お客さんの心を掴むコピーを作る【生命の8つの躍動】


マーケティングリサーチャーの渡邉 俊です。

普段、リサーチのコンサルタントとして活動していると時々、「商品のセールスコピーを考えたいのですが、よいコピーはどうやったら書けますか?」という質問を受けます。

正直コピーライティングについては私の専門でないので、ちゃんとしたアドバイスはできません。
ただ私の知り合いには何人かコピーライターがおりまして、その人たちに上記の質問をすると、みんな同じ答えを返してきます。

それは、

『現代広告の心理技術101』を読め。」

ということです。

この本、私も買って何度も読みましたが、プロのコピーライターが薦めるだけあって本当に名著だと思います。
優れたコピーライティングというものがどういうものかという事が素人でもわかりやすいように書かれているのです。

 

なので、コピーに悩まれている方は是非この本を買ってくださいという事なのですが、書かれている内容のエッセンスを少しご紹介したいと思います。

 

私たちの行動を支配しているモノ

まずはコピーライティングのテクニック云々の前に、この本の最初の方で『私たちの行動を支配しているモノは何か?』という話が書かれています。
少し抽象的な話になってしまいますが、世の中の人々は日々様々な行動をして生きている訳ですよね。
さて、それらの行動の「原動力」となっているものは何だと思いますか?

 

そう、それはずばり。「欲」です。

 

どうでしょう?皆さん欲にまみれて日々の生活を送っていませんか?

 

「いやいや、私は欲に負けずに頑張っている!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、よ~く考えてみると人間は欲の赴くままに生きているはずです。

『酒飲んだあと、小腹が空いたからついついラーメン食べちゃって・・・』
『仕事しなきゃだけど、このテレビ番組見終わってからにしよう・・・』
『あ~!彼女(彼氏)が欲しい!!』

このように、良くも悪くも私たちは「欲」に支配されて日々行動しており、また私たちの行動のほとんどは「欲」に突き動かされた結果である訳です。

言い換えれば、水は高い所から低い所に流れるように、人間は自身の欲を満たす方向に動きます。

 

生命の8つの躍動

先ほど紹介した『現代広告の心理技術101』では、人間が持っている様々な欲求の中でも特に強力な欲求が8つあると言っています。

 

そして、これら8つの欲を「生命の8つの躍動」と呼んでいます。

我々は生きている限り、これら「生命の8つの躍動」から逃れることは絶対にできません。
何というか、もう遺伝子のレベルで8つの欲求に従って動きなさいとプログラミングされている訳ですね。

 

そして。
この本には、「これら生命の8つの躍動を刺激し、欲求を掻き立てること」が秀逸なコピーであると書かれています。
これらの8つの躍動はとても強力で、広告業界ではこれらを巧みに刺激すれば売り上げに莫大な影響を与えると言われています。
現にテレビやラジオのCMに使われている優れたコピーはこの8つの躍動を刺激しています。

 

では生命の8つの躍動とは一体何なのか?というと・・・

 

【生命の8つの躍動】
1.生き残り、人生を楽しみ、長生きしたい。
2.食べ物、飲み物を味わいたい。
3.恐怖、痛み、危険を免れたい。
4.性的に交わりたい。
5.快適に暮らしたい。
6.他人に勝り、世の中に後れを取りたくない。
7.愛する人を気遣い、守りたい。
8.社会的に認められたい。

 

の8つです。

 

どうでしょう?自分も何となく、これの欲求に突き動かされていると思いませんか?
おそらくこの8つを否定する方はいらっしゃらないのではと思いますが、1つ1つ詳しく見ていきます。

 

1. 生き残り、人生を楽しみ、長生きしたい

人間は本能として「生き続けたい」という欲求を持っています。そして更にその人生を楽しみ、より長く生きる為にはどうすべきかという欲もあります。だからこそ医療や娯楽産業というものがどこの国でも発達しているのですよね。

 

2. 食べ物、飲み物を味わいたい

人間が生きていく為に、食べ物や飲み物を摂ることは絶対に必要です。また単に食べる、飲むだけではなく「味わいたい」という欲がなければ、料亭やレストランなどのビジネスは成り立ちませんし、料理学校なんてのも存在できないですね。

 

3. 恐怖、痛み、危険を免れたい

これも人間が生き続ける為には絶対に必要な欲です。恐怖や危険を免れ、なるべく平穏かつ安全に過ごそうとするからこそ長く生き続けられます。ホームセキュリティなどはこの欲求があるからこそビジネスとして成立しています。

 

4. 性的に交わりたい

人間は本能として「子孫を残したい」と思っており、この欲がないと子孫を繁栄させることができません。人間という生き物を継続させる為の欲求なので、法的な規制がない限り性に関する産業は今後も廃れることはないでしょう。
また「恋愛感情」についても結局はこの欲求に行きつきます。

 

5. 快適に暮らしたい

冬の寒い環境の中、外で裸で一夜を過ごすのは嫌ですよね。暖かい家の中で、暖かい服を着て過ごしたいはずです。また騒音のある薄汚れた部屋で過ごすよりも、誰だってごみのない静かな部屋の方がよいでしょう。

 

6. 他人に優れ、世の中に後れを取りたくない

あの人は結婚して子供もいて収入もそれなりにある。なのに私はまだ独身で給料も少ない・・・という風に、人間はどうしても他人と比べたがります。比較するという事が必ずしも良いとは言えませんが、一方でこの欲がある為に人は努力して勉強したり、仕事をしたりします。他の人よりも幸せでありたいと願うのです。

 

7. 愛する人を気遣い、守りたい

配偶者、自分の子ども、親、恋人・・・人間には人それぞれ愛する人がいます。そして愛する人には幸せになって欲しいですし、またその人に何か不幸な事が起こった時にはどうにかしてあげたいと考えます。親が子に対して様々なものを買い与えるのは、こういった欲が存在するからです。

 

8. 社会的に認められたい

誰からも認められていない、必要とされていないという状況は大変苦痛です。会社や学校の中で上司や同僚、クラスメイトから見向きもされなかったらつらいですよね。だからこそ人間は何かしらで認めてもらい、安心感を得ようとするのです。

 

コピーで人の欲求を掻き立てる

先ほど申し上げたように、コピーライティングによってこれら生命の8つの躍動を刺激し、その人の欲求を掻き立てることができれば売り上げは大きく跳ね上がります。
世の中で秀逸と言われているコピーを見てみて下さい。きっとこれら8つの躍動のどれかを刺激しているはずです。
いくつか例を挙げてみましょう。

 

『英語が話せると、10億人と話せる』

(英会話のジオス)

テレビ広告などでよく耳にするフレーズと思います。
このコピー、「英語が話せると、世界中のたくさんの人と会話できる」ということを言っているわけですが、それだとちょっとインパクトにかけます。
『たくさん』を『10億人』という具体的な数字に置き換えることによって、英語が喋れない人とのコミュニケーションレベルの差を数値化しているのです。
要するに、生命の8つの躍動の「6. 他人に優れ、世の中に後れを取りたくない」を具体的な数字で刺激しています。

 

『乳がん検診で一番多く見つかるものは、安心です。』

(ピンクリボンキャンペーン)

これは乳がん検診の促進キャンペーンで使われたフレーズです。
乳がんは命に係わる病気ですが、「私は大丈夫だから受診する必要はない」、「受診してがんが見つかったら怖い」という理由で受診されない方が多くいらっしゃいます。
その為、「乳がん検診で毎年〇〇人のがんが発見されています。」というフレーズでもよいのですが、これだと生命の躍動の「1. 生き残り、人生を楽しみ、長生きしたい」だけを刺激するのに留まってしまい、もし見つかったらどうしようという恐怖感を残してしまいます。
そこで、上記のような表現により、「1. 生き残り、人生を楽しみ、長生きしたい」だけでなく「3. 恐怖、痛み、危険を免れたい」も刺激しているのです。

 

『地図に残る仕事。』

(大成建設)

これは大成建設のタグラインになりますが、これほどインパクトのあるフレーズはそうはありません。
「ゼネコン」だと心に響きませんが、「地図に残る仕事」と言われると企業の意気込みが感じられますし、これを聞いた従業員は自分の仕事に生きがいを感じ、愛社精神を育むことができるでしょう。
まさに従業員の「8. 社会的に認められたい」の躍動を刺激している訳です。

 

他にも秀逸なコピーは世の中にたくさんあります。
是非、良いフレーズを見かけたら、「このコピーは8つの躍動のどれを刺激しているのか?」を考えてみるとよいです。

 

人間の後天的(二次的)9つの欲求

生命の8つの躍動について否定する方はほとんどいないと思います。
ですが、「8つ以外にも人間の欲求ってありますよね?」と疑問を抱く方もいるはずです。

はい、その通りです。人間には8つの躍動以外にも欲求はありますよね。
実は『現代広告の心理技術101』では、生命の8つの躍動以外に「人間の後天的(二次的)9つの欲求」というものも紹介しています。
具体的には以下の9つです。

 

【人間の後天的(二次的)9つの欲求】
1. 情報が欲しい。
2. 好奇心を満たしたい。
3. 身体や環境を清潔にしたい。
4. 能率よくありたい。
5. 便利であってほしい。
6. 信頼性、質のよさが欲しい。
7. 美しさと流行を表現したい。
8. 節約し、利益を上げたい。
9. 掘り出し物を見つけたい。

 

情報化社会と言われる現代、「1情報が欲しい」とあるように自分のやるべきことに関係する情報は欲しいですし、「4.能率よくありたい」とあるようにパソコンやスマホを使ってそれらをいち早く得たいですよね。
またファッション雑誌を買うのは「7.美しさや流行を表現したい」からであり、この欲求がなければファッション業界そのものが成り立ちません。

 

しかし、これら9つの欲求は「生命の8つの躍動」に比べると弱いはずです。
先ほど申し上げたように、8つの躍動は遺伝子レベルでプログラミングされている欲求ですが、これら9つの欲求は実は後天的に身に着けたものなのです。

 

いかがでしょうか?

「生命の8つの躍動」は覚えておくとコピーライティング以外にも役立ちます。
是非頭の中に叩き込んでくださいね。

 

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