マーケティングリサーチの学び場『Lactivator』代表。自動車会社でマーケティングリサーチに従事後、誰でも気軽にマーケティングを学べる場として2012年に本サイトを開設。また故郷:群馬県の活性化の為、2013年より上毛かるたの日本一決定戦『KING OF JMK』を主宰。著書『上毛かるたはカタル』も発売中。
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こんにちは、マーケティングリサーチャーの渡邉です。
今日は、マーケティングリサーチを行う上では必須の仕事である『対象者条件の設定』と『リクルーティング』について解説したいと思います。
“リクルーティング(Recruiting)”と聞くと『就職活動?』なんて想像してしまいますが、直訳すると“募集”という意味であり、要はアンケート調査やインタビュー調査の対象となる人を集める仕事のことを指します。
どんな人を調査対象として連れてくるのかが、調査の成功/失敗に大きく左右する訳です。
面倒くさい作業ですが調査の質を確保する為に重要なことなので、是非頭に入れて下さい。
『対象者条件』と『リクルーティング』
例えばあなたが自動車メーカーのミニバンに関するマーケティング担当者で、次に発売するクルマはどんなものにすべきかを検討する為に消費者の意見を募るとします。
その際、どんな人の意見を参考にすればよいでしょうか?
もちろんですが、全くクルマに興味のない人に話を聴いても意味がありません。
また興味はあったとしても、近い将来買う予定もない人と話をしても実のある意見は期待できません。
更にクルマは近々買う予定でも、”ミニバン”を買うつもりはない人に意見を聴くのもどうかと思います。
そこで、
『1年後までにミニバンを買うつもりのある人』
を調査対象者としてインタビューやアンケートを行えば、参考になる話を聴けると思いませんか?
このようにマーケティングリサーチは誰でもいいから話を聴けばいいという訳ではなく、“どんな人に聴けば有益な意見がもらえるか?”を考え、その条件に合った人を探す必要があります。
その条件に合致した人を探すことを『リクルーティング』という訳です。
『対象者条件』設定に大切な3つのワード
マーケティングリサーチを行う為にはまず、目的を達成するにはどんな『対象者条件』を設定するかを検討する必要があります。
私自身が対象者条件を設定する時には以下の3つのポイントを頭の中に入れて検討します。
●知りたい課題の『当事者』は誰か?
●知りたい課題を『中立的』に見ているのは誰か?
●『調査慣れ』してはいないか?
1つずつ説明していきましょう。
①知りたい課題の『当事者』は誰か?
まず大切なのは、調査対象者は必ず『解決すべき課題の当事者』であるべきという事です。
例えば女性用シャンプーのマーケティングリサーチを男性に行っても役に立ちませんし、高齢者用スマートフォンの仕様を考えるのに若者の意見を聴いてもあまり意味がありませんよね。
『そんなの当たり前!』と思うかもしれませんが、これができていない調査は世の中に沢山あります。
ファミリーをターゲットにしたテーマパークなのに『若い人の意見を参考に改善しよう!』だとか、女性をターゲットにしたダイエット食品なのに新橋の男性サラリーマンに試食させてアンケートを取っていたりだとか・・・
また先程、自動車メーカーが次に発売するミニバンの商品企画を行う上で話を聴くべき対象者として、
『1年後までにミニバンを買うつもりのある人』
と書きましたが、ここでポイントとなるのは『ミニバンを買った人、現在使用している人』ではなく、『近々買うつもりの人』という点です。
もちろん既に買った人や現在使用している人の意見を聴いてもよいのですが、買ったのは既に過去の事であり今ではありません。
重要なのは『これからミニバンを買おうと思っている人は何を思っているのか?』なのです。
もしかしたら過去のお客様と今(もしくは未来)のお客様では商品に求めるニーズが違うかもしれませんし。
調査の対象はその課題の『当事者』でないと意味がないのです。
②知りたい課題を『中立的』に見ているのは誰か?
例えばスマートフォンの大手キャリア(docomo、Softbank、au)に対して一般の方々はどんなブランドイメージを持っているのかを知りたい時、あなただったらどんな人を調査対象にするでしょうか?
この時に気を付けなければならないのは、docomoユーザーだけに調査をすると基本的にはdocomoの良いイメージしか聴けず、他のキャリアについては悪いイメージしか出てこない可能性があります。
(もしくは他のキャリアについては何もイメージを持っていないということもあり得ます。)
従いましてこの時に必要なのは『今スマートフォンを持っておらず、現在どのキャリアを購入するか検討中の人』であれば1つのキャリアに偏った意見ではなく中立的な話が聴けそうな気がしますよね。
このように複数のブランドや商品を比較するような調査をする場合は、それらを中立的に評価できる人を対象者にしないと正しい調査はできないのです。
③『調査慣れ』は避ける
特にインタビュー(定性)調査の場合、対象者条件に合致していても過去数年間で他のインタビュー調査を経験している人は対象から外す事が多いです。
いわゆる『調査慣れ』の可能性がある人たちです。
調査慣れしている人は、『こう聴かれたらこう返答すればいいな』という感じで頭の中で対応をパターン化している事が多く、それだと本音を聴くことができません。
アンケート調査であれば調査慣れしていてもあまり問題ありませんが、インタビュー調査の場合は注意が必要です。
例えば予め、『過去2年間で他のインタビュー調査を経験した事のない人』という条件を含めておくのも手です。
条件は絞り込み過ぎないように!
対象者条件の必要性をここまで書いてきましたが、かといって条件を絞り込み過ぎてしまうのもよくありません。
例えば、あるペットショップの経営者が行う調査の対象者条件として以下の条件全てを満たす方を探すとなったらどう思いますか?
①東京都23区内在住の女性
②現在一人暮らし(未婚)だが、今後5年以内には結婚したい
③現在犬を飼っている
④月1回以上のペースで映画館に行っている
⑤お酒はほぼ毎日口にしている
⑥将来は地方に移住したいと考えている
⑦過去2年間で他のインタビュー調査に参加していない
・・・もちろん全て該当する方はどこかにいると思いますが、探すのはかなり大変ですよね。
また調査ですから、インタビュー調査ならば最低でも5名くらい、アンケート調査ならば100名くらいは欲しいです。しかし、それだけ見つけてくるのは至難の業ですよね。
従いまして、条件を厳しく設定し過ぎるのもよくありません。
ではどの位ならよいのか?と言われると明確な答えはないのですが、一般的に考えてみて『この条件なら頑張れば探せそうだ』と思える位がよいのではと思います。
対象者条件は『緩すぎず、厳しすぎず』がベストです。
※ちなみに対象者条件の設定について無料メール講座でも詳しくお話ししています。
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リクルーティング(調査対象者を集める)の方法
対象者条件ができあがったら、実際にその条件に合致した方を集めます。
一般的に調査対象者の集める方法は6つあります。
- 顧客リストを使う
- 従業員ユーザーに協力してもらう
- 調査会社に協力してもらう
- 友人・知人などの繋がりを使う
- 事前アンケート(予備調査)を行う
- クラウドソーシングを使う
1つずつ解説していきたいと思います。
顧客リストを使う
まず対象者条件が『自分の商品・サービスを使っているお客様』であり、そのお客様リストが手元にあるのならば、それを使うのが一番手っ取り早いです。
商品を買って使っていることでよく知っているはずですから、建設的な意見が得られやすいはずです。
時にはいい意味で厳しいことも言ってくる可能性もありますが、それはそれで真摯に受け止めましょう。
ただデメリットとして、その商品や会社に関してよく知っている為に『中立的』ではない意見が出る可能性もあります。
例えば『自社商品の良い点・悪い点』について詳しく話すことは可能ですが、『この商品に対するイメージ』といった類の質問はユーザーであるがゆえに良い事しか言わない(言えない)ことが多いです。
商品・サービスの改善の為に購入されたお客様から積極的に意見を聞くことは良い事なのですが、調査目的によっては、顧客リストによるリクルーティングは適さない事もあるのです。
従業員ユーザーに協力してもらう
また従業員に自社商品の購入者や使用者がいるのであれば、その人に調査協力を依頼するのも手です。
従業員ですから、その商品の表と裏の両方を知っているはずです。一般のお客様からは得る事ができない話が聴けるかもしれませんし、前向きな改善提案がでてくる可能性もあります。
一方でデメリットは「忖度」が働きやすいという事です。
従業員ですから、自社商品に批判めいたことを言えば仕事で不利な扱いを受けるのではないかと考えてしまいがちです。
その為従業員に調査協力依頼をする時は、その結果を誰にどのように報告するのか、事前に明示してあげたほうがよいです。
また『商品のイメージ』などに関する質問は、従業員である為に一般の方よりも過剰に良いイメージを持っている可能性が高く、中立的な回答は得られにくいはずです。
従いまして上記の『顧客リスト』を使う時と同様、調査目的によっては従業員からリクルーティングは適さない事もあります。
このように顧客リストや従業員ユーザーからリクルーティングするのが一番手っ取り早いのですが、それが適しているかどうか(特に『中立性』が保てるかどうか)は『調査目的が何か?』に依ります。
もし適さないのであれば、下記のようなリクルーティングの仕方もあります。
調査会社に依頼する
ある程度調査費用がかけられるのであれば調査会社に全てお任せするのが一番良いです。
世界にはマーケティングリサーチを専門に行っている会社がたくさんあり、依頼をすればリクルーティングを含めて実査、分析、結果報告を全て行ってくれます。
彼らはリサーチのプロなので、調査内容に適した人を対象者としてリクルーティングし、質の高い調査結果を出してくれるはずです。
ただデメリットとしては『価格が高い』ということです。
調査規模や内容にもよりますが、設計からリクルーティング、実査、分析、結果報告まで全てお任せすると最低数百万円はかかると考えて下さい。
そのコストが出せるのであれば、調査会社に依頼をしてしまった方が断然よいと思います。
友人・知人などの繋がりを使う
自分でリクルーティングして調査を行う場合、一番やり易いのは『自分の友人・知人などを繋がりを使って対象となる人を見つける』という方法です。
何ともシンプルな方法ですが、これは『機縁法』と呼ばれるリクルーティング方法の1つであり、実は調査会社でも使われています。
調査対象者を探してくる役割の人を調査会社の中では”リクルーター”と呼ぶのですが、リクルーターは自分の伝手を使って条件に合った人を探してくる訳です。
また最近はLINEやFacebookといったSNSもありますので、それらを使って『調査に協力してくれる方募集!』というメッセージを拡散させればある程度集まるはずです。
機縁法のメリットは、事前に対象者の素性がある程度分かっている場合が多いので、調査当日になって『対象者条件と全然違う人じゃないか!』というトラブルが起こりにくいという点です。
また対象者も自分の知り合いから呼ばれてきているので、調査に積極的に協力してくれます。
ただ一方で忖度が働いてしまう可能性も否定できません。
『知人から言われて調査に参加しているのだから、あまり変な事を言えないな・・・』という気持が対象者に働いてしまいがちなのです。
その為、機縁法でリクルーティングを行った場合は、忖度やお世辞抜きの意見を出してもらえるような雰囲気づくりをすることが必要です。
インタビュー調査であれば『今日お話しされたことは外に出ませんので、是非本音を語ってください』と調査開始時に伝えるなどです。
事前アンケート(予備調査)を行う
機縁法以外でよく実施される方法としてはアンケートモニターパネルを使った『予備調査』があります。
これは最初に事前アンケート調査を行って各回答者が条件に合致しているかどうかをチェックし、その結果から該当者へ調査協力依頼を出すという方法です。
※アンケートモニターパネルって何?という方はこちらの記事も是非読んで下さい。
これのメリットは以下2点です。
●機縁法と違って自分(自社)との関係性が薄い人が選ばれるので、忖度やお世辞無しの意見を出してもらえる。
●『自分が選ばれた』という意識が対象者に芽生えるので、協力意欲を高く持って参加してもらえる。
この2つのメリットは他の手法では得難いものです。
一方デメリットとしては、インタビューする為にアンケートを余分に行うという手間やコスト、時間がかかる事です。(アンケート調査を行う場合は、事前調査と本調査の2回やることになります。)
しかし適切な対象者を選ぶというのは調査の質に大きく左右されますので、ここは面倒くさがらずにやりましょう。
クラウドソーシングを使う
クラウドソーシングとは、フリーランスや副業をしている人たちに仕事を依頼するネットサービスのことを指します。
『Lancers(ランサーズ)』や『クラウドワークス』などが有名ですよね。
例えば自社製品やサービスについて意見を募りたい場合、クラウドソーシングのサイトに「当社の商品を使っている方の声を聴かせてください!」という風に掲示すると、そのクラウドソーシングサイトに会員登録している人たちが応募してくる訳です。
これを利用するメリットは、比較的広く募集をかけられる事です。
上記のLancersやクラウドワークスなどは数百万人の会員登録者がいるので、簡単に調査対象者を見つけることができるでしょう。
一方デメリットとしては、応募してきた人が本当に当社商品のユーザーなのかどうかを確認しにくいということです。謝礼が欲しい為に自分を偽って応募してくる方も中にはいますので、何かしらの対策を考える必要があります。
またクラウドソーシングを利用する場合は、自分の会社名をサイト上に公表しなければいけません。
そうするとインタビューの際に、『この会社の悪口は言わない方がいいな・・・』というバイアスを回答者にかけてしまうリスクが往々にしてある訳です。
従いまして、私個人としてはクラウドソーシングを使ってのリクルーティングはあまりお勧めしてません。
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