マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
以前、以下のブログでWebアンケートサイトに備わっている『ランダマイズ』という機能を説明しました。
紙媒体のアンケートでは不可能であり、かつ回答者の本音を正確に聴取する為に必要不可欠な機能です。
まだご覧になっていない方は是非読んで下さい。
ただ、ランダマイズ以外にも絶対に使って欲しいWebアンケートの機能があります。
それは『改ページ』と『分岐』です。
まあ、ランダマイズに比べればすごい単純で地味な機能ではあります。
でも、きちんと回答者の本音を得る為にはとっても大事な機能です。
今回はこの2つについてお話します。
※因みに、Webアンケートなどのマーケティング調査を行う際に一般の方が陥りやすい8つの誤解を以下の無料メール講座にまとめています。こちらもご購読いただき理解を深めて下さい。
地味だけど重要な『改ページ』と『分岐』
『改ページ』とは?
例えばマクロミルが提供しているWebアンケートシステム『Questant』だと、以下のように質問と質問の間に改ページが入れられるようになっています。
(以下の写真の真ん中にハサミ✂のマークがありますよね)
これを入れると、回答者が見るアンケートページには質問の下に『次へ』というボタンが現れ、このボタンを押すことによって次の設問が表示されます。
言い換えれば、このボタンを押さないと回答者は次の質問を見る事ができません。
もちろんこの改ページはQuestantだけでなく、ほとんどのWebアンケートシステムで設定可能です。
どんな時に改ページすべき?
基本的に改ページをやってもやらなくても、アンケートは実施可能です。
では、改ページした方が良い場合というのはどんな時でしょうか?
これははっきり言いますが、基本的に改ページは全ての質問に入れて下さい。
全ての質問に改ページを入れるということは、回答者からすれば1問答えたら『次へ』のボタンを押すのを繰り返すことになります。
回答者にとっては少し面倒ですが、調査する側にとってみればこれが理想です。
分岐
また同様にQuestantを例にすると、1つ1つの質問を表示させる条件やスキップさせる条件を設定できます。
これらの機能を使うことにより、例えば、
●前の質問で『いいえ』と答えた人にだけ次の質問を表示させたい。
●前の質問で『1』もしくは『2』を選択した人は次の問題をスキップさせたい。
という設定が可能になります。
どんな時に分岐設定すべき?
例えば『前の質問で「いいえ」と答えた人にだけ次の質問を表示させたい』場合、次の質問文の冒頭に
『この質問は前問で「いいえ」と答えた方のみお答えください。』
とはっきり書いておけば、「はい」と答えた方は飛ばしてくれるだろうと考える方も多いはずです。
ですが、基本的に答えてもらう必要のない質問は表示させないよう分岐設定するのが望ましいです。
『改ページ』と『分岐』が重要な訳
これら2つの機能は上記のようにクリック1つで設定できます。
ただし繰り返しお話ししますが
●改ページは基本的に全質問に入れること
●その人に答えてもらう必要のない質問は表示させないよう分岐設定すること
をお勧めします。
その理由は以下です。
① 回答者に余計な情報を与えてはいけない
1番の理由がこれです。
『回答者には余計な情報を与えない』というリサーチの鉄則があります。
要するに余計な情報を与えてしまうと、その人が純粋に思っている事が引き出せなくなってしまうからです。
例えば、以下は海外のアパレルメーカーが行っていたブランド調査に関するアンケートの抜粋です。
【当ブランド商品に対する満足度】
Q:あなたは、今回ご購入した当ブランド商品についてどの程度満足していますか。
1.大変満足している
2.満足している
3.どちらともいえない
4.満足していない
5.全く満足していない
↓(途中2問省略)
【飢餓難民支援活動に対する認知度】
Q:当ブランドでは、アフリカ諸国を中心とした飢餓難民に対する衣服の支援活動を2010年より進めています。あなたはこの活動の内容をどの程度ご存知ですか。1.内容を大変よく知っている
2.内容を知っている
3.活動は知っているが、内容は知らない
4.活動のことは全く知らない
商品満足度を聴く質問の2問あとに、このブランドが展開している飢餓難民支援活動の認知を聴いています。
このアンケートは質問の順序が超大事です。
もし順番を逆にして、
『飢餓難民支援活動に対する認知度』⇒ 『当ブランド商品に対する満足度』
という質問の流れにしてしまうと、このブランドが飢餓難民への支援活動を行っている事を回答者全員が知った上でブランドの満足度を答える事になります。
そうすると回答者は、『このブランドは素晴らしい社会貢献をしている!』という気持ちが強くなり、満足度が通常よりも高くなってしまう可能性がある訳です。
だからこそ、飢餓難民支援活動に関する質問はわざわざ後ろの順番に置いてます。
しかし改ページをしないと、回答者は『ブランド商品に対する満足度』の質問に答える前に『飢餓難民支援活動に対する認知度』の質問を見てしまう可能性がありますよね。
そうすると飢餓難民支援活動の質問を後ろに置いた意味がなくなってしまうので、改ページで後ろの質問を伏せる必要があるのです。
②回答意欲(モチベーション)を維持させる
また改ページと分岐には、回答者のモチベーションを維持させる為というシンプルな理由もあります。
これら2つが設定されていないという事は、回答者から見ればアンケートの中身を最初から最後まで全部見渡せる状態にあります。
それを見て回答者が
『質問数が多いな・・・』
『面倒くさいな・・・』
と感じてしまうと回答意欲が無くなり、最終的には回答率や回答の精度に悪影響を及ぼしてしまう可能性が高くなるのです。
従いまして、回答者が事前に質問の量を確認できる状態にするのはお勧めできません。
とはいえ、アンケートに拘束される時間を回答者が全くイメージできないのもよくないので、以下の2つを対応しておいた方がよいです。
① アンケートにかかるだいたいの所要時間を冒頭のページに明記する。
⇒『このアンケートの所要時間は5分です』という感じで。
② 回答の進捗を示すバーチャート(棒グラフ)を常に表示する。
⇒下記画像の右上部分にあるものがそれにあたります。
②のバーチャートについてはQuestantであればデフォルト設定で表示されるようになっていますし、他のWebアンケートでも一緒と思います。