マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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マーケティングリサーチャーの渡邉 俊です。
アンケート調査は紙媒体よりも『Questant』や『Survey Monkey』などWEBアンケートを使った方が断然楽です。
なぜならば、集計や分析が驚くほど簡単にできてしまうからですね。
紙媒体でアンケートを行うと、集計は全て手作業で行わなければいけません。
集計する数が10人や20人のレベルであればそれほど苦ではありませんが、100人、1000人のレベルになると多くの時間と手間がかかります。
また、人力での集計となるのでミスも発生しやすくなります。
ただ、WEBアンケートを薦める理由はこれだけではありません。
実は回答者の方々の本音を抽出する為にもWEBアンケートは紙媒体よりも適しています。
その理由の中でも私自身が皆さんに一番知っておいてもらいたい、
『ランダマイズ』
というほとんどのWEBアンケートサイトが持っている機能についてお話ししたいと思います。
以前から、アンケートマーケティングは回答者の本音を聴取できないと意味がないと言ってきましたが、この機能は本音を聴取する上で非常に重要です。
ランダマイズ
回答者によって設問や選択肢をランダムに表示する
ランダマイズとは、文字通り『ランダムに表示する』という事です。
複数のモノを無作為な順序に並べるという事であり、アンケート調査において「設問や選択肢をランダマイズする」とは、回答者ごとに設問の順番や選択肢の順番を違った状態で表示させることをいいます。
例えばある設問に対する回答の選択肢に「ラーメン」「カレー」「炒飯」の3つがある場合、選択肢の並び方としては以下の6種類が考えられますよね。
1.「ラーメン」「カレー」「炒飯」
2.「ラーメン」「炒飯」「カレー」
3.「カレー」「ラーメン」「炒飯」
4.「カレー」「炒飯」「ラーメン」
5.「炒飯」「ラーメン」「カレー」
6.「炒飯」「カレー」「ラーメン」
ランダマイズとは1人目の回答者にはパターン1、2人目にはパターン2、3人目にはパターン3・・・というように回答者毎に選択肢を変えて表示させることを言います。
従いまして回答者が300名の場合、各パターンが50名ずつに回答されることになります。
もちろんこれは選択肢が3個しかない時の場合であり、選択肢が4個に増えればパターンは24通りになりますし、5個になると120通り・・・10個では実に3628800通りになる訳です。
ランダマイズの設定の仕方
そんな数字を聴いてしまうとなんだか面倒だなあと思うかもしれませんが、ランダマイズを設定するのは超簡単です。
例えば『Questant』でアンケートを作成する場合、各設問の詳細設定欄に「選択肢をランダムに表示する」という項目があるので、そこにチェックを付ければいいだけです。
あとはシステムが自動的にランダム表示してくれます。
お分かりの通り、この機能は紙でアンケートを行う場合はほぼ不可能です。
もし紙でやるのであれば、選択肢の並びが違うパターンのアンケートを複数印刷して回答者に配布する必要があり、全くもって現実的ではない手間がかかります。
しかしインターネットを使ったアンケートリサーチであれば、この面倒くさい作業をチェック1つで行う事ができる訳です。
なぜランダマイズが必要なのか
以上がランダマイズという機能ですが、そもそもなんで選択肢をランダムに表示する必要があるのかわかりますか?
それは、回答の偏りをなくす為です。
これは心理学的な話であり、選択式の質問のデメリットの1つと言ってもよいのですが、実は選択肢がある質問ではその位置によって選ばれ易さが変わってくるのです。
例えば自動販売機でも、同じ飲料が自動販売機で売られていたらその位置によって売れ行きが異なるなんて話を聞いたことがありませんか?
それと一緒のことです。
一般的に縦に選択肢が並んでいるアンケートの場合、最初と最後の選択肢が選ばれやすい、またはたくさんの選択肢があると前半の選択肢が選ばやすいという傾向があります。
また横に選択肢が並んでいる場合は両端の選択肢がよく選ばれる傾向にあります。
なぜならば、回答者にとって全ての選択肢に目を通すことは非常に面倒くさいものであり、目についた選択肢を選びやすいからです。
この傾向を排除する為に選択肢にランダマイズをかけます。
実際にかけた場合と、かけてない場合では回答結果が大きく異なる事が立証されています。
ランダマイズ使ってはいけない例/使った方がよい例
ランダマイズを使ってはいけない例
しかし、だからといって選択肢がある設問なら何でもかんでもランダマイズした方が良いという訳ではありません。
ランダマイズをしない方が良い、またはしてはいけないという質問もあります。
先程申し上げた通りランダマイズは偏りを無くす為のテクニックですが、逆にランダマイズをすることで回答者に大きな負担をかけてしまったり、誤回答を招いたりする場合があります。
例えばこんな設問です。
質問:あなたの年齢を教えて下さい。
10代
20代
30代
40代
50代
60代
70代以上
この設問の選択肢にランダマイズをかけてしまうと、
20代
70代以上
30代
10代
60代
40代
50代
となり、ランダマイズをかけた事により返って選択肢が見にくくなってしまい誤回答を招く恐れも出てくるのです。
また、レストランなどによく置いてあるテーブルアンケートの設問。
質問:今日召し上がった料理の味に満足されていますか?
とても満足している
まあ満足している
どちらとも言えない
やや不満である
とても不満である
このように、程度や強弱を表現する選択肢については順番通りに並んでいた方が回答者にとっては答えやすいのです。
ランダマイズを使った方がよい例
逆にランダマイズした方がよい時というのはどんな時でしょうか。
例えば以下のような設問です。
質問:あなたがこのランドセルを買った理由は何ですか?当てはまるものを全てチェックしてください。
素材にこだわっていることに好感を持てたから
新しい機能がたくさん取り入れられたランドセルだったから
デザインそのものが気に行ったから
気に入ったランドセル本体の色があったから
ランドセル本体の色と縫い糸の色の組み合わせが気に入ったから
価格がお手頃だったから
頑丈なランドセルだと感じたから
重さが軽かったから
背負いやすいと感じたから
高級感が感じられるランドセルだから
家の近くに販売店舗があったから
この場合、ランダマイズをかけないとおそらく最初と最後の選択肢にチェックを入れる傾向が高くなってしまうでしょう。
この設問に正確に回答する際、回答者は全ての選択肢をひとつひとつ確認して判断しないと回答できません。
しかしその作業が面倒くさいと感じた場合、回答者は一番目立っている選択肢(この場合は最初と最後)だけ目を通してチェックするという傾向が生まれてしまうのです。
だからこそ、ランダマイズによってその傾向を緩和させる必要が出てきます。
一方、先ほどの年齢や満足度の設問に回答する時、回答者は全部の選択肢を確認しません。
おそらく、脳の中では自分が当てはまる選択肢を探して回答するという作業を取っています。
まとめ
まとめると、
・回答者が、1つ1つ選択肢を確認して回答する場合 ⇒ ランダマイズした方が良い
・回答者が、自分に当てはまる選択肢を探して回答する場合 ⇒ ランダマイズしない方が良い
という事になります。
自分に当てはまる選択肢を探して回答する質問はもう答えが決まっているので、並び順によって回答が偏るということが少ないのです。
その為、無理にランダマイズをかけて選択肢が探しにくくなると、回答者の負担になったり、選択肢を見逃したりして誤回答を誘発する原因になります。
逆にひとつひとつ選択肢を確認しなければ回答できないような設問は、ランダマイズによって回答の偏りを回避した方がよいです。
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