【経営者の方必見】定期アンケート調査で回すビジネスのPDCAのコツ

 

こんにちは、マーケティングリサーチャーの渡邉俊です。
今回は『定期調査』としてアンケートなどを行いビジネス改善に繋げる方法についてお話したいと思います。

アンケート調査は単発で行うだけではなく、定期的に行ってデータの変化などを観察・分析しビジネスの改善や修正に使うという方法もあります。
調査期間はその業界や状況によって異なりますが、毎年決まった時期に行う場合もあれば四半期ごと、月ごと、週ごとに行うこともある訳です。

そんな形で『定期調査』としてアンケートを用いて成功した事例やその際のコツについて書いてみたいと思います。

なぜ定期アンケート調査をやるのか?

PDCAサイクル(おさらい)

最初にビジネスマンであれば多くの方が1度は聞いたことがあると思いますが、『PDCAサイクル』という言葉がありますよね。
「Plan(計画)」⇒「Do(実行)」⇒「Check(評価)」⇒「Action(改善)」の4つの工程の頭文字であり、業務の効率化や改善を図る為の方法です。日本では90年代後半からよく使われるようになったそうで、計画から改善までを1つのサイクルとして行います。

もともとは商品の品質管理の研究をしていたアメリカの学者によって1950年代に提唱されたものですが、後に業務や事業の改善はもちろん、マネジメントの手法としても広まっていきました。実際、ISO 9001と14001という国際基準にもなっています。

PDCAが形だけになってしまうワケ

PDCAサイクルは今や様々な本やサイトで紹介されておりますので、ビジネスマンとしては基本の「キ」かもしれません。
とはいえ、『PDCAをきちんと回そう!』と言っていても実際のところは形だけになってしまっているケースは皆さんの周りにありませんでしょうか?
きちんとサイクルに則って実行されているプロジェクトって案外少ないのです。

その一番多い理由は、3つ目の「Check(評価)」がきちんとできていないということです。
計画(Plan)して実行(Do)してみたけどうまくいかなかった。何だか理由は分からないけど、とりあえず次の手(Action)を打ってみよう!という感じで評価(Check)の抜けてしまうケースがほとんどなのですよね。

この「Check」をしっかりやる為に、アンケート調査を採用することが多いのです。

『とりあえず』は悪魔の言葉

上記の諸悪の根源は「とりあえず」という言葉です。
人間誰しも何か問題や課題が目の前に現れると、”とりあえず”今できることをまずやろうという考えになってしまいがちです。

それは悪い事ではないのですが、『今できる事をやる』というのと並行して『実施した事を評価して、なぜうまくいかなかったのかを検証する』というプロセスが必要な訳です。いわゆる「Check」ですね。

ちなみにヨーロッパのある国では「とりあえずは悪魔の言葉」ということわざがあるそうです。
『とりあえず』という言葉はスピード感をもって次のアクションに移るという事で一見良い感じに見えますが、ウラを返すと論理的に行動していないという事だという意味だそうです。

※「とりあえずは悪魔の言葉」については以下のブログでも説明しています。

定期アンケート調査でPDCAを回す具体例

是非「Check」を怠らずにやってPDCAサイクルを確実に回していただきたいのですが、その「Check」工程でアンケートを効果的に使うことができれば、ビジネスは飛躍的に向上します。
その方法で成果を挙げている企業が2つありますので、紹介致します。

事例1)週刊少年ジャンプ(集英社)

2018年の記事なのですが、東洋経済オンラインに掲載されていた少年ジャンプの元編集長:鳥嶋和彦さんのインタビュー記事です。

参考: 「少年ジャンプ」 伝説の編集長が変えた男社会|東洋経済オンライン

鳥嶋さんは「ドラゴンボール」や「Drスランプ アラレちゃん」などでお馴染みの鳥山明さんやゲーム「ドラゴンクエスト」の生みの親である堀井雄二さんなどの才能をいち早く見出した編集者として業界では超有名な方です。

鳥嶋さんが少年ジャンプの編集長になったのは1996年のこと。
当時は発行部数が500万部超えという今では考えられないような超人気マンガ雑誌だった訳ですが、80~90年代のジャンプ編集部は体育会系のような上下関係の厳しさがあり、若手はあまり意見を言えなかったそうです。
しかし鳥嶋さんが編集長になってこうした環境を変えていきました。

ただ一方で、変えなかったことが1つあります。それは毎週の読者アンケートを最重要視する事です。
少年ジャンプには雑誌の最終ページにアンケートはがきが付けられており、読者は各マンガの評価や意見を編集部に送る事ができます。

少年ジャンプ最盛期には、読者から約3万通のアンケート結果が毎週送られてきたそうです。
またジャンプは毎週月曜に発売されますが、早いものでは火曜の夕方には300通ぐらいのアンケートが届いていたとのこと。これを編集部では『速報』と呼んでいました。
なぜなら、火曜日の夕方ならば次週の号の原稿にぎりぎり反映できるからです。

このアンケートの結果を基に、どのマンガを表紙や巻頭カラーにもっていくか、逆にどのマンガを近々打ち切りにするかなどの戦略を逐次練っていき、誌面の向上を図っていた訳です。

事例2)日産自動車

私も前職は日産自動車に務めていましたが、その時に毎週アンケート調査を行って各マーケティング戦略の評価や改善を行っていた事があります。

自動車の販売店(ディーラー)で一番集客が見込めるのは週末の土日なのですが、その週末にどこの販売店も『フェア』と呼ばれる集客イベントを行っています。内容はメーカー主導で全国的に行うものもあれば、各販売会社や店舗主導で行う小規模のものもあり様々です。

この『フェア』はどこの販売店でも昔から行われていたのですが、しかしながら以前は、毎週実施しているフェアがどのくらい集客に効果があったのか?また実施したことで売上にどの程度貢献したのかを全く把握していませんでした。

そこで2013年から、この毎週末行う『フェア』の効果測定を行って次週以降の販売戦略立案や企画に役立てていくというアンケート調査を立ち上げたのです。

アンケート調査はWebアンケートモニターパネルを使います。

※Webアンケートモニターパネルって何?という方は以下をご覧ください。

日曜の夜に某調査会社のアンケートモニターパネルを使って『土日に自動車ディーラーに行った人』を500名探し、その人に対してどこのディーラーに来場したのか、そこで何をしたのか(試乗、見積、成約etc)、どの車種を目当てに来場したのかなどをアンケートで回答してもらいます。

パネルを使った500名くらいの調査規模であれば月曜の午後には取り終えていますので、得られたデータを火曜に集中して集計・分析し、翌日(毎週水曜)に行われるマーケティング戦略会議で主要関係者に結果を共有し、次週に向けての戦略検討の材料にする・・・というサイクルです。
これを毎週行うことで『フェア』の評価を逐次行い、戦略の質を高めていったのです。

定期アンケート調査のコツ

もちろんアンケートは必ず毎週じゃなきゃダメなのではなく、毎月や四半期ごとでもOKです。企業や業界の状況によって頻度を決めていきます。
ただ、きちんと調査を実行してPDCAサイクルを回せば戦略改善に繋がるものの、定期調査にはいくつかコツがあります。そのコツについていくつか紹介します。

※ちなみにアンケート調査の基本的なことについては無料メール講座でも解説しています。宜しければ是非ご購読下さい。無料ですので。

コツ①:アンケートの内容・文言は変えない

まず大原則として、定期的にお客様に送るアンケートの中の文言は一字一句変えてはいけないというのが基本です。
これは毎回内容を変える事で手間がかかるからというのもありますが、一番の理由はアンケートの文言を変えると回答者が受け取る質問のニュアンスも変わってしまい、今まで毎回行っていた質問の連続性が途切れてしまう懸念があるからです。

例えばですが、

〇今回の巻頭カラーのマンガにどの程度満足していますか?
〇今回の巻頭カラーのマンガはどのくらい面白かったですか?

上記2つの質問は同じような事を聞いてはいるものの、回答する側が受け取るニュアンスはちょっと違いますよね。
こうすることで回答内容がどう変化するかは分かりませんが、要するに質問の連続性を保つために下手に文言を修正するのはやめた方がいいということです。
その為、アンケート票(調査票)の作り込みは最初にみっちりやっておきましょう。

コツ②:分析のフォーマット(ひな形)を準備しておく

上記の少年ジャンプや日産の事例のように、1週間に1度アンケート調査を行って次週の戦略に結果を活用したいという場合、時間をかけて分析を行う事ができません。

その為、どんなグラフを作るのか、どんな表を作るのかを予め決めておき、データを取り終えたらすぐにそのグラフや表を作れるようフォーマットを準備しておきましょう。
私が日産で分析を担当していた時は、調査でアウトプットされたデータをエクセルにコピーアンドペーストで貼り付ければ自動的にグラフや表が出来上がるようにしていました。
フォーマット化しておくことはそれほど難しい事ではないので、スピーディに分析して関係者に結果を共有する為には必要な準備です。

コツ③:結果共有の場を必ず設ける

定期アンケート調査はPDCAを回す為のモノですから、集計・分析結果を関係者で共有して次のアクションを検討する場がないと実施した意味がありません。
もし社内にこの場がない場合は必ず設けましょう。

そしてその場には必ず『意思決定者』を出席させることが重要なポイントです。アンケート結果を見て、その場で判断してくれる方がいれば早くアクションを起こす事ができます。

コツ④:データは貯めておく

毎回得られるデータをその時だけ集計・共有するのではなく、数回分のデータが貯まったらそれらを総合して分析してみると更に新しい発見が得られます。

例えば上記の少年ジャンプや日産の事例の様に毎週アンケート調査を行っているのであれば、週ごとの集計・分析に加えて月ごと(4週分)、四半期ごと(12週分)をまとめて分析するという事です。
こうすることでサンプルサイズも多くなり、かつ大局観で信憑性のある分析を行う事ができる訳です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
アンケート調査は単発でやってもいいのですが、定期的に行ってPDCAを回すことでより威力を発揮します。
多少の手間暇や調査コストがかかってしまいますが、費用対効果は確実にあるはずです。

ただもちろんの事ながら、効果的な調査にする為には『アンケートの設計』が大切です。この『設計』は是非怠らずにやってください。
もちろん、疑問・質問がございましたらLactivatorがいつでもご相談に乗りますので!

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