニングするのであれば料金はかかりません。
アンケートモニターさんが調査会社にモニター登録する際にこれらは基本情報としてインプットしているからです。
ですが、それ以外の条件を設定するのであれば、その条件に合致しているか、合致していないのかを事前質問で判別しないといけないので追加料金がかかります。
例えば、スクリーニングの条件が
【性別】女性のみ
&(かつ)
【年齢】20~49歳
&(かつ)
【居住地】東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県の4都県
であれば、調査会社にもよりますが基本的には料金はかからないはずです。
しかし、上記に追加して、
&(かつ)
ペットを飼っている人
&(かつ)
週2回以上ジムに通っている人
&(かつ)
& 海外留学経験のある人
・・・など、基本情報としてインプットされていない条件をスクリーニングに追加したいのであれば、その為の質問を設定してモニターさん1人1人を判別する必要があり、追加料金がかかります。
※但しどんな項目が基本情報に含まれているのかは調査会社によって異なり、スクリーニングによる追加料金も違ってくるので、調査を行う際には事前に調査会社に確認する必要があります。
またこれ以外にも、調査会社によっては追加料金を支払えば調査票の作成をサポートしてくれるところもあります。
アンケートリサーチパネルを選ぶ時のポイント
インターネットで調べると、アンケートリサーチパネルを所有している調査会社はたくさんあります。
なので、初めて調査を行う人は「どこのパネルを使えばいいの?」と悩まれるかもしれません。
その時は上にも記した通り、基本的には『かかる費用』と『調査会社のサポート内容』を参考に決めていただければよいと思います。
最初のうちはサポートの手厚い調査会社を選び、数をこなして慣れてくればそのサポートも必要なくなってきますので費用の安いパネルに切り替える・・・という形でもよいです。
但し、それに加えて是非確認して頂きたいのが、『パネルに登録しているモニター数』と『モニターの属性内訳』です。
1) パネルに登録しているモニター数
これは単純に、モニターに登録されている数が多ければ多いほどよいです。
特にスクリーニング条件は厳しくなく、サンプル数が100~200程度の小規模な調査であればあまり気にする必要はないのかもしれませんが、それでも最低100万人程度のモニター数があるパネルを選びたいところです。
登録モニター数は各調査会社のWebサイトを見れば記載されているので、それを参考にして下さい。
ただ、記載されているのは各調査会社の自己申告値であることは予め認識しておいた方がよいと思います。
2) モニターの属性内訳
モニター数だけ見て「これだけ規模の大きいパネルであれば大丈夫!」と安心してしまう方が多いのですが、精度の高い調査をやりたいのであれば、登録しているモニターの属性内訳も確認しておきたいところです。
属性と言っても様々な項目がありますが、私個人の意見として確認したいのは、
①男女(性別)比率
②年齢比率
③居住地比率
の3点です。
これらの値が日本国内全体における比率に近ければ近いほど、そのパネルから無作為にモニターを抽出して調査すれば、ほぼ国全体の性、年齢、居住地比率に近い形でデータを取ることができます。
もちろん必要に応じてあとからデータを補正する事もできるので、各比率が多少ずれていても構いません。
しかしあまりにもずれているパネルを使う場合は、使用する際に注意が必要です。
例えば男女比率が2:8くらいになってしまっているパネルだと、男性の意見を聴くことが難しくなり、データ取得後に大幅な補正をする必要が出てきてしまいます。
モニターの属性内訳は調査会社によっては公開していないところもあります。その場合はその会社の担当者に連絡して、属性内訳を提示してもらった方がよいです。
アンケートリサーチパネルの弱点
以上がアンケートリサーチパネルを使う時の注意点です。これを活用してリサーチを実施すれば、あなたが今まで知り得なかったような事が判明するかもしれません。
ですが、アンケートリサーチパネルにも弱点があります。
それは、『特殊な境遇の方にアンケートを取りたい』場合は向いていないということです。
例えば、
- 存在数の少ない職業の方に限定してアンケートを取りたい時
- 収入の多い方を対象にアンケートを取りたい時
- 高校生以下の学生にアンケートを取りたい時
などなど・・・です。
基本的にアンケートモニターさんはこれを職業としている訳ではなく、モニターでお小遣い稼ぎをしたい、特にやることがない時に時間を潰したいという方が登録していらっしゃいます。
その為、お小遣い稼ぎをする必要がない人、基本的に毎日忙しい人は登録していないのです。
お勧めのアンケートリサーチパネルを紹介
最後に、私が個人的にお勧めするアンケートリサーチパネルを紹介します。
どのパネルを使用するか悩んでいる方は参考にして下さい。
マクロミル(Questant)
もしアンケートリサーチパネルを使用するのではなく、単純に自分が持っている連絡先リストの人に対してアンケートを配信したいのであればQuestantが一番おすすめです。
回答数:100件以内かつ設問数10問以内の小さなアンケートであれば無料で使えます。
それ以上の回答数や設問数が必要、またはパネルを使ってアンケートをしたい場合は年会費を支払えば使用できます。
加えて、パネル(GMOリサーチパネル)を使ってリサーチをしたいのであればその分の料金も必要になりますが、100サンプル x 10問で1万円とかなり格安で利用できるのがメリットです。
ただしデメリットとして、スクリーニングしてアンケートを配信したい場合は不向きです。
性別、年齢(10歳きざみ)、居住都道府県であれば絞り込んで配信する事ができるのですが、それ以外のスクリーニング項目設定はできません。
またメールによるサポートはあるのですが、基本的に調査準備は全てセルフで行う必要があります。電話での問い合わせはできません。
従いまして、簡単なアンケート調査を行うのであればおススメです。
マクロミル(QuickMill)
Questantだと物足りない場合は、QuickMillを使った方がよいと思います。
値段は高くなりますが(100サンプル x 10問で9万円)、モニター数が1000万人と多く、スクリーニング条件も設定できますので大方のリサーチに対応できると思います。
また基本料金の中には、
●Web調査画面作成
●調査票への画像挿入(10点まで)
●選択肢ランダマイズ
●サンプル割付回収(20セルまで)
なども含まれているというのも嬉しい点です。
クロスマーケティング
こちらも有名な調査会社で、上記のQuickMillと同じようなサービスになっています。
100サンプル x 10問で10万円、かつこちらも基本料金の中には、
●Web調査画面作成
●調査票への画像挿入(10点まで)
●選択肢ランダマイズ
●サンプル割付回収(20セルまで)
が含まれています。
スクリーニングをする場合は事前に担当者に条件を連絡し、見積をもらった上で使うかどうかを判断した方がよいと思います。
ジャストシステム(Fastask)
ジャストシステムが展開するリサーチパネルになります。
一太郎やATOKを開発した会社ですので、日本語のプロフェッショナルが調査票を確認してくれる事が売りなようです。
モニター数は160万人とちょっと少ないですが、これは『アクティブモニタ(=本当に稼働しているモニターさんの数)』ですので、信頼性は高いです。
またWebサイトにはオンライン見積作成ツールがありますので、まずは調査条件を入力してどれくらいの料金がかかるのかを簡単に概算できます。
Lactivatorの動画講座を『Udemy』で配信中!
Lactivatorが定期的に開催しているマーケティングリサーチの講座が、オンライン学習サービス『Udemy』に登場! 1つの単元を約10分前後の動画で解説しているので、通勤途中でもカフェでも、あなたの好きな時間に好きなだけリサーチを学ぶことができます。 最初の10分は無料で視聴いただけますので、是非ご覧ください!