マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
今日は『ネーミング』について勉強してみたいと思います。
『名前を付ける』という行為の事ですね。
当然ですが、何か新しい商品やサービスを販売・提供する時またはお店や会社を開業する時、それ自体に名前を付けないといけません。
そしてこの『ネーミング』という行為はマーケティングの中で一番重要と言っても過言ではありません。
名前というのはその商品やお店、会社を初めて知る人が目にする一番最初の看板ですからね。
その名前が何だかしっくりこなかったらお客さんは素通りしていってしまいます。
だから大事なんです。
今日はこの『名前の付け方(ネーミング)』についてお話しします。
良い商品を付ける4つのポイント
アル・ライスという世界的に有名なブランディングの権威も、
“ネーミングはブランディングにおいて最も重要な決定事項だ!”
と言っています。
なぜなら我々が何かを記憶する時、それに名前がなければ頭の中に残ることはまずないからです。
我々の脳は名前と多くの情報をリンクさせて記憶させ名前を鍵にして記憶の中から情報を検索しているのです。
では、理想的な名前とはどんなものでしょうか?
マーケティング学者のケラーは以下の4つがネーミングで重要なポイントだと言っています。
①シンプルで発音やつづりが容易
②親しみやすく意味を感じる
③ユニーク
④ベネフィットが連想できる事
だそうです。
これらを全て満たすと人は『覚えやすい名前』と感じます。
先程も申し上げたように、名前は基本的に情報を記憶の中に蓄えてもらう為の”鍵”ですから、”鍵”が覚えられなければそもそもの意味がないのです。
1つ1つ見ていきましょう。
シンプルで発音やつづりが容易
どんな名前でも、発音の仕方やつづりが簡単でないと覚えてもらえないのですよね。
例えば鹿児島名物に『白くま』という氷菓があります。
鹿児島市の天文館むじゃきで販売されているかき氷ですが、発音がとてもシンプルで子どもから大人まで誰でも覚えられますよね。
逆に、例えば私のこのサイトの名前『Lactivator』は実は良い例ではありません。
正直、ちょっと失敗したかなと思っています。
『ラクティベータ』と読みますが、最初に見た方は何と読むのか迷いますし、スペルも難しいです。
私としては、『活性剤』の意味である『Activator』に地方(Local)のLを付けて『Lactivator』としました。
マーケティングで地方の活性剤になるぞ!という意気込みで付けたのですが悪い例として受け止めてください(笑)
(私としては愛着があるので、これからも使おうと思ってますが)
それと同様、「三越」と「三菱」という名前はいかがでしょうか。
日本人にはなじみ深い名前なので混同しないと思いますが、これが英語のアルファベット表記になるとどうでしょう。
・MITSUKOSHI
・MITSUBISHI
・・・字面の印象で全く区別がつきにくくなりましたね。
日本人でさえそうなのですから、海外の方が見たらおそらく全く見分けがつかないのではないでしょうか。
従いまして、まず最初に大切なのはターゲットとするお客様が「シンプル!」と思ってくれるような名前にする事が大切です。
結構名前に凝る人ほど、難しい発音やつづりに走ってしまいがちなので気をつけましょう。
(Lactivatorと名付けた私に言う資格はありませんが・・・)
親しみやすく意味を感じる
ここで質問です。
次の3つの銀行名の中で一番良い名前であるものはどれでしょうか?
1. MUFG
2.三井住友銀行
3.さくら銀行
上記の良い名前の4つの要素を考えると、3つの銀行名で一番良いのは、あくまで個人的な見解ですが『3. さくら銀行』です。
シンプルかつ日本人にとって桜は親しみがありますし、「さくら咲く」などの言葉から、ここにお金を預ければ
いいことがあるかも・・・というイメージも沸きます。
残念なことにもう「さくら銀行」という名前は無くなってしまいましたが非常にセンスの良い名前だったと思います。
また前述の『白くま』も親しみやすいですね。
かわいい白熊を連想させてくれますし、さらに「白」という言葉がかき氷にかかっている練乳をお客さんに想像させるという意味があります。
ユニーク
何よりもユニークな名前でないと覚えてもらえません。
例えば皆さんご存知、北海道土産の定番の『白い恋人』などは良い例ではないでしょうか。
通常お菓子の名前というのは〇〇ビスケットとか〇〇クッキーというのが多い中、その概念にとらわれずに付けたのは素晴らしいと思います。
また広島のお菓子で『ヒバゴンのたまご』というものがあります。
広島県で目撃されたと言われている幻の怪獣:ヒバゴン。
そのヒバゴンがおいしい卵を産んだ・・・!というコンセプトのお菓子です。
一度聞いたら忘れられないインパクトがあります。
ベネフィットが連想できる事
その商品が自分にどんなメリットをもたらしてくれるのか?
それが名前だけでわかれば、こんなに強いネーミングはありません。
この点がとても上手いのは小林製薬です。
ほとんど全ての商品が、名前だけでベネフィットが連想できるように付けてあります。
例えば、
●熱さまシート
何かシート状のもので、これを貼れば発熱した時に冷やしてくれるのだなと、ほとんどの人が想像できます。
●なめらかかと
かかとのガサガサ、ひび割れをしっとりつるつるにする商品です。
名前のままですね。
●サカムケア
ひび・あかぎれ・さかむけを固め、剝がれないようにケアします。
こんな感じで、名前さえ憶えてくれれば、詳しい商品説明をしなくてもベネフィットが伝わります。
名前が良ければお客様にすぐ覚えてもらえます。
という事は、その分広告宣伝効果が高くなる訳です。
逆に名前が悪ければ高いお金をかけて広告を打ったとしてもなかなか覚えてもらえません。
上記を参考に、是非良い名前をひねり出して下さい。
顧客目線でネーミング
ここで1つ、名前を変更して成功した事例を紹介します。
「鼻セレブ」というティッシュをご存知でしょうか?
ネピアが発売した商品なのですが、これに関するお話です。
『ネピアモイスチャーティッシュ』の発売
1990年代後半、王子ネピアは「ネピアモイスチャーティッシュ」というティッシュを売り出しました。
これが鼻セレブの前身にあたります。
花粉症などの方は特にそうですが、柔らかいティッシュペーパーでも鼻をかみ過ぎると痛くなってヒリヒリすることがあります。
ましてや固いティッシュしかない大昔は、鼻をかみすぎて赤くなっている人がたくさんいました。
そこで各製紙会社は当時、こういった人達向けに鼻をたくさんかんでも痛くなりにくい保湿ティッシュを相次ぎ発売しました。
その時王子ネピアが売り出したのが「ネピアモイスチャーティシュ」だったのです。
モイスチャーとは英語で、水分や湿気などの事を指します。
ですからこの名前は、「ネピアブランドの水分を含んだティッシュ」であることを表しています。
「ネピア」は有名ですし、このネーミングで売れると考えたのも無理はありません。
しかし実は「エリエール」や「クリネックス」などのブランドも保湿ティッシュを出しています。
お客さんの立場からすると、それらとの違いがよく分からず強いインパクトを与える事ができませんでした。
もちろん競合他社が無ければこの名前で良いかもしれませんが多くの商品の中で埋もれてしまったのです。
『鼻セレブ』にネーミング変更
そこでネピアは商品の名前を変えるという大胆な作戦に出ます。
まず顧客ターゲット層の「花粉症などで何度も鼻をかむ人」から「鼻」をキーワードとして抽出しました。
「鼻」という言葉によって商品の使用目的が明確になります。
そして「セレブ」はぜいたくな暮らしをする人たちの代名詞。
この言葉を使うことで、鼻に優しく、痛くなりにくいのではないかというイメージが湧きます。
結果として「鼻セレブ」というユニークな名前の保湿ティッシュが誕生したのです。
このネーミング変更で商品が一気に注目を浴びるようになり
「鼻セレブ」はたくさんの競合を抑えてティッシュ売上のトップに躍り出ました。
ポケットティッシュの金額シェアでいうと「鼻セレブ」は当時約5%との事。
他は3%台以下なので、「鼻セレブ」が断トツトップなのです。
先程の「良い名前の4つの条件」に照らし合わせてみましょう。
①シンプルで発音やつづりが容易
②親しみやすく意味を感じる
③ユニーク
④ベネフィットが連想できる事
いかがでしょうか。
「ネピアモイスチャーティシュ」に比べて、シンプルでユニーク。そして親しみやすく、商品の使用目的が即座にわかり、かつその商品のメリットもすぐに感じられる名前だと思いませんか。
このように商品名は、その商品の運命を大きく変えるのです。
まずはひねり出してみよう!
ということでネーミングのコツを紹介してきました。
これから新しい商品名やお店の名前、会社名など何か名前を考えないといけない方は、上記の4つのポイントに注意してみましょう。
とりあえず、まずは30個くらい考えて紙に書き留めてみるのが良いです。
1人で考えるのもよいですが、できれば3~4人集まることができればベターですね。
そうすればシックリした名前が出てくるはずです。
ネーミングテストをやってみよう!
もし名前を真剣に考えて決定したいのであれば、Webアンケートを使ってネーミングテスト(調査)の実施をお勧めします。
最終的に2~3種類の名前候補が決まったら、その名前をたくさんの方に見てもらい、
① シンプル
② 発音しやすい
③ つづりが容易
④ 親しみやすい
⑤ 商品の意味を感じる
⑥ ユニーク
⑦ 商品のメリットが想像できる
⑧ 総合好意度
の8つの項目を5段階で評価してもらってスコア化するという方法です。
以下はある酒造メーカーが実施した、新しい焼酎のネーミングに関するテスト結果になります。
当時AとBの2種類の名前を検討していました。
(商標権などの関係上、実際にテストをした名前は伏せますが)
このグラフを見てお分かりの通り、
商品名A:
こちらのネーミングはシンプルで、発音やつづりの容易さに関しても評価が高いのですが、反面ユニーク性に欠け、商品の意味やメリットがあまり伝わらないという弱点があります。
商品B:
こちらのネーミングはAと異なり、ユニークで商品のメリットなどが抜群に伝わりやすいのですが、あまりシンプルではなく、発音やつづりも少し難しいようです。
従いましてどちらの名前を長所、短所があるのですが、総合的な好意度を見ると商品名Aは2.9点なのに対し、商品名Bは3.7点と高い評価を得ました。
この結果を受け、この酒造メーカーでは商品名Bを採用し、現在既に発売しています。
このようにネーミングテストを行うと、自分の視点ではなく、第三者の視点から客観的、定量的に見てもらう事ができます。
最初に申し上げた通り、ネーミングはマーケティングの中でも一番重要です。私(Lactivator)の様に失敗(?)しない名前を命名してください!
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