【更新】2019年6月16日
マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。 ●無料メールで学ぶマーケティング講座配信中⇒こちら
マーケティングリサーチアドバイザ-の渡邉です。
今回はアンケートを作成する際に必要な『礼儀』についてです。
回答者にとってアンケートとは「面倒くさい」ものというのは以前もお話ししたと思います。
その為、アンケートで正確な調査をやる為には、
『面倒くさいながらも本音で回答してくれるようなテクニック』
が必要だと解説致しました。
それと並行して、
面倒くさいながらも本音で回答してもらう為にはテクニックはもちろん、質問者側の礼儀も必要です。
無礼な奴には本音なんて話したくないですもんね(笑)
今回は、アンケート調査における『礼儀』についてお話します。
【おさらい】アンケート調査に必要な『仕掛け』と『仕込み』
まずアンケートを作る際に大切なことをおさらいしましょう。
僕の他のブログにも書いてますが、アンケート調査を設計する際に意識しないといけないのは以下の3つです。
① 回答結果を集計・分析すればアンケートの目的(ゴール)を達成できるか。
② 回答者の本音が聞き出せるよう最大限の『仕掛け』と『仕込み』がされているか。
③ 回答率を少しでも上げられるよう最大限の『仕掛け』と『仕込み』がされているか。
※アンケートの設計は以下で詳しく書いています。
アンケート調査をやる上でとても重要なことをまとめているので是非読んで下さいね。
また更に、無料メール講座の中でアンケートについて陥りやすい8つの誤解を徹底解説しています。
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今回お話しする礼儀は、どちらかというと③に深く関係します。
礼儀を『仕掛け』とか『仕込み』として扱うのは道徳的にどうかと思うのですが(笑)、でも礼儀がきちんとしているアンケートは回答率も高くなります。
アンケート調査に必要な4つの礼儀
自分が持っている顧客リストやSNSを使ってアンケート調査を行う時、またはマクロミルのクエスタント(Questant)などのWebアンケートASPを使って調査を行う時は以下の4点をきちんとアンケートの依頼文に記すことが守るべき礼儀と思います。
- 所要時間
- 目的
- インセンティブ
- 個人情報の取扱い
1つ1つ解説しましょう。
1)所要時間
他のブログでも書いてますが、大事なことなので何度も何度も書きます。
回答者側の気持ちとしてはアンケートは面倒くさいのです。
この気持ちをきちんと理解する事が『超』大切です。
店頭などで配る紙のアンケートもそうですが、回答を断られる理由のほとんどは「時間が無いから」です。
また、やたらに長いアンケートを作ってしまうと回答者が飽きてしまい、最後の方の設問は適当に答えて終わりにしてしまいます。
(もう全部「1」にチェックしちゃおう!みたいな)
しかしこれが、
「2分ほどで済みます」
という前置きがあったらどうでしょう?
Webアンケートでも、冒頭に所要時間が書かれている場合とそうでない場合では、回答率が大きく変わります。
回答者も拘束される時間が事前に把握できていればストレスが一気に減るからです。
だからといって、『このアンケートは1時間かかります』なんて書いたら誰も答えてくれませんからね(笑)
所要時間は長くても10分以内に終わるように質問数を設計していく必要があります。
2)アンケートの目的
これは当たり前だと言われてしまいそうですが、
「そのアンケートがどのような目的で使用されるのか」
をしっかりと明記するしましょう。
これも回答者を安心させる1つの材料になります。
またアンケートの目的を明記する事で回答者が「自分が何を答えれば良いのか?」を意識しやすくなります。
ただし1つ注意事項があります。
冒頭文に目的を書かなければいけませんが、逆にはっきり書き過ぎるのも良くないです。
例えば『食生活に関するアンケート調査』を実施するとしましょう。
その冒頭文に以下のような文章が書いてあったとしたらどう感じますか?
例1) :
このアンケート結果は約半年後に発売予定の食品開発に活用致します。例2) :
約半年後に中年太りに悩んでいる方々を対象としたダイエット食品を発売する予定なのですが、そういった方々が普段どのような食生活をしているのかの実態を明らかにして商品開発に反映したいと思います。
一見、例2)の方が詳しくて良いと思うかもしれませんが、アンケート調査実施前の説明だとしたら例1)で十分であり、むしろこちらの方が好ましいです。
例2)だと、正直に自分の食生活を書いてしまうと恥ずかしいという衝動にかられ、逆に本音を答えてくれなくなってしまう可能性があります。
このように、何らかの理由で回答者が本音を答えないような状況にしてしまう事を『バイアス(Bias)』と言います。
バイアスは極力取り除くというのが、アンケートを含めマーケティングリサーチ全般における基本中の基本です。
従いまして目的は書いた方が良いのですが、かなり『大まか』で構いません。
このアンケートが変なことに使われないという事さえわかればそれでいいのです。
※ちなみにバイアス(Bias)については以下でもう少し詳しく解説しています。ご興味ありましたら是非ご覧ください。
3)インセンティブ(回答に対する御礼)
アンケートに答えてくれた方へインセンティブ(御礼)を渡す場合は冒頭部分できちんとそれを示しましょう。
※但しアンケートモニターパネルを使って調査を行う場合は必要はありません。
インセンティブはパネルを運営している調査会社が用意していて、既にモニター会員の方々に説明しています。
一方、メールやSNSを使って自分で回答者を集める場合はインセンティブの内容を事前に示す必要があります。
しかし少し話が逸れますが、インセンティブを準備するのであれば回答者全員がメリットを感じるようなモノを選んだ方がよいです。
例えば、
アンケートに答えていただいた方には『当店で使える割引券』をプレゼント!
というインセンティブを設定するケースが多々ありますが、お店の場所が家から遠くて、今後訪店する予定もない人にとっては全くメリットを感じないですよね。
その為、メリットが感じられないインセンティブだと、それを設定した時よりもしなかった時の方が回答率が良い事もあるのです。
インセンティブは、商品券や図書券といった誰もがメリットを感じるものを選んだ方が効果を発揮します。
ただ、そうなると今度はそのインセンティブを送るための郵送費がかかり、結構な出費となる可能性があります。
調査にかけられる予算と相談してインセンティブの内容を決めましょう。
正直、インセンティブは無理に設定しなくても調査は実施できます。
※インセンティブについては以下のコラムで詳しく書いています。
4)個人情報の取扱い
近年、個人情報の取扱いについては回答者も非常に敏感になってきています。
その為、もしアンケートの中で回答者のお名前や連絡先などを記入してもらう『記名式アンケート』なのであれば、冒頭できちんと個人情報の取り扱いについて明記をしておく事は調査を行う上での基本です。
「アンケートで取得した個人情報は厳重に管理し、本目的以外では利用致しません」
などの文章を必ず入れましょう。
そして間違っても取得した個人情報は、他の目的で使わないで下さい。
※個人情報保護法にも触れる重要事項ですので、詳細をこちらにまとめています。
是非ご一読ください。
また、もし記名式でないのであれば個人情報の取り扱いについて記載する必要なありませんが、
「このアンケートではお客様の個人を特定するような情報を取得致しません」
と一言書いてあれば回答者も安心します。
しかしアンケートを記名式にしてしまうと、回答者の本音が聞けない可能性が高くなるのでお勧めしません。
アンケートに回答いただいた後で連絡したい時など、特別な理由がある時以外は『無記名』でやるのがマーケティングリサーチの基本です。
アンケートは依頼文がイノチ!
アンケートの依頼文を侮ってはいけないことは分かっていただけたと思います。
例えば以下の2つの文ですが、
例1)当店のサービスについて答えて下さい。
例2)この度は当店のアンケートに御協力下さりありがとうございます。当店のサービスにつきましてお客様の率直な御意見をお聞かせ下さい。
アンケートを読んだ時に最初に目にした文章が例1の場合と例2だった場合では、例2の文章を読んだ方が好感を抱くのは言うまでもありません。
しかし普段礼儀の良い方でも、アンケートを作成する時になぜか丁寧な文章を書けない方が結構いるものです。
例2の文章が読み手に好印象を与えた理由は、アンケートに目を通して下さったお客様に感謝の気持ちをはっきりと伝えていて全体の文章も丁寧です。
貴重な時間を使って頂くのですから、まずしっかりと感謝の気持ちを伝えましょう。
そういう第一印象が良くなるような文章があるかないかでアンケートに対しての協力度合いが大きく変化します。
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